第14話
老貴族の首を送りつけて暫くした後に、聖女はついにカネの力で、貴族と渡り合うまでの力を得た。
「えー、この度の戦はぁ、正統たる我らの領地を奪還するためのものでありぃ、異教の蛮族を討つための聖戦としてぇ…」
ダラダラとした国王の演説は、誰もまともに聞かなかった。会場に集められた諸侯は、すでに宴会を行い、辺りは嬌声と紫煙に包まれている。
国王本人もやる気はなく、演説を適当に切り上げて、とっとと王家繁栄の営みでもして、寝ることで頭が一杯だった。
「……であるからしてぇ、余の激励は以上であるぅ…
最後に、わが国の誇る聖女どのより、お言葉を賜って終わりとするぅ…」
「どうもこんにちは、聖女です……異教に支配された土地のもんは、異教徒です。つまりこれがどういうことか、諸侯はおわかりでっか?」
まるで胡散臭い聖女に、チラホラと諸侯が目を向ける。特産品の元締めである分、国王よりも人望はあった。
「そうです!略奪自由な牧場とおんなじですわ!土地も、人も、財宝も、ぜ〜んぶブン盗った兄さんらのもんですわ!!
煮るなり焼くなり、好きに出来まっせえ〜〜!!!」
比較的シラフの1人が声をあげた。
「そのような訳にいくまいに…」
「おうおっさん、誰に物言うとんじゃい…?神に認められたわたしの言葉に、綾つけよ言うんかコラ、おう?
今も神さんは、異教徒はみな家畜や言うとんやぞー!!」
イイゾー!ヤレー!コロセー!
外では男達の野次が轟く。青ざめた諸侯たちは、しきりに紫煙を吐いて、気を落ち着けた。
「よっしゃ、ほんならお手本みせましょ!今から、わたしらだけで領地を奪い返したりますわ!
思い立ったら善は急げや、ごめんやっしゃ!」
聖女は勢いよく椅子を蹴り飛ばすと、会場を後にする。外では男達の雄叫びが、悪魔の絶叫の如く重なっていった。
諸侯たちはたまらず、国王に詰め寄る。
「王よ!聖女はないですぞ!」「あやつが万が一勝てたところで、騎士の名誉にはなりませぬ!」「不敬や国辱を通り越して、もはや国是に関わりまする!」
やんや、やんやの大騒ぎのなか、紫煙を深く吐き出しながら、国王が呟いた。
「だっておまえら、口だけじゃん…それにもう駄目元だし、失敗しても聖女の責任で、いいでしょもう…
そもそも、今も吸ってる特産品、いまさら手放せんの…?」
会場が一瞬で冷め切るなか、外では逃げ戸惑う声と、悲鳴が聞こえだす。その理由を、誰もが直感していた。調べようともすることもなく、諸侯と国王は深く煙を吐きだしていた。
攻撃開始から数ヶ月後…
華々しい勝利よりも、収奪こそが正義と掲げる聖女軍の虐殺は、生者のいない土地を、次々と生み出していった。




