第11話
陥落した城内に、惨憺たる光景が広がる。
君主の間では、一方的な、戦後交渉が行われていた。
「所詮この世は糞溜まりです」
「…」
俯いた老貴族に、言葉は続いた。
「全部たまたま、偶然です。この子も森に入ったら出会しただけ。運良く殺されなかったのは、私の容姿が優れていたから」
「ママ…」
はいはい、ママですよ。投げやりな返事でも、大男は喜んだ。
老貴族は俯いたまま、ひどく抑揚のない声を発した。
「気狂いめ、何が望みだ?」
「せっかちですね。折角ひとが、気持ち良く話してるのです。黙って聞いたらどうですか?」
高い窓の下では、男たちが悲鳴をあげていた。
最後まで抵抗を続けた兵士を晒し者にして、中庭では傭兵達の宴会が始まっていた。首に手斧を生やした兵士は、的当ての的として息絶えていた。
「ご覧なさい。本当なら私は、彼らに殺されていたのです。でも運が良かった、彼等を部下にする事ができた。
この幸運が主のご意志でなければ、いったい私は何者だというのでしょうか?」
見下ろす姿に気付いた傭兵は、ちぎれた兵士の腕を振って呼びかける。
「聖女様!こっちきて下さいよ!宴会がはじまってますぜ!」
「こいつらに殴り合いさせようぜ、生き残りは男娼にしてやる…」
「待てよ、普通じゃつまんねえ。仲間の手足でやらせよう」
老貴族の震えた手に、そっと聖女は手を重ねた。息のかかる耳元で、何事かを小さく囁く。
目を見開いた老貴族は、何度か口を閉口させていたが、次第に落ち着きを取り戻した。そして一度深く息を吸い込むと、本来あったであろう貴顕ある顔を、苦悶に歪めながらいった。
「……ここにいる大男を、正当な、儂の孫とする」
「はい、結構です」




