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望むはただ平穏なる日々  作者: 素人Lv1
学院(2年目) 編
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  閑話 いつも通りの1日

「おやすみ」


「あ、ああ、おやすみ」

 就寝の挨拶を交わし別れる。


 背後のドアが閉まる音を聞きながら部屋の中を歩く。


 服を脱ぎ、夜着へと着替える。


「今日も1日変化無し、か。アイツは何処まで鈍感なのだ?」


 今日も1日色々と試してはみた。

 だが、効果が有ったとは思えない。


 寝起きの悪いアイツを甲斐甲斐しくも起こしてやったのだが、

「もうちょっと、もうちょとだけ」

 などと言って、布団に包まるので、そのまま簀巻きにして窓から放り出してやった。



 今日はいつもとは違う角度から攻めてみた。

 オリビアから奥儀【上目遣い】というものを教わった。


 オリビア曰く「相手の眼前で、わずかにうつむき加減で相手を見上げる」のだそうだ。

 更には細かな派生技も有るのだそうだが、難しく理解できなかった。


 オリビアに試してみたところ。

「グハ!素晴らしい」

 そう言うと仰向けに倒れた。


 呼吸が荒く、何かをブツブツ呟いていたので、助け起こしてみたのだが、

「上目遣いでお願いします。両手の指を胸の前で組んで『大丈夫♪』と」

 オリビアの顔付きは真剣だった。


 言われた通りに指を組み、【上値遣い】を使ってみる。

「大丈夫?」

 何か違う感じがするがコレで良いのだろうか?


「ゲフッ!!最強でふ」

 何故か鼻血を流したオリビアは鼻を押さえて奥へと下がっていった。


 準備万端いざ試さん。


 アイツは居間でソファーに座り、ギルドの依頼書を読んでいた。


 さて、どうする?オーソドックスで行くか?それとも最強技で行くか?

「フム。攻撃は初手から最強技を。だ」


 背後から忍び寄り、その後頭部を叩き倒した。


「痛ッ!なっ?何すんだよ」

 ソファーから転げ落ちたアイツは、驚きと抗議の声を上げてきた。


 その前に膝を着き、指を組んで【上目遣い】を発動させた。

「大丈夫?」


「ヌァ?」

 アイツは驚いたような声を上げると、目を丸くしていた。


 もう一押しか?なにを足す?気迫か?目力か?

 瞬時の判断で裂帛の気合を乗せ、額が触れるほどの距離から【上目遣い】を発動させた。

「大丈夫か?」

 コレは決まっただろう。そう確信に似た思いが有った。


 だが、

「ッ!?」

 瞬間にアイツの姿は消えた。


「む?」

 瞬時にして壁際に移動したアイツの速度は『空間転移』を修得したのかと思うほどだった。


 全く持って何故かは分からないが、失敗したという事だけは理解出来た。

「フム、胸倉を掴むと効果は薄くなるのか?」

 もう暫く研究が必要なようだ。


 部屋を出て行こうとした時。

「・・・(マジで)殺され・・・(るかと)思った」

 何か聞こえたような気がして振り返ると。


 アイツは両手を上げてブンブンと首を振っていた。


 何かの運動なのだろうか?



 ナタリアがエリザベスの耳掻きをしていた。

 

 コレだ!


「おい、お前にもしてやろう。こっちへ来い」

 私は自分の膝を叩き膝枕をしてやるとアピールした。


 どうやらアイツは膝枕が好きなようだ。


 先日も直前まではジタバタと暴れていたのに、膝枕をしてやると大人しくなった。

 きっと喜ぶ筈だ。


 なのに「いや、遠慮する」だと?ナタリア達の目を気にしているのか?


「遠慮するな。残らず(耳垢を)掻き出してやる」

 私の言葉に何故かアイツは脱兎の如く逃亡をはかった


「ナタリア!捕縛しろ」

「えっ!?あ、『拘束バインド』」

 アイツの体を光の輪が拘束する。


 引きずり倒され、芋虫と化したアイツを膝の上に乗せる。


「大人しくしろ。鼓膜を破るぞ」

 私の優しい忠告にビックと体を震わせる。


「いや、いいから。必要無いから」

 アイツはそれでもまだ抵抗を見せた。


「エイ♪」

 エリザベスがその口を粘着布で塞いだ。

「左耳は私が綺麗にして差し上げますわ♪」


 観念したのか、アイツは大人しく思う存分膝枕の感触を楽しんだようだ。





「全く、アイツは何処まで鈍感なのだ?」


 今日一日を思い返し、些か腹が立った。

 これほど積極的にアプローチしているにもかかわらず、全く気付くそぶりも無い。


「まぁいい。そのうち私の魅力で骨抜きにしてやる。覚悟して置けよ、ヒロ」


 そう呟くとアリシアは寝台に潜り込んだ。


 何故骨抜きにしなければいけないと思ったのかが、イマイチ思い出せないが、やり始めた以上は完遂する。途中で投げ出すなど論外だ。


 胸の疼きが、中々達成できない事への苛立ちなのか、もしくは他の感情なのかは分からないが、アイツと過ごす1日が心地良い事だけは分かっている。


 明日は如何しようかと考えながら、アリシアは眠りに付いた。



 彼女は知らない。レニール山での一件で満面の笑顔を浮かべる程怒っていた彼女にヒロが怯えている事を。

 彼もまた知らない。アリシアの中でそんな事とうの昔に忘れてしまっている事を。



 いつも通りに始まり、いつも通りに過ごし、いつも通りに終わる。

 特に変わった事が有った訳でも無い、いつも通りの1日だった。

アリシアさん、どこへ行くの?な話でした



次回から通常運転に戻る予定です

(アリシアさんもメリオラさんも)



感想、ご指摘等ありましたら

宜しくお願いします

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