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Ep.18ーリューー

お読みいただきありがとうございます。

 二人で坑道内を疾走する。身体強化をかけているため、はたから見れば馬と同じくらいの速度が出ているだろう。


「さすがね、これだけ長時間維持し続けれるなんて」

「一応基礎でしょ」

「でも膨大な魔力を循環させるから、身体への負担はなかなかのものよ」

「だからこそ私たちにしかできない芸当だ」

「そうね」



 魔法と呼ばれるこの力を使うときには、当然ながら魔力を消費する。ではその魔力はどこから出ているのか。当然勝手に湧き出てくるものではなく、自然の中に存在しており、魔法使いはその魔力を体内へ取り込み変換することで、魔法を使用している。


 つまり魔法使いにとって、自身の身体は魔力を魔法へ変換するための媒介なのである。もちろんその体には負担がかかり、個人差はあるが限度がある。その限度を超えたとき、それは死となって返ってくる。


 扱える魔力量を増やすには、ただひたすらに鍛錬を積み、体を慣らす意外に近道はない。砂粒を集めて山を作るようなもの。



 私たちが魔法を使い続けた時間は、恐らくこの世の誰よりも長い。だからこそ圧倒的な魔力量を扱うことができ、圧倒的な強さを保ち続けられるのだ。



 こればかりはフリーゲも追いつけなかったのよね。



 気づけば目的地が見えていた。


「あそこね」

「また結界」


 さっきのと同じもの。


「割れたわ。認識阻害も同時にかかっていたみたいね」

「これは・・・」



 目の前に広がるのは大きな空洞の中に広がる研究室。あらゆるところに資料が張り巡らされていて、無数の手書きのメモが残されている。いつしかの子部屋と重なる景色に、一瞬足が止まった。


 なんとなく気になった本の山から一冊手に取ってみると、かなりの年月が経っているにも関わらず、多少埃を被っているだけで、状態がすごくいい。


 真ん中に配置されている机には気が遠くなる数の手記が積まれていて、どれほど熱心に研究していたかがわかる。


「こんなこと、いつの間にしていたのかしら・・・」


 間違いなく彼の書いたものだわ。ちょっと右上に上がるクセもそのままね。


 一枚一枚が懐かしい。あの子は熱中すると、とにかく全部書き出すタイプだったから、膨大なメモが出来上がる。


『また集中してたのね』

『あ、師匠。もう少しで分かりそうなんです』

『どこが?見てもいいなら、ヒントぐらいは出してあげるわよ』

『うーん。これなんですけど、この数式がどう頑張っても合わないんですよ』

『これはね・・・、まず字が汚くて読めないから、もう一度書き出してもらってもいいかしら?』


 そうそう、とんでもなく字が下手だったわ。いつの間にか解読できるようになったのよね。



「どう?なにかわかりそう?」

「どうやら神話についての研究のようね」


 好奇心の強い子ではあったけど、なぜかしら?


「・・・創世の戦い、聖女テラ・・・、神龍の墓・・・、英雄の守り剣イニティウム・・・、世界樹、世界樹の弓クレイス・・・、ソラニテとソラニアの逸話・・・」


 どれもこれもただの言い伝えや伝説でしかないものね。古代魔法の研究でもしてたのかしら。細かくは読んでいないけれど、各地域の話を比較しているようね・・・。


 もう一度読み直そうとしていた時、ハクが肩についた何かを払いながら話しかけてきた。


「・・・ここ早く出たほうがいいかも」

「え?」


 熱心に読んでいるのを邪魔したくはなかったんだけど、と言われた後、



「崩れ始めてる」



「嘘!?」

「支えていた結界がなくなったから・・・」


 結界はこの空間を包むように貼られていて、この空間を支えていた。だから結界がなくなってしまった今の状態では支えるものがなく、短時間で耐えれなくなる。ここを守っていた繭はもうない。


「そういうことね、すぐ出ましょう!壁の絵!できるだけ剥がしてくれない!?剥がし方は問わないわ!」


 この資料だけでも!


「わかった」


 机に散乱している資料やらノートやらをインベントリに片付けている間に、ハクは壁にあるものをまとめて剥がしてに詰めていく。ベリっと端のほうが犠牲になってしまうのが気になるが、時間との戦いでは気にしてられない。


 その間にもパラパラはバラバラへと変わり、だんだんと大きな塊が落ち始める。


「急いで!」


 ズッっと体の芯まで響くような重い音がした瞬間、私たちは走り出した。


 いろんなところから砂の滝が降り始め、一度引き金が引かれた天井は、もう役割を果たしたとでも言うかのように壊れ始める。


 まずいわね、このまま坑道まで崩れると脱出ルートがなくなる。とりあえず外に出なければ!


 とにかく急いで坑道を走る途中で、ズシン!ズドン!と大きな音が聞こえてあの部屋が完全に崩れたことがわかった。予想通り、それに釣られて坑道も崩れ始めている。



 崩れてしまったのね、あの子の痕跡が。こんなにも呆気なく。



 感傷に浸りたい気分だというのに、後ろを振り向く暇すらない。あともう少し、あの印より奥に行けば安全だ。



「はあ、・・・もう大丈夫、かしら?」

「・・・たぶん」


 気づけば崩落は止まり、私たちは無事抜け出せた。



『あー!あー!返答願う!奥へ調査に行った二人!返答願う!』


 通信機なんて忘れてたわ。


「はい」

『大きな音が聞こえたが、大丈夫か!?』

「こっちは大丈夫です。ですが、調査対象の空間が崩れ落ちました」

『なるほど、そういうことだったのか。怪我は?』

「特に」


 実際かすり傷一つないもの。


『そうか、よかった。よくぞ無事だった。調査のことは気にしなくてもいい。お前らを送り込んだ時点でこうなる可能性は十分にあったからな。それより脱出できたんだな?』

「はい、緑のハンカチがある地点で小休息を取っています」

『了解した。君たちは引き続き休息を取りつつ帰還するように。こちらも特に影響はなかったので、安心して帰ってこい』

「わかりました」


 この人、将来いい上司になるわね。

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