第13話 夢の中 だれかのきおく
空が青かった。
見上げていると、自分が立っているのか、落ちているのか、分からなくなりそうな青だった。
足元には草があった。
見渡す限りの草原。
風が吹くと、同じ方向へ倒れ、また起き上がる。
建物も、道もない。
僕は一人で立っていた。
何をしているのだろう。
ここへ来た理由を思い出そうとした。
思い出すより先に、視界が塞がれた。
後ろから、両目を覆われた。
手だった。
細い指。
温かい掌。
僕は反射的にその手を払い、振り返った。
女の人が立っていた。
金色の髪が、風に揺れている。
顔を見ようとした。
見えなかった。
そこだけ、薄い霞がかかっている。
目を凝らしても、輪郭が定まらない。
けれど、口元だけは分かった。
笑っていた。
悪戯が見つかった子供のような、親しげな笑い方だった。
誰だろう。
知っている人だろうか。
そう考えていると、女の人が腕を上げた。
僕の後ろを指している。
振り向いた。
人がいた。
いつから、そこにいたのか。
何人もの人が、片膝をついて並んでいた。
甲冑を着た騎士。
格式の高そうな礼装に身を包んだ紳士。
厚い書物を抱えた学者らしい人物。
上半身をほとんど覆わず、獣のような体躯をさらした者。
髪の色も、肌の色も、身体の大きさも違う。
武器を携えた者もいれば、何も持っていない者もいる。
その全員が、僕の前で首を垂れていた。
僕は後ろを見ようとした。
自分の背後に、ほかの誰かがいるのだと思った。
けれど、その前に、一人が顔を上げた。
甲冑姿の騎士だった。
顔には、やはり霞がかかっている。
表情は分からない。
ただ、口元が緩んだ。
笑みが、こぼれた。
何かを言った。
声は聞こえなかった。
唇が動く。
短い言葉。
僕へ向けて、もう一度。
読み取ろうとした。
分からない。
何かを伝えようとしている。
それだけは分かる。
僕は一歩、近づいた。
草が足首へ触れた。
騎士の唇が、また動いた。
今度こそ、と目を凝らした。




