第12話
攻城戦から数ヶ月は過ぎた。
爽やかな風が吹く、みどりの波が揺れる。
この世は晴天だった。
「いいですかみなさん、ちゃんと作り方をおぼえて下さいね?」
「これくっせぇ!」「おめぇの口ほどじゃねェよ」「あーす……なんかすぅごぃ気持ぃ…ああすっごい…」
黒みのある茶色の汁が、男達の持つ花から滴り落ちる。落ちたしずくは、木桶に収まっていった。
「学も知恵もないみなさんが、簡単に稼ごうと思ったら、もうこれしかないんですよ?」
ある程度の汁が溜まった木桶は、また別の男達に運ばれた。木ベラを持った男達は、その汁を固形に近くなるまでかき混ぜる。
作業に没頭する男達の目は、かつてないほどに輝いていた。そして笑顔で溢れている。
「男爵様の領地で栽培したんですからね、これがここの特産品ですよ。
純度100%、混ぜ物なしの最高品質です」
そう言って、聖女は嗤った。男達の目は真っ白なほどに輝いていた。
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「ママ!このケーキおいしいね!」
「そうね。これなら大衆も喜んで食べるわ、豚の様にね。
そう思いませんか?お祖父様?」
若い侍女に腰を振り続ける老貴族に、もはや正気はなかった。瞳孔は開き、口の端からは涎を垂らしている。
侍女は特産品の紫煙を吐き出しながら、狂った嬌声をあげ続けた。その煙を、老貴族は侍女から口吸いする。
「あとは私たちに任せて、ここでゆっくりと余生をすごして下さいね?」
「またケーキ持ってくるね、おじいちゃん!」
聖女は部屋から出ると、入口に立つ男に誰も通すなと指示をした。
かつての気品を全て失い、快楽の園へと堕ちた老貴族は、この先もずっとああしているのだろう。その姿に、黄金に輝く未来を想像して、聖女は静かに濡れた。
大男を連れて中庭に近づくと、近隣から集められた商人達が、不安と好奇心を織り交ぜた表情で並べられていた。
コイツらは黄金の輝きに誘われる、愚かな羽虫に過ぎない。だがこの特産品の価値を、正しく理解できる益虫なのだ。ならば正しく飼ってこそ、金の雨を降らせることができる。
___まずは蕩けさせて、羽は毟りとってあげる。
聖女は微笑むと、中庭からひとりひとりと、紫煙に満ちた部屋へ導いた。




