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Ep.15ーハクー

お読みいただきありがとうございます。

「ねえハク、何か食べ物を持ってないかしら?」


 食べ物・・・、あった。


「すごく硬いけど」


 バッグから取り出したパンは、超長期保存用の堅パン。弱っているこの子たちの胃が受け付けるかが心配だ。


「どうかしら?」

「私たちは大丈夫だけど・・・」


 小さい子たちは食べれない。そう言いたいのだろう。


「とりあえず食べれる人は食べて」

「・・・ありがとう」


 訝しみながらも一人の子が手を伸ばすと、二人、三人と何本かの手が伸びてきた。



 その中でも一人、特出して警戒心剥き出しの子がいる。


「・・・」


 じっとこちらを見つめたまま動かないが、その目は釣り上げられ、明らかに睨まれている。まるで未熟ながらに威嚇をしてくる子供の獣だ。


 それが気になって、私もその子を見つめた。


「・・・・・・」

「・・・・・・。白虎」

「!」


 その子は明らかにビクッと体を震わせた。珍しいことがあるものだ。


 白虎族は北にあるイェ・レーゲ公国を主な居住地とする、獣人族の中でも希少種の一族だ。年中吹雪が猛威を奮う最北の山脈、スヴェーク山脈で集落を作って暮らしているはずだけど。


 ボサボサの髪の中に隠れているものの、頭から小さく生えている一対の白黒の耳が、その証拠である。


「あら、攫われてきたのかしら?大丈夫?」


 気付いたリューは、急いでその子の傍に駆け寄って回復をかけようとするが、



 バチッと火花が散る音がして、リューの魔法が弾かれた。



「あらら・・・。心配しないで、痛くないわ。あなたの怪我を直したいだけなの」

「・・・」


 バチッ!


 それでもなお彼女は治療を断る。


「その子、ずっとそうなの。何も喋らないし、水しか飲まないの」

「そうなのね・・・」


 全員に堅パンを配った頃に、私たちがやってきた方からバタバタと足音が聞こえてきた。


「遅くなってすまない!」


 やってきたのはリーダーの冒険者の人と、騎士団。


「ご苦労だった、この子たちの残りの世話は引き受けよう。君たちには更に奥の方を見てきて欲しい」

「・・・わかりました。お願いします」


 白虎の子が気になったが、とりあえずは任せるしかない。リューも同じ判断に至ったようだった。



「あとどこが探索されてない?」

「奥に行って左に曲がったあと、さらに左に曲がってから右手の通路だ。ここのリーダー格のやつがまだ見つかっていない。たぶんそこにいるだろうから、俺とこいつとおまえらの四人で行く」

「了解」


 ならばさっさと行こう。


 すでにいくつか目印が立てられた通路を走りながら、統括の冒険者が話しかけてきた。


「なあ、嬢ちゃん。その剣、重くねえのか?」

「?ある程度の重さはありますよ、大剣ですもの。質量が強みの武器ですし」

「・・・そうだよな」


 会話が噛み合ってない。誰だってこんなチグハグな組み合わせを見たら、一瞬は戸惑うだろうけど、それが常識のリューには意味がわかっていない。


 ・・・まあいっか。


「ここね」

「ああ、結界がかかっていて入れないらしい」

「そうみたいね」

「解けそうか?」

「それは解析してみないとわからないわ。・・・!」



 一瞬、リューがなにかに気付いたような顔をした。



 その人の言う通り、掘られた通路の先に行かせないように、結界が張られている。


 随分と複雑な式だ。リューン革命期のものにも見えるし、魔塔初期のものにも見える。


「シュカヤ解離式まで・・・」

「・・・・・・」


 私が見てきた中でも、トップクラスで高度な、各時代の理論が織り交ぜられた式だ。


「これはちょっと時間が・・・」


 そう言いかけたところだったが、



「これはこことここを弄れば、すぐ開くわ。複雑に見えるけど、実はすごく簡単なのよ」



 リューがなんなくそれを解いた。

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