Ep.19ーハクー
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命からがら逃げ帰った頃には大物捕りも終わっており、そのまま臨時キャンプで救出した人たちの確認作業へ合流した。
「今日中に帰してもらえるかしら?」
「さあ」
早めに寝たいんだけどな。
いよいよ二日後に迫った星祭りに備えて、王都では城壁の外から見てもわかるほど賑わっている。今頃城門は商人でいっぱいのはずだ。
「お、帰ったのか!無事でよかった!怪我は!?ないな!?」
大量の薬瓶を抱えたリーダーが目の前を通ったかと思えば、こっちを見るなら駆け寄って来た。最初は笑顔だったのに、数秒の間に青い顔に変わって、怪我の心配をされた。表情筋が忙しそうだ。
「よかった。本当に心配したんだぞ!」
「おかげでかすり傷一つなかったわ。それより早く子どもたちのところへ行ってあげて」
そう遠くない場所にボロボロの子どもたちが集められている。その子たちのための薬瓶を運んでいるらしい。
「おーい!薬まだかー!」
「悪い!今持ってく!・・・嬢ちゃんらも見に来るか?気分のいいものじゃないかもしれないが」
「行くよ」
「なら私も行くわ」
気になる子もいるし。
案の定その子は周りからは浮いていて、一人で隅の方に座っていた。
***
一人で俯いていると、白銀の髪の人が隣に座り込んできた。
「・・・」
また宥めにきたのかと思ったら、その人はなにも言わずに支給されていたパンを、一人で食べだした。
「なに?」
そう聞いてもその人はなにも言わない。代わりにパンを半分に割って、片側を無言で差し出してくる。
「・・・」
「いらない」
「・・・」
「いらない」
「・・・」
「だからいらないって」
「・・・」
何度拒絶してもその手は差し出されたままで動かない。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
こっちのことを全く気にしていない顔で食べ続けるくせに、手だけはこっちに伸びている。それが無性に憎たらしくて、仕方なくそのパンを手に取った。
それでも食べずにいたら、今度は顔がこっちを向く。すごく綺麗で、でも冷たく見える。故郷の雪景色のよう。
「食べないの?」
「・・・」
「だったら返して」
うわ、全然優しくない。
でも言われた通りに返すのは手のひらで転がされているようで癪だから、齧りついてやった。
「食べればいいんでしょ」
ゆっくりと噛めば、久しぶりに生きている心地がする。食べ物がある安心感というのはこんなにも温かかったのか。
「なんで白虎がここに?」
「・・・村が襲われたの。それで隠れてたら人攫い共に見つかって、連れてこられた」
なんでこの人にこんなことを話しているんだろうか。
「野盗?」
「ううん。私が生まれる前に大規模な反乱があって、そのときに離反した人たち」
「そう、珍しくはないね」
普通なら白虎っていうだけで十分珍しいと思うはずなのに、まるで見たことがあるような口ぶりだ。




