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再演  作者: らいと


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第51章 決心

更新に時間かかりました。

最初から、修正しましたので、5章ぐらいから見直して貰えればと思います。

浅田は、研究仲間に連絡を取った。


 物理学。


 天文学。


 航空分野。


 これまで研究を続ける中で知り合った人間を、一人ずつ思い浮かべていく。


 中には、何年も連絡を取っていない相手もいた。


 浅田はメールを書きかけ、手を止めた。


 自分の考えが正しいのかは、分からない。


 論理的に説明できない現象が続いている。


 それぞれに別の原因があるのかもしれない。


 単に、まだ説明できていないだけかもしれない。


 それでも、確かめる必要がある。


 浅田は机の上へ目を向けた。


 舞が持ってきた、真司の研究発表会の資料が置かれている。


 真司は、自分の考えが正しいとは言わなかった。


 間違っている可能性も認めた。


 それでも、一人で壇上に立った。


 浅田は資料を見つめた。


「……間宮の息子に、まだ負けてられないな」


 小さく笑った。


 ふと、舞の顔が浮かぶ。


 浅田は少しだけ口元を緩めた。


「……いい相手に出会ったな」


 すぐに、モニターへ目を戻した。


 馬鹿にされるかもしれない。


 考えすぎだと言われるかもしれない。


 そんなことは、後でいい。


 今、確かめなければならない。


 浅田は、これまでに起きた現象の記録を整理し始めた。


 発生日時。


 観測された変化。


 使用された機器。


 現象が消えたあとの状態。


 推測は入れない。


 確認できている事実と、詳細な観測データだけを一つの資料にまとめていく。


 異なる場所で起きた、異なる現象。


 それらを並べても、浅田には説明できない部分が残った。


 だから、自分一人で考えるのはやめた。


 浅田は新しいメールを開いた。


 文章を打つ。


 ――論理的に説明できない現象が続いている。


 ――添付したデータを、あなたの専門分野の目で確かめてほしい。


 少し考え、続きを打った。


 ――既知の現象や理論で説明できるのであれば、それで構わない。


 ――説明できないのであれば、それもそのまま教えてほしい。


 浅田の指が止まった。


 最後に、一文を加える。


 ――人命に関連した結果になる場合もある。できるだけ早く意見を聞きたい。


 浅田は文章を読み返した。


 自分の考えは書かなかった。


 必要なのは、賛同ではない。


 それぞれの専門分野から見た答えだった。


 添付する資料を確認する。


 送信した。


 次の研究者を選ぶ。


 相手の専門に合わせて、送るデータを選び直す。


 また送る。


 さらに次へ。


 何人が返事をくれるかは分からない。


 笑われるかもしれない。


 相手にされないかもしれない。


 そんなことは、後でいい。


 浅田は次の宛先を入力した。


 その夜。


 舞は自宅のパソコンを開いていた。


 画面の隅に、小さな表示が出ている。


 ――コグニティブ・テスト運用終了まで、あと二日。


「……あと二日か」


 舞はしばらく、その文字を眺めていた。


 思っていたより短い。


 コグニティブを起動する。


『こんばんは、浅田舞さん』


「こんばんは」


 舞は椅子に座り直した。


 パソコンには、真司の研究発表会の資料が残っている。


「ねえ、コグニティブ」


『はい』


「真司さんの発表、どうだった?」


『評価する基準を指定してください』


「そうくるか」


 舞は少し笑った。


「研究発表として」


『分かりました』


 少し間があった。


 舞は資料へ目を落とす。


「私は、良かったと思ったんだけど」


『どの点を良いと感じましたか』


「そこ、私に聞く?」


『評価の比較に必要です』


「うーん……」


 舞は少し考えた。


「自分の考えを押しつけなかったところかな」


『並行世界線の存在を結論として提示しなかった点ですか』


「そう」


 舞は頷いた。


「正しいって言いに行ったんじゃなくて、確かめてほしいって言った」


 少し間を置く。


「それと、分からないことを、分からないって言えたところ」


『分かりました』


「で、どう?」


『研究発表として、仮説の実証性には不足があります』


「やっぱり?」


『はい。並行世界線の存在を直接支持する観測結果は提示されていません。また、複数の現象が同一の原因によって発生していることも確認されていません』


「うん」


『そのため、現時点で科学的な結論として扱うことはできません』


「結構厳しいね」


『研究発表として評価しています』


「そうだった」


 舞は少し笑った。


「じゃあ、やっぱり良くなかった?」


『いいえ』


 舞の目が画面へ戻った。


「え?」


『仮説の実証性と、発表の価値は別に評価できます』


 舞は黙って続きを待った。


『間宮真司さんは、自身の仮説を結論として提示していません』


『反証される可能性を認めた上で、異なる専門分野からの検証を求めています』


『その点において、有意義な発表だったと評価できます』


 舞は少しだけ身を乗り出した。


「じゃあ、コグニティブも良かったと思う?」


 返事まで、わずかに間があった。


『有意義だったと評価します』


「そっか」


 舞は小さく笑った。


「よかった」


 もう一度、真司の資料へ目を落とす。


 画面の隅には、まだ小さな文字が残っていた。


 ――テスト運用終了まで、あと二日。

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