第9話
大男が目を光らせ、静寂が辺りを包む。軽く息を吸い込んだ。周囲を見渡す。
「…あなた達は、獣です。命は奪ってしまえば、人は主に与えられた使命を、果たす事ができないのです」
「…臭?なんの話だ?」
「分かんねえけど懐かしいな、尼さんヤッたとき思い出すわ」
「十字架見ただけでイクように躾けてやったな!」
「ジーザスハレルヤハッピータン!HAHAHA!」
馬鹿話で馬鹿笑いする馬鹿達を、大男が地面に這いつくばらせた。
「…あなた達にも、主は使命を与えられているのです。でなければ虫けらのように死んでもらいます」
「結局力尽くじゃねえか…」
「さっきまでの下り無視してんな」
「おい聞こえてますよ。…ですがそうです。少なくとも私の暴力が、あなた達を上回っただけです。
暴力を糧にするあなた達が、小娘と大男相手にいいようにされているのです。どうです?悔しくはないのですか?」
「悔しいも糞もなあ…」
「まともに下調べもできねえ団長と、副官の馬鹿が悪いだろ」
「まぁ不甲斐ないとこもあるけどよ、こうなったらどうしようもねぇわ」
愚民達が、責任転嫁を始めた。すぐに追い討ちをかける。
「理解が早いですね。ならもうあなた達はもう負ける事はありません。私の下で、勝利を掴むのです。
祖国に栄光をもたらす使命を、果たそうではありませんか!」
「いや流石にそれは…」
「未貫通の処女サマが上官とか笑える」
「つうか上っ面ばっかでよ、なに言いてえのか全然わからんわ」
鼓動が少し跳ねた。流石にそこまで馬鹿じゃないか。
今度は欲望に訴えかける。雑魚の縄を引いた。
「馬鹿野郎てめえら!聖女様をそこらのションベン臭えガキと一緒にすんじゃねえ!
聖女様はな、すべてを許されるんだ!たとえ神様が許さなくてもなぁ!」
「あぁ?雑魚てめえ、なにそっち側みてえなツラしてんだ?」
「どうせすげえプレイで懐柔されたんだろ、前もあったぞ。助平な糞野郎め!恥を知れ、恥を!」
「そりゃ俺ら全員一緒だろ…」
「ああそうだ!馬鹿の頭を使った!主はお許しにならねぇプレイだ!けど聖女様はすべて許されるんでぇ!」
おいやめろ、そうじゃない。縄を強く引く。
「おい今の見たか!おれの性癖を見抜いた高度なプレイを!
聖女さまがおれらのシモまで管理される!まさに痴情の代行者じゃあ!」
「…どうする?」「もういいんじゃね?全部投げて」「面倒な統率とかしたくねぇしなぁ…」
愚民達が口を揃えた。
「あっ、じゃあそれでいいです…」
ちがう、そうじゃない。もっとこう、知略を尽くした、なんかこう…
大男が深く頷きながら、甲高い声を上げた。
「よかったね、ママ!」




