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【番外編追加】国宝級天才の最愛 〜四葉を手放せない若き侯爵は、恋の進め方だけが分からない  作者: 有原 詩名美


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第11話 昇進の女神

トリフォニアはまたしても、噂の的となっていた。

ただし、本人の知らないところで。


「お前のところにも来たのか」

「ああ、前に『閣下と噂のあった人は…』って断ってきた奴だぞ」

デニスとカイルは声を潜めて会話をしていた。

ここ数日、監査室には業務以外の依頼が殺到していた。トリフォニアとお見合いをしたいとの申し出だ。

「どいつもこいつも、昇進の女神の加護狙いだ」

カイルは椅子の背もたれに身を預けながら、面白く無さそうに言った。


トリフォニアのお見合い相手が、短期間で昇進したと言う話は静かに広がっていた。3人続けば、女神の加護は冗談にしても、何かあるのではと思われるのも無理はない。監査室としても、お見合い話が上がるのは喜ばしいが、下心見え見えでは受けられない。トリフォニアが幸せになれる相手が、絶対条件なのだ。ゆえに、監査室鉄壁のガードで、申し出は根こそぎ断られていた。


そんな事が起こっているとは知らず、トリフォニアは焦っていた。

せっかく用意してもらったお見合いが、全て流れてしまったのだ。自然な出会いなど、皆無に等しい。このまま手をこまねいていては、確実に婚期を逃してしまう。

働く女性が増えたとはいえ、女学院の友達は卒業早々に結婚し、一人二人と子供までいる。

花の命は短いのよ、とは母の言葉だ。今、何か手を打たねばあっという間に、オールドミスだ。


監査室鉄壁のガードにより、下心のある男たちは撃退されていた。だが、ついにその事実がトリフォニアの知るところとなってしまった。


資料室で書類を探していた時だ、

「なぁ、監査室のフェリシア嬢にお見合い断られたんだろ?」

ふと、棚の向こうから聞こえた声に足を止めた。

フェリシアとは自分の家名だ。

お見合いを、断った?その内容を不思議に思い、聞き耳を立てた。

「ああ、あそこガードが厳しくてさ。一回お茶するだけで次の週には昇進できるって噂なのに、ケチだよな。減るもんじゃないんだし。出世のチャンスかもしれないのに」

「だよなぁ。俺も断られたんだ。ちょっと顔を合わせるだけでいいのにさ」

あまりの言い草に、トリフォニアは唖然とした。


…そして、怒りがこみ上げてきた。人の必死の婚活を何だと思っているのだ!!こちらは、人生がかかっているというのに!怒りはそのまま、監査室に向かって走った。


バンッ!

監査室の扉は乱暴に開かれた。


「ど…どうした」

トリフォニアの形相にカイルが驚き、手をとめる。

「カイルさんっ!私のっ!お見合いっ!」

怒りと全速力で、息が切れている。

「ん!?あ…ああ。残念だったな。まぁ、またいい出会いが――!?」

話の途中で、胸ぐらを掴まれるカイル。


「また、私に変な噂ありますよね!?!?」


監査室の空気は氷点下だった。


カチャ

ジョアンナが、お茶を入れてくれた。

その紅茶を口にしながら話をする。

「…つまり…昇進の女神様」

「そうだ…」

「私。女神の眷属か何かと思われてます?」

「…もうそこは、私が昇進の女神ですって言い張ってもいいぞ」

カイルが怯える中、トリフォニアは完全に目を据わらせてスッと立ち上がった。

「ジョアンナさん…一回のお見合いにつき、加護料として、大金を取る商売を始めてもいいですか?」

「ちょっとトリフォニア、目を覚ましなさい!」

ジョアンナが慌てふためく。

「…だって、もう無理じゃないですか、誰も、私個人を見てくれないんです。昇進の女神としてしか、見てくれないんですっ!!」

自己評価が低いのか、高いのか分からない。

「このまま枯れてしまうなら!せめてお金に慰めてもらいたいじゃないですかぁ!」

トリフォニアは机に顔を伏せる。

「完全にヤケクソになってるな……」

デニスが遠い目をする。

「ダメよ、そんなことしたら貴女の婚期が本当に消滅するわ!」

ジョアンナに両肩を掴んでガクガクと揺さぶられ、トリフォニアはようやく我に返った。


確かに、出世目当ての男たち相手に商売を始めても自分の望む、平凡だが穏やかな家庭は手にはいらない。

三角関係の噂の次は、出世の女神。この王宮にいる限り、まともな婚活などできないのか…。


「でも、困ったわよねぇ」

ジョアンナが腕を組む。

カイルもデニスも唸る。

解決策を探したいところだが、こうも予想外の方向にばかり進んでは、さすがのエリート集団もお手上げな様子だ。


「…ジョアンナさん。一般的な貴族の子女の結婚のきっかけって何ですか?」

「え?そりゃあ、たいてい親や親族が候補を探して、家同士の釣り合いを見るでしょ?それから顔合わせよね?」

「まぁ、大きい家だと政略結婚もあるけどな」

デニスが口を挟む。

「でも、どちらにせよ親が決めますよね…そうか」

トリフォニアは、ようやく着地点をみつけた。

「最初から、父に頼めば良かったんですよ!」

三角関係の噂を消すことに躍起になり、大事な事を見逃していた。


そうと決まれば善は急げである。

さっそくトリフォニアは実家の父に向けて、手紙をしたためる事にした。


女神さまーーー!トリフォニアに婚活の加護を授けてくださった女神様!本当にありがとうございます!


早々に頂いたブックマーク、そしてお星さま★の加護を受け、トリフォニアも作者も大喜びしております。


いただいた加護を胸に、トリフォニアには幸せを掴んでもらえるよう頑張ります!


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