逢いたい
消えそうな声でそういったゆかは、ゆっくりとまぶたを閉じた。
しばらく雨音だけが森の中に響く。
浅木「ッ、おい、っ、、ゆか、!!
っ、、、、、」
俺は唇を強く噛む。
りん「ッやだよっ!!ゆかぁっ、、!!!ねぇ、、!!目を覚ましてぇ、っ、、」
りんの悲痛な叫びに応答せず、ただ安らかに眠っていた。
すると後ろから足音が聞こえてくる。
暁「やれやれ。最後まで手のかかる子だったよ。
でも、あっさり死んじゃったね。」
鼻で笑う暁を見て、俺はこれまでに抱いたことのない強い殺意を持った。
腸が煮えくり返るようで、心の奥底からの殺意を。
浅木「ッうぁ”ぁあ”あ”あぁ”ぁ”っ!!」
それからの記憶はまったくない。
正気を取り戻したときは、りんに羽交い締めにされていた。
りん「ね”ぇッ、、!!浅木”っ、、!!!!」
俺が一旦動きを止めると、りんは荒く息を吐きながらゆっくりと拘束を解く。
目の前には、ぐちゃぐちゃになっている暁だったものが横たわっている。
、、俺がやったのか、?
俺は目の前の光景に混乱しながらりんのほうを振り向く。
りん「っ、、とりあえず、本部に行こう、」
りんはなにか言いたげな表情だったが、それを押し込んで俺に声を掛ける。
俺達はゆっくりと本部へと向かった。
本部に到着するまで、雨はやまなかった。
「いやぁ、、勝手なことされると、困るんだよね。
、、とはいえ、エネミー感知センサーが一気に反応しなくなったんだけど、、
滅亡したのって、本当?」
りんがすべて、上司に話してくれた。
俺はただ、なにもない窓を見つめているだけだった。
21xx年の春、エネミーが完全に滅亡し、俺たちは討伐員を卒業した。
世間一般で言う、幸せで、普通の生活に戻った。
ただ寝て、食べて、寝る。
それだけの生活。
俺の心には一つの喪失感だけが残っていた。
飯は味がしない。
なかなか寝付けない。
息苦しくなる。
ある日、俺は旅行へ行った。
ゆかの母国。
ただ青と白しか無い晴れた空間を飛行機の中で見つめていたら、
あっという間に目的地に到着してしまった。
俺は空港を出てまっさきに、「インオーガニック元訓練本部」へ向かった。
フランスは今、夜中の二時。
誰もいない静かな春の空気を堪能しながら、俺は本部に火をつけた。
視界が赤に染まる。
ここは、ゆかを苦しめた建物。
詳しくは聞けなかったが、ひどい仕打ちを受けていたのだろう。
あの全身の傷がそれを物語っていた。
しかたなくやったわけじゃない。
俺がこうしたかったんだ。
どんな手を使ってでも、ゆかの無念と俺の恨みを晴らしたかった。
俺は燃え盛っている建物を後にして、泊まる予定のホテルに向かう。
フランスでも有名なホテルは、屋上の空気が楽しめることになっている。
俺は、フェンスに身を乗り出し、
屋上から身を投げた。
はやくゆかのもとへ行きたかった。
目を瞑ると、瞼の裏に走馬灯がよぎる。
今まで一緒に過ごしてきた、二人の顔、
ゆかの顔。
ゆかの、あどけなくて、無邪気な表情。
俺はそのまま意識を手放した。
りん「、、流石にないよ。浅木。
なんでよ、
なんで、そんなことしたの、」
りんは、泣きながらりんごの皮を向いている。
りん「自殺未遂なんて、、
ゆかも望んでないよ、」
俺は何も言わず、ただゆかに握らされたワスレナグサのブローチを見つめる。
忘れないことだけが、ゆかにとっての救済なのか。
(あいたい)
浅木「、、、Tu me manques」




