最終話 国宝級天才の最愛
寮の管理人の声掛けに、トリフォニアが立ち上がろうとした。
その手をルクセインは掴んで止める。
「行くな、俺が話すから」
「え…でも、家に帰らないと」
「それも必要ない。俺が全部断るから」
「………なにを?」
「ニアのお見合い」
「…えっ?」
「…なに?したいのお見合い?」
「そうじゃ無くて…」
トリフォニアは混乱していて、何を伝えればいいのか言葉に出せない。
「俺にしとけ。ニアの理想、超えたんだろ?それに、誰よりもニアを思ってる」
トリフォニアを掴む手が強くなる。
「誰よりもニアを幸せにできる。ずっと、ニアしか見てない」
考える必要はないな、トリフォニアは思うままに口にした。
「ずっと、振られたと思ってたの。だから諦めなきゃって。でも……ずっと好きだった。私もルークがずっと好きだった。」
ルクセインは呆然とトリフォニアを見つめた。
長年抱き続けた想いが、ようやく実ったのだと理解するまで数秒かかった。
そしてそれが理解出来た瞬間、満面の笑顔になった。
「よし後は全部、俺に任せろ」
そう言うと、談話室の外に出ていった。
「ニアの実家には俺から連絡する。とりあえず行こう」
管理人と話を済ますとルクセインは、トリフォニアの手を取った。
「どこ行くの?」
目的地も分からず、手を引かれるまま歩きだした。
「殿下のとこ。とりあえず、変な噂もあるし、報告するわ」
「なにを?」
「両思いですって」
「なっ!?!?!?」
予想外の返答に、トリフォニアは言葉を失った。
「やめてよ!そんなことをわざわざ殿下に報告しなくてもいいでしょう!?」
「駄目だ。殿下にも迷惑をかけたし」
「そういう問題じゃなくて!恥ずかしいの!!それに、両想いとか細かい報告じゃなくて、普通は結婚報告でしょう!?」
「……結婚」
ルクセインがぴたりと足を止めた。
「…ニア、婚姻誓約書持ってる?」
「持ってるわけないでしょう!!」
そのまま止める事も出来ず、ズルズルとやって来たのは王女の執務室。
「やっとね!良かった!変な噂広がってて申し訳なかったから。で?プロポーズはちゃんと出来たんでしょうね?ルクセイン」
こんな私的報告、迷惑だろうと思って入室すると思いの外、王女は飛び上がって喜んだ。
「…プロポーズ」
そう言ったまま、ルクセインは固まった。
「…え?まさかまだ?お前、ちゃんと今までの気持ち伝えたのよね?正式に結婚の申し込みは?ねぇ、どうなのトリフォニア!?」
王女は、キッと鋭い視線をトリフォニアに向ける。
「…いえ…まだそういう段階ではなくて…」
「もーーーーー!!!」
両手を拳にして叫ぶ王女。
「人生の一大事よ!気合入れてプラン練ってプロポーズしなきゃだめでしょ!!しかも、何年温めてたのよ!その気持ちを!」
ビシッとルクセインに向けて言うものの、彼はまだ固まったままだった。
「いくら統計を取っても、実践出来ないなら意味ないでしょう?」
はぁ、と溜息をつく王女。
「統計ですか…?」
「この人、貴女への接し方を研究するために恋愛相談を集めて分析していたのよ」
「分析!?」
トリフォニアは思わずルクセインを見た。
恋愛も統計から分析するのか、この男は。
「仕事なら瞬速なのにね…トリフォニアが不正に巻き込まれて地方に飛ばされた時も、しっかり裏付けを取って、不正を摘発して段取りよく解決したのに…」
「え!?私が地方に配属されたのって、不正の影響だったのですか!?」
驚きの情報だ。
「そうよ、貴女があそこにいたから不正に気づけた。お手柄ね」
そう言うと、王女は気合いを入れる。
「よし!こうなったら、中央庭園で公開プロポーズでもなさい!それがいいわ!!一瞬で噂も吹き飛ぶわ。早くプランを提出しなさい!お前の得意分野でしょ!」
とんでもない指示と案を出してきた。
「…なるほど、公開プロポーズ」
真面目に考え出したルクセイン。
「ちょ…ちょっと!殿下もルークも止めてください!」
トリフォニアの言葉は二人の耳には入らず、話が進んでいく。
「止めてよ!!!恥ずかしすぎるからーーーー!!」
この後、王女と監査室は大騒ぎするのだ。
トリフォニア本人を差し置いて。
そして
国宝級の天才がどのようなプロポーズをするのか。
翌日にはその噂で、王宮中が持ちきりになるのだった。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
ルクセイン、公開プロポーズするのかなぁ……。
更新を待ってくださった皆様、そして評価をいただけたことが力となり、無事に二人を両想いにすることができました。
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!
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また、途中で行き詰まった時に書いた短編も、よろしければ目を通していただけると嬉しいです。
このお話を執筆中に書いたため、どことなく雰囲気が似ているかもしれません。
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