第十一話 モンクらしくないモンク
とりあえず、ふくちーぬの戦闘能力をスターファイターの面々へ見せることはできた。
ただし、一つ誤算があった。
事前にふくちーぬは、
「合気術は攻撃力に乏しい」
と説明していた。
だが龍神剣を手に入れてしまった現在、その説明は完全に覆ってしまっている。
剣で斬れる。
気功砲も撃てる。
精霊術も使える。
どう考えても普通の後衛ではなかった。
◇
しかし今回の目的はスキルの熟練度上げである。
そのため打ち合わせ通りの役割分担で探索を続けることになった。
ゴンザレスは大剣。
バルカンは盾術。
アルメルは双剣術。
そして、ふくちーぬは気功砲と精霊術による牽制を行いながら、龍神剣で戦う。
◇
まずはスターファイターの戦闘を見学することになった。
現れたのはゴブリン四体。
アルメルが気配を消しながら接近する。
一瞬。
最も後方のゴブリンが倒れた。
「速い……」
ふくちーぬが感心していると、
「おおおぉぉぉぉっ!」
今度はバルカンが大声を上げながら突進した。
魔物の注意を自分に集める。
いわゆるヘイト管理というやつらしい。
その間にゴンザレスが左前方から接近するゴブリンを両断。
最後は盾で受け止めたゴブリンをバルカンが仕留めた。
戦闘時間は一分もかかっていない。
さすが普段からアンコモンモンスターと戦っているだけはあった。
◇
その後は連携訓練となった。
ふくちーぬはアルメルと組む。
アルメルが接近する。
逃げようとしたゴブリンへ気功砲。
足が止まる。
そこへアルメルが飛び込み仕留める。
あるいは。
チャッピーの霧で相手の視界を遮る。
そこへアルメルが奇襲する。
思った以上に噛み合っていた。
◇
「正直驚いたな」
ゴンザレスが言う。
「フクチーヌ、結構戦えるじゃねぇか」
「そうかな?」
「アンコモンジョブ持ちはやっぱ違うわね」
アルメルも感心している。
ジョブスキルの熟練度は低い。
しかし戦い方そのものが独特だった。
◇
こうしてしばらく戦った結果、
一行はさらに山へ向かうことになった。
ダンジョン内の遠くには富士山のような巨大な山が見える。
不思議なことに最初から見えていたのか記憶が曖昧だ。
認識しなかっただけかもしれない。
◇
「あの山へ近づくほど魔物は強くなる」
ゴンザレスが説明する。
「いきなり強くなるわけじゃないぞ」
「どうなるの?」
「コモン四体の場所なら、その先はアンコモン一体とコモン三体」
「なるほど」
「さらに進むとアンコモン二体」
「もっと進むとアンコモン三体」
◇
スターファイターは今まで三人だった。
そのため、
アンコモン二体とコモン一体。
その辺りを活動拠点としていたらしい。
◇
「アンコモン三体とも戦えなくはない」
ゴンザレスは続ける。
「だが戦闘中に移動してレアモンスターの縄張りへ入る可能性がある」
「それは危ないな」
「だから安全圏で活動していた」
◇
また祠についても説明された。
各地に設置されている祠へ魔石を奉納すると、既に訪れた祠へ転移できるらしい。
もし祠が無くても問題ない。
「川を見つけたら下流へ行け」
バルカンが言う。
「出口へ近づく」
つまり基本は、
山へ向かえば難易度上昇。
川下へ向かえば難易度低下。
という仕組みらしい。
◇
その後。
ふくちーぬは行く道路の祠に魔石を一つ奉納しながら
一行はアンコモン二体、コモン二体が出現する地点まで進んだ。
そこでひたすら戦闘を繰り返す。
熟練度を稼ぐ。
魔石を集める。
そんな時間がしばらく続いた。
◇
そして。
ふくちーぬは一つの異変に気付いた。
◇
気功砲。
伸びている。
これは分かる。
ジョブスキルだからだ。
◇
合気剣術。
これも伸びている。
龍神様が特別に作り変えてくれたスキルだからだろう。
◇
だが。
チャッピーも成長していた。
◇
最初は手のひらサイズだった。
今は二回りほど大きい。
一回り大きくなった時は気のせいかと思った。
だが今回は確信できる。
間違いなく成長している。
◇
「チャッピー」
『なに?』
「君大きくなった?」
『なった気がする』
「理由は?」
『わかんない』
精霊本人も分からなかった。
◇
そこでふくちーぬはスターファイターに相談した。
話を聞いたアルメルが即答する。
「あなたの戦い方、モンクじゃないもの」
◇
「えっ?」
◇
「普通のモンクは格闘と気功砲が主体だ」
ゴンザレスが説明する。
「でもお前は違う」
「どこが?」
「龍神剣に精霊術を重ねている」
「うん」
「気功砲にも精霊術を組み合わせている」
「あっ」
◇
アルメルも頷く。
「私たちが『伸びない』って言ったのはね」
「うん」
「普通は使わなくなるから伸びないの」
◇
ふくちーぬは納得した。
つまり。
現在も精霊術を使っている。
だから熟練度が上がっている。
ただそれだけの話だった。
◇
ふくちーぬは閃いた。
「ってことは」
「うん?」
「おいら既にオーラモンクみたいな戦い方してるって事?」
◇
沈黙。
◇
また沈黙。
◇
今回の沈黙はかなり長かった。
◇
やがてバルカンが重々しく口を開く。
「全然違う」
◇
「えぇっ!?」
◇
アルメルが苦笑する。
「オーラモンクってね」
「うん」
「精霊術を身体に纏って戦うの」
◇
ゴンザレスが補足する。
「火なら炎を纏う」
「おお」
「火の拳や火の蹴りになる」
「かっこいい」
「風なら風の刃」
「おお」
「土なら身体が岩みたいになる」
◇
ふくちーぬは期待しながら聞いた。
「水は?」
◇
沈黙。
◇
また沈黙。
◇
アルメルが申し訳なさそうに答える。
「見たことない」
◇
「え?」
「たぶん存在しないと思う」
◇
ふくちーぬは想像してみた。
全身がぬるぬるの格闘家。
攻撃が滑る。
掴めない。
ナメクジみたい。
◇
「うわあぁぁぁぁっ!」
思わず叫んだ。
◇
「だったら何でオーラモンク勧めたのさ!」
◇
ゴンザレスが即答する。
「お前、水精霊だって言わなかっただろ」
◇
そうだった。
その頃は自分でも知らなかった。
◇
しかし。
ふくちーぬは改めてチャッピーを見る。
現在の戦闘では大活躍だ。
霧。
シャボン玉。
水の剣。
どれも役に立っている。
◇
(別に問題なくない?)
そんな気がしてきた。
◇
アルメルも同じ結論だったらしい。
「そもそもフクチーヌの戦い方ってモンクじゃないし」
「うん」
「オーラモンクになっても何とかなるんじゃない?」
◇
すると今まで不安そうにしていたチャッピーが元気を取り戻した。
ふくちーぬにだけ聞こえる声で胸を張る。
『どーんと任せなさい!』
『チャッピー様がいるんだから!』
こうして。
誰も見たことがない水属性のオーラモンクへの道が、少しずつ開かれ始めるのだった。
第十一話 完




