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悪役貴族に転生した戦略ゲーオタクは推しのヤンデレ悪役令嬢を支えるようです  作者: ビッグベアー
第二章 宰相暗殺とヤンデレ連鎖

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第47話 容疑者バルドの言い訳

 第二皇子バルドはもはや周知の事実でもある通り、アホだ。

 原作の攻略対象の一人であり、確かにイケメンではあるが、それ以上にアホだ。しかも、色恋沙汰で身を亡ぼすタイプのアホだ。

  

 実際、勢いで婚約破棄しようとしたせいで自分の率いる第二皇統派を滅ぼしかけている。まあ、滅ぼそうとしたのはオレだし、そのことを材料にバルドを脅迫、もとい説得したのもオレなのだが、この際それはどうでもいい。大したことじゃない。


 ともかく重要なのは、バルドがアホだということだ。

 恋愛関係がもとで身持ちを崩す男の手本というか、オレからすると宇宙の反対側にいるような理解不能な生き物なのだ。


 そんなバルドがなぜか帝城内にいて曲者として第三皇統派の騎士たちに追われている。

 なにがどうしたらこんなことになるんだ? というか、フードを外して身元を明かせばとりあえず騎士たちも止まるだろうに。アホなのか、アホだったわ。


 というか、この際、追われているのはいいよ、意味わかんないけど。

 だからって、ジークリンデとオレに助けを求めてくるなよ。面倒に巻き込まれるだろうが。


 だが、我が主ジークリンデは家族想いだ。こんなアホな弟でも見捨てるということはありえない。

 なので、助けた。具体的には第三皇統派の騎士より先に走ってきたバルドを捕まえてフードを外して、名乗らせたのである。


 いくら事件現場周辺をうろついていた不審人物とはいえ、相手は皇族だ。それをこの場で拘束するなんて度胸は下っ端の騎士にはなかった。

 なので、とりあえず危機を脱したわけだが、第二皇子バルドにかかった疑いが晴れたわけではない。


 そこでオレ達でバルドに尋問を行うことにした。本気で彼を疑っているわけではないが、城内にいた人物から情報を聞けるならそれに越したことはない。


 ちなみに、オレがあの下っ端騎士の立場だったら相手が皇族でも逃がしはしなかった。

 職務への忠実さの問題だ。あとで自分が不敬罪で罰せられたとしても、己の職務を怠る方が恥だし、主君への不忠になると考えるからだ。


 だが、誰も彼もそう動くわけじゃないし、そう動けばいいわけでもない。

 その点で言えば、やはり、我が第一皇統派まだまだ人材不足だ。特に、オレとは違うものの見方をする参謀役が必要だ。


 それはそれとして今はオレしかいない。であれば、オレがジークリンデを守らねば……! 例え、この命に代えてでも……!


「――面目次第もありません!」


 周囲に人のいない別室に移動するやいなや、バルドがそう叫んだ。きちんと頭を下げている。角度も綺麗に90度だ。

 まあ、当然ではあるが、素直に謝れるようになったのは成長だと思うとしよう。原作でも主人公との関係性で成長していくキャラだしな、バルド。


「それよりも、なぜ帝城にいらっしゃるのですか、バルド殿下。しかも、フードなんて被って、それでは怪しんでくれと言っているのと同じですよ」


「た、確かに、ごもっともです、義兄上」


「その呼び方はやめていただきたいんですが……」


 ジークリンデを椅子に座らせて、オレはその隣に立つ。

 事件現場でもある宝物庫の方も確認しておきたいが、今はこっちが優先だ。どうせ宝物庫の方も第三皇統派が封鎖しているだろうしな。


「ともかく、ご説明をお願いします。まさかあなたの仕業じゃありませんよね?」


 一応、聞いておく。

 もしバルドが今回の事件の犯人だったら、まさしく天地がひっくり返る。これまでの常識やら原作知識やらももはや無意味になるな。


 ……本当に『自分がやりました』なんて言い出したらどうしよう。

 叩きのめしてから突き出すか? いや、それだと第一皇統派にもダメージが……、


「そ、そんなわけありません! ぼ、僕に後ろ暗いことなど何一つありませんよ!」


 この反応……実に怪しい。

 宰相と槍の冠に関してではないが、何か隠しているな。


「……バルド」


 これにはジークリンデも呆れてため息をついておられる。

 優しい彼女でもそうせざるをえないほどにバルドの隠しごとは明らかだった。


「正直に話していただけぬのであれば、こちらとしても庇いようがありませんよ。それともなんですか、話せない理由でもあるのですか」


 強く詰めるが、心は別に痛まない。

 バルドには常日頃から武術の鍛錬以外にも帝王学の基礎も講義しているから、多少は進歩しているはず。であれば、今回の件について自分がどれだけ良くない立ち回りをしているかについてはさすがに理解できているはずだ。


 というか、だからこそ言い淀んでいるのか。申し訳なさで。

 よく見てみればそんな顔をしている。正直、バルドの顔になんか何の興味もないんだが、それなりに付き合いがあるせいかそんなことまで理解できてしまった。

 

 ……仕方ない。話しやすいようにしてやるか。


「わかりました。怒りませんから話してください、殿下。約束します」


「そ、そうか、ありがとう、義兄上」


 オレが怒らないと言明するとあからさまに安どするバルド。どうやら気にしていたのはそこらしい。


「じ、実は晩餐会が終わった後、僕は城に戻ったのです。どうしてもとある方にお会いしたく思い、その、こっそりと……」


 照れているが、それでいて話したくてたまらないという感じの語り口だ。

 

 ……しかし、こっそり戻ったか。

 招待客が一人残らず城から出たのは確認していたが、そのあとに戻ってくるのは想定していなかったな。

 

 というか、警備を引き継いだ近衛兵団はなにをやってたんだ?

 いくら練度が低いとはいえバルド程度ちゃんと見つけておけよ。

 

「で、どなたに会いに行ったんですか?」


 まあ、予想はついているがあえて尋ねる。さすがにそういうのは卒業したと思いたいが、持って生まれたサガというのはいかんともしがたいものだ。


 昨夜の晩餐会の後、大半の招待客は自らの屋敷に帰ったが、何名かは城内に留まっていた。そのうちの一人は祭事のために城内に留め置かれており、バルドとある意味深い関わりがあるのも彼女一人だ。

 

 それに、理由もわかる。バルドなりにけじめをつける機会だと思ったんだろう。タイミングは最悪だが、そのこと自体は誠実さの表れと言えなくもない。


「そ、その、せ、『聖女』殿に、そのお会いしました……」


「バルド…………」


 今度のジークリンデのため息には存分に『まったくあなたは懲りてないのか』という響きが含まれていた。


 気持ちは大いにわかる。だいたいバルドが婚約破棄なんてことを言いだし、オレに殴られて説教される羽目になったのはそもそもが聖女フレインと関わったことに原因がある。

 にもかかわらず、また聖女にちょっかいを掛けようだなんてとてもじゃないが正気の沙汰じゃない。


 だが、今回に限ってはただ単に美女の尻を追いかけているわけじゃないと信じてやれる程度にはオレはこのアホ皇子と関わりを持ってしまっていた。


「ジークリンデ様。バルド殿下はおそらく聖女殿へ謝罪をなさったのではないかと。ほら、例の件ではずいぶんとご迷惑をおかけしましたし」


「そ、そうなのです! 聖女殿は僕を避けておられるようなので、今回しか機会はないと思い……!」


 オレが助け舟を出してやるとバルドは即座に乗り込んでくる。

 こういうことをしてると相手のいいように誘導されるからやめた方がいいんだが、今回は誘導するのがオレだからよしとしよう。


「……それは、良い心がけだとは思いますが」


 ジークリンデも心なしか嬉しそうではある。ただの色惚けだった弟がきちんと道理をわきまえ、誠意を見せようとしたというのは十分に喜んでいいことだ。


 あとは脇が甘くないといいんだがそこらへんどうだろうか。


「…………ちゃんと、イリアナには相談したのですか」


「はい! もちろんです!」


 さすがはジークリンデだ。ちゃんと勘所を抑えておられる。

 そう、フレインへの謝罪そのものはいいことでもそういうことをするのには順序というものがある。イリアナに義理を通すのは最低限必須だ。


「…………イリアナはなんと言っていましたか」

 

「殿下の御意のままに、と。といっても、反対というわけではなくむしろ背中を押してくれたのですよ!? 本当ですよ!?」


「………………信じましょう」


 ジークリンデが頷く。彼女が信じるというのであれば、オレに異論はない。特に今回の場合は、オレよりもジークリンデの方がイリアナ嬢には詳しいしな。


 傍から見ていても婚約破棄事件以来、イリアナ嬢は逞しくなっている。時折バルドの特訓に付き添っていたけれど、その時にバルドがヘタレるとけつを蹴り上げそうな勢いで叱咤していたしな。

 どうやら婚約破棄されたのは自分にも責任があったのではと思い至り、皇族の婚約者として花のように座っているだけでは駄目だと一念発起しようだ。まさか原作改変にこんな効果があるとは思わなかった。


 だから、イリアナ嬢がきちんとけじめをつけてこいと婚約者を送り出したとしてもそう違和感はない。むしろ、しっくりくるくらいだ。


「まあ、それでも自分やジークリンデ様に相談していただければもっといい方法を提案できたのですがね。翡翠槍騎士団に追い回されるなんて珍事も避けられたでしょうに」


「うぐ……面目ない……」


 へにゃへにゃとなるバルド。まあ、これでも成長した方だし、これくらいで勘弁してやるか。


「ですが、いい点もあります。バルド殿下の潔白は聖女殿が証明してくださるでしょう。さっそく証言をいただかないといけませんね」


「そ、それが義兄上。聖女殿とはお会いできなかったのです」


「はい?」


 じゃあ、夜明けまで城内でなにしてたんだ、こいつ。


「聖女殿お姿を見つけられず、城内を徘徊しておりました……そのうえ、第二皇子だと見とがめられてはまずいとこうして外套を……」


 「…………なんて間の悪い」


 オレより先にジークリンデが唸った。

 イリアナと会えなかったということはバルドのアリバイを証言できる人物はいないということだ。その上、フードまでかぶって城内をうろついてたとなれば皇族と言えども疑いは避けられないぞ。


 まったく、このアホは。少し見直したオレの気持ちを返せよ。


「で、でも、それだけではないのです! 僕は宝物庫の近くである者たちを見たのですよ!」


「ある者……?」


「黒づくめの一団です! そのうちの一人は半月型の曲剣を手にしていたのです!」


 ……黒づくめに半月型の曲剣、だと?

 …………断片的な情報だ。おまけに直接見たのはバルドであり、証言が確実だとも言い切れない。


 だが、オレの脳裏では一人の容疑者が浮かび上がっている。


 第三皇統派の抱える暗殺集団『凶風フィンブル』。彼らの特徴は黒ずくめの衣装と半月型の曲剣だ。

 そして、凶風の現頭領である『ウルヴ』は晩餐会にも出席していた。


 つまり、今回の凶行の実行犯は原作における攻略対象の一人『ウルヴ』ということになる。

 なんてことだ、オレ、ウルヴの事、それなりに好きだったのに……!


 ……いや、それだけじゃない。相手がウルヴならもう帝都から脱出しているはずだ。となると、今回の件の真犯人も『槍の冠』も確保は難しい。


 どうしたものか……、


「しかも、その連中はボクを見つけると襲い掛かってきたのです! ですが、ボクも以前のボクではありません。義兄上に鍛えていただきましたからね! 1対2でしたが、手傷を負わせてやりましたとも!」


 そんなオレをバルドは三度、驚かせる。

 バルドが『凶風』の構成員に手傷を負わせた、だと……? 原作でのバルドの能力値的にあり得ないだろ、という驚きもあるが、なによりも傷を負わせたという事実が大事だ。


 バルドが話を盛っていないのなら『凶風』と『槍の冠』は帝都に存在しているということになる……! 挽回のチャンスはまだある!


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