第8話
大丈夫だ、私は上手くやれる。
煤けた金髪を熱風に靡かせて、少女は肚の内で静かに嗤った。流れは私にある。
後ろ手に縛られた雑魚の縄を、強く引いてやる。その合図で、雑魚は金切り声で叫び始めた。
「てめえらよく聞けぇ!このお方をどなたと思ってんだ!」
よぉし、遠くまでよく響く。耳障りな声だ。注目は私に集まった。更に続けさせる。
「このお方はなぁ、この世を正す使命ぇを主からお受けになった、聖女さまだぞぉ!」
聖女?そう、聖女だ。何度聞いても笑ってしまう。これは私の、優れた容姿に対する評価だ。少し考えればすぐに分かる。貧相な少女でしかない私への大いなる過ち、過大評価だ。
これは使える。あどけなさとは、正しく用いれば、絶大な凶器になるのだ。
容姿はほんの一部分にすぎない。いつも愚民を狂わせるのは、物事のうわっ面の美しさと、自分たちは正しいと思い込ませることなのだから。
「ツラは良いけど貧相なガキだな…45」
「だからてめぇはダメなんだ、つぼみは散らすのが乙なんだろ…63。
まぁそこで死んでる爺のケツは71だな」
「……」
すぐに大男へ目配せしてうなずくと、軽口を叩いていた2人は、4つの体に分かれた。
最初から大男の、圧倒的な力は見せつけるつもりだった。だがいまのはいけない。反省しよう。子どもは失敗から学ぶのだ。
愚民はその限りではないが。
手に持った縄の震えに気がついて、雑魚の限界を察した。
そろそろ頃合いだろう。愚民達は楽になりたくてたまらないはずだ。あとは欲望の後押しを、ほんの少し手伝うだけだ。




