ようこそ薊学園へ
2000年、薊学園寮に入寮。
薊学園の生徒は全国から集められている。受験会場には全員自力で来るが合格し寮に入るために合格後に来る通知で何月何日の何時に北海道の何々駅に集まって下さいと伝えられる。
飛行機や新幹線、船でやって来る生徒もいるらしくそう言った生徒は前日に宿泊してやって来るらしい。一応同じ道内に住む自分には北海道外からたくさんの同級生が来ると言う事に馴染めるか不安とその全国からやって来た同級生には自分が同性愛者だと隠す必要が無いのだと期待と喜びもあった。
「……」
「あと一人…大丈夫かな」
指定された時間に指定された駅に行くとそこには自分と同じく大きな荷物を抱えた集団がいた。見たところ二十、三十人ぐらいだろうか。男女比は男子の方が多く見える。その集団に向かって歩いているとスーツを着て何か書類を持った三十代ぐらいの男性がこちらに気付いて声をかけた。
「おはよう」
「おはよう、ございます」
「薊学園の生徒?」
「はい」
「名前は?」
「近藤です。近藤和彦」
「…近藤…近藤」
手に持った書類で確認している。そして自分の名前を見つけたのかこちらに向かって頷き笑う。
「確認出来たよ。近藤和彦君。俺は君達新一年生の担任の新島宗一郎です」
担任の先生だったか。
「えと、よろしくお願いします」
「うん……近藤君」
「はい?」
「前髪何か赤くない?」
「あ」
姉に舐められないように気合いを入れろと言われるがままにされた赤メッシュ。新島先生の顔を見る限りやはりこれは校則違反のようだ。どうしよう。
「…すいません。姉に無理やり」
「入学式始まるまで一週間あるからそれまで直してな」
「はい…」
黒いままの前髪で赤メッシュで隠しながら他の生徒と同じ様に出発の時間まで待つ事になった。
全員知らない人間だからか会話は無い。軽く周囲を見ると携帯を操作している自分と同じぐらいの背丈の男子。昼間の光が当たり髪が茶髪に見える。その向こうで同じく携帯を操作している肩に付くぐらいの髪を揺らす女子、携帯よりもストラップの数が凄い。何であんなぬいぐるみみたいなのをぶら下げているんだ。その近くに立つすごく姿勢の良い…女子?あ、胸が膨らんでる。宝塚みたいなショートヘアーの女子がいる。その近くで本を携帯を操作せずに本を読んでいる何だか険しい顔の男子。
そうして人間観察をしている自分の後ろに黒髪の目の大きい男子。何だか都会の匂いがする。
「…?」
そこでふと、自分の真っ黒な髪と比べ物にならないぐらいに明るい茶髪の男子がいる事に気付く。
(染めてんのか?)
そう思ってつい見てしまうと根本が黒くない。髪も傷んでなさそうだ。
(あれ地毛か?)
あんな天然の茶髪があるんだなと感心していると視線に気付いた茶髪の男子がこちらを振り向く。男子にしては少し長い髪、つり目で見た目で判断するのは経験もあるし良くはないが気が強そうに見えた。
慌てて目を逸らしたがおかしな風に思われなかっただろうか。
「…遅いな」
一人慌てていると新島先生がそう呟く。
腕時計を見ているためそれに倣うように買って貰ったばかりの携帯電話を取り出すと確かに指定された時間を少し過ぎている。
「ごめんな。あと一人来る予定なんだけど…来ないから少し待っててくれるか?」
いきなり遅刻かと見知らぬ全員と恐らく同じ気持ちになっていると何やらこちら向かって慌ただしく走ってくる男子がいる。
黒髪を女子のように前髪をヘアピンで留めて手を振りながら走って来る。
「すいません!すいません!」
「薊学園の生徒かー?」
走って来る男子に新島先生が尋ねる。そうすると頷き走りながら彼は自己紹介をした。
「安道です!安道忍です!寝坊してその!すいません!」
「慌てるなー危ないから歩いて来い」
新島先生がそう言った瞬間、最後の一人の安道は盛大に転けて手にしていたペットボトルの炭酸を転がした。
「…だから歩いて来いって」
呆れたように言って新島先生は転んだ彼を迎えに行った。彼の手から転げ落ちたペットボトルはどうしたのか、それはあの茶髪の男子の足元に転がって行き当然のように彼はそれを拾い新島先生に謝る安道の元に近寄ると無言でペットボトルを差し出していた。
「あ!ありがとう!」
「…別に」
そして何とも素っ気なく返していた。
「じゃあこれで全員だな。これからバスに乗って寮に向かうから!トイレ行きたい奴は今の内に済ませておけよ」
到着するまで三時間近くかかるらしい。途中でトイレ休憩もするがそれでも一時間以上はバスの中だと言われ誰も動かない中一応トイレに行っておくかと思い動くとその後を続くように何人か着いてきた。
「…隣、いい?」
「ん。どうぞ」
バスに乗るとさてどこかに座るかと知らない誰かと相席になるわけで女子は女子で座っているし誰の隣に座るかと見ているとあの目の大きい男子がいたため声をかけると笑って相席を許してくれた。
全員座ったのを確認して最後に新島先生が乗ると運転手に声をかけてバスが動くと先生が振り返る。
「気分悪くなったら言えよー」
そうして寮へ向かうバスは走り出す。
「名前は?」
「俺の名前?近藤和彦」
「そう。俺は和田月人」
「ツグト?」
「月の人って書いてツグトって読むんだ」
「変わった名前だな…?」
「でしょう」
都会っぽい雰囲気の子は名前まで洒落てるんだな。
「そっちは?」
「…え?」
和田が今度は向こう側の席の男子に話しかける。携帯を操作していた男子とあの茶髪の男子だ。
「…東、東弘忠」
「へえ。君は?」
「須田亜季」
携帯を操作していたのは東弘忠。
茶髪の方は須田亜季。
須田は名前だけ名乗りすぐに窓の方を向いた。
「近藤君はどこ出身?」
「え?道内だけど」
「あぁやっぱりか」
「やっぱり?」
出身を聞かれて答えると東がこちらを見てそう言った。
「訛りがある」
「え?そりゃそうだろ」
「いいな、方言」
和田に方言が羨ましいと言われてそりゃ田舎者を微笑ましく思っているのか?それとも別の意味かと構えてしまう。
「方言がいいのか?」
「俺は東京出身なんだけど」
「だろうな」
「だろうな?」
「都会っぽい見た目してる」
「え?そう?」
「…あんたもだろ」
「…まあ東京出身だな」
「そうなの?東京のどこ?」
「文京区」
「へぇ、俺世田谷」
「うわ…都会の会話だ」
「何だよ都会の会話って」
地方出身にしか分からないんだよ。都会の人間は生まれが都会ってだけで洗練されて見えるんだ。心なしか会話もお洒落に聞こえる。住む世界が違う人間に見えるよとひねくれると和田が笑う
「ただ都会に生まれただけだって、それに俺…こう言う地方に住むの初めてだし楽しみだな」
「何もねぇぞ?」
「北海道じゃん?バスの中からもう分かる雄大な自然?」
「…自然しか、無いんだよ」
「十分だよ十分」
明るい奴だな。
都会に住んでた奴がこれから大自然によってどんな生活がもたらされるか楽しみだ。
そんな地方出身の高みの見物をしているといつまでも窓の外を眺める須田が気にかかる。
「…須田?」
こう呼んでいいのだろう。
「須田君?」
君付けで呼んでみたが無反応だ。聞こえていないのだろうか。
「す、」
「えと、近藤?」
「え?」
もう一度呼ぼうとしたが東に止められる。何故かと思うと須田は両耳にイヤフォンをつけていて外部からの音を遮断していた。
最新のウォークマンを使って音楽を聞いているそれは「あ、こいつも都会の人間か」と思わせた。
三時間近くのバス旅は始めこそは会話がいくつか生まれたが流石に移動時間の長さに疲れ始めた頃。ようやく新島先生からそろそろ着くと声がかけられて疲れから眠っていた者も目を覚ます。
「…和田?」
「ん?」
「ずっと起きてたのか?」
途中で自分も東も寝ていた。何なら後方の席からいびきが聞こえていたのに和田はずっと起きていたらしい。
「だって窓の外が森とか海とか珍しくて」
「普段何見てんだ?」
「俺の家からだとビルとかマンションとか建物しか見えないな」
「信じられねえ」
と言うかそんな起きているほど珍しいのか。道内から出たことが無い自分は東京は端から端までビルやマンションが立ち並んでいるのを想像した。
そんな東京の景色とはきっと正反対。自然豊かな場所にあるあれがどうやら三年間暮らす寮らしい。バスが着くと中から人が出てくる。スーツを着た若い女性だ。
「はい。降りて」
荷物持ってまだ中には入らないでと説明されバスの荷物置きの中に入れていた自分のグレーの旅行鞄を手に取り待っていると新島先生が全員降りて荷物を持ったのを確認し寮から出てきた女性に声をかけてから荷物を持った自分達と向き合う。
「はい。長旅お疲れ様でした」
寮に入る前にいくつか説明がされた。
「寮の玄関には下駄箱があるから履いてる靴はそこに入れておくように。中は土足厳禁だからスリッパなり中で履ける物を用意しておくように事前に言ってあるけど…寮で履く内履き、スリッパを忘れた奴は手を上げて」
これは手荷物の中にある。学校で履くようの内履きと寮で履く用の靴を用意してあるから大丈夫だと安心していると、新島先生の視線が動く。
「……忘れたか?」
「すいません!」
この声は遅刻してきた安道と言う男子ではないだろうか。
「来客用のスリッパがあるからそれ使え。入学式が始まるまでに家に連絡して送ってもらうか外出届け出して買いに行くようにな」
「はい!」
「他はいない?」
あとは誰も手を上げていないようだ。
「…よし。そしたら中に入るぞ。下駄箱は名前が貼ってあるからそこを使うようにあいうえお順に並んでるからな」
重く大きい荷物を抱えているために歩みは遅く自分の名前がどこにあるか探しながら靴を履き替えるためそれなりに全員が中に入るまで時間がかかった。
「…ん?」
そこで重い旅行鞄を抱え直すとあの茶髪の、須田の鞄と自分の鞄が同じ物だと気付いた。
「……」
これ、本当に俺の鞄だよな?
まさか同じ物を持っている人がいるとは思わず目印も何も付けていないので少し不安になった。
「はい、こっちに集合」
中に入ると入って右側に階段、左側に“談話室”とプレートが掲げられた部屋が二つ。そして新島先生に案内された食堂だ。
調理している様子がよく見える台所に、大きなテーブルが三つ。上を見ると大きめのテレビがあった。
「テーブルが三つあるんだけど、テレビに近い方から三年生の席、二年生の席、テレビに一番遠くて入り口から近い席が君達一年生の席。荷物は一旦端に置いて好きな席に座ってほしい」
寮生活の説明と、入学式までの過ごし方を説明すると言ってまた重い荷物を言われた通りに食堂の端に置くと一年生のテーブルと言われたそこに適当に座る。隣にはバスでも隣になった和田と反対には宝塚みたいな女子が座った。
「それじゃあこれからの説明をする、前に」
新島先生の隣にいたスーツの女性が一歩前に出て頭を下げる。
「一年生の副担任、前園佳之子です。よろしくお願いします」
この人は副担任だったのか。長い髪を後ろでまとめて優しげな顔をしている。
「……」
(俺達はホモとかこの女子もレズとかなんだろうけど…先生はどうなんだ)
「はい。それじゃまずは荷物を部屋に持っていって部屋の整理をするように。大きな荷物は二年生の先輩が部屋にもう運んでくれてるから」
荷物が入った段ボールは空にして下に持ってくるように。
今から一時間部屋の整理の時間を取るから一時間後にまた食堂に集合。その後に寮での決まりごとやご飯の時間なんかを説明すると言われる。
「部屋は女子は二階、男子は五階だ。一人一人名前を呼んで部屋の鍵を渡すから。鍵に部屋番号が書いてあるから確認するように」
「鍵は無くしてしまうと作り直す事になるのでしっかり保管しておくようにして下さい。万が一作り直すとお金が必要になります」
新島先生も前園先生が部屋と鍵について交互に話す。男子は五階、そんな遠いのか。
「部屋は三年間固定だから変えて欲しい場合はちゃんと相応の理由を述べるように。それと男子」
性別で呼ばれて男子が反応する。
「部屋まで基本階段で行くように。女子専用の階段と男子専用の階段があるから案内があるけど間違えないように。ちなみに今日は重い荷物があるから階段横にあるエレベーターを使うのは許可するけど、明日以降は駄目だからな」
「げ」
「え」
「マジかよ」
この決まりに思わず声を上げた。自分と東と遅刻してきた安道。
「若いし男なら平気だろ」
「それじゃあ部屋の鍵渡すからね」
東弘忠さんと、あいうえお順で呼ばれているらしくまずは男子のあいうえお順だ。
「近藤和彦さん」
「はい」
渡された鍵は予備も含めてか二つ付いている。部屋の番号は鍵に付いているプラスチックの平たいキーホルダーに505号室と刻まれている。
男子が呼び終わり次に女子が呼ばれて全員に鍵が渡り終わると部屋の整理のために三年間暮らす部屋へと向かう事になる。
「それじゃあ一時間後に…あ、大塚さん」
新島先生が気付いたように顔を上げてそれに全員つられるとバスの運転手をしていた男性が立っていた。改めて見ると俳優みたいに整った顔立ちで年齢は新島先生と同じぐらいだろうか。
「あー、皆。この人は大塚さん。この寮の管理人で学園の用務員で事務もしている頼れる人」
「こんにちは初めまして大塚時也です」
少し口角を上げて挨拶をしてくれた。先生とかではないらしいが新島先生曰く、頼れる人らしい。
「どうしたんです?」
「いや、部屋の整理の時に出るゴミなんだけど…段ボールは潰して玄関にまとめておいてほしいんだ。それと部屋なんだけど電気がちゃんと付くか確認してほしい。もし電球が切れてる場合は」
「大塚さんに言うように」
「そう言う事だ」
それじゃあ改めて部屋の整理開始。
てか五階って何だよ。
エレベーター使っちゃ駄目とか意味分からん。
女子ずるいよ。二階なんてすぐじゃん。
ちくしょう。明日から足が鍛えられるな。
部屋に行く前に女子との違いに男子の心が一つになった気がする。今日しか使えないエレベーターに押し込まれながらそう思った。
五階に着くと一直線に並んだ扉に部屋番号が刻まれたプレートが付いており、部屋の向かい側にはトイレと水道、シャワールームと書いてある扉と奥の方に洗濯機が置かれた部屋があった。
「えっと…505号…あった」
自分の部屋を見つけて鍵を差し込み中へと入ると実家の部屋よりは狭いが必要な物が揃っていた。
ベッドに机に椅子。クローゼットもあれば空になっている棚もある。更に棚の上にはラジカセがありまさか用意してくれているとは思ってもいなかった。
「よし…」
二年生が運んでくれたと言う実家から送った大きな荷物を開けたがこれは必要なかったかもしれない。
ベッドの上には布団と毛布、十分な寝具があるが母が寒いといけないからと段ボールに毛布を詰めて送っていたのだ。多分この寮の毛布の方が温かい気がする。毛布はとりあえず段ボールのままにクローゼットに仕舞い、大きな旅行鞄の中身を開けて服や制服、教科書を仕舞おうとしたがここで気付く。
「…あ」
これ、違う。
自分な荷物じゃない。
着慣れた私服ではなく何だか違う家の匂いがする綺麗な服。
(間違えたんだ!)
同じグレーの旅行鞄だから取り違えたんだ。これなら気付いた時に声をかけていれば良かったと慌てて鞄を閉じて部屋から出ると同時に同じグレーの旅行鞄を持って焦って出てきた茶髪の、須田と目が合った。
「…須田!君…」
「え、えっと…」
「近藤、近藤和彦」
「あぁ…近藤…君?」
「あ、いや…呼び捨てでいいや」
「そう…それ」
「そうこれ」
お互いグレーの旅行鞄を差し出して取り違えたんだと謝った。
「ごめんな。俺気付いてたんだ」
「は?鞄違うのに?」
「違う違う!同じ鞄なのは見えてたから…本当にこれが自分のか開ける前に確認すれば良かった」
「…つっても…お互い何も目印に付けてるの無いしな…」
「…じゃあ仕方ないって事で」
「まあ、お互い様だな」
「……」
「……」
「えと、これから三年間よろしく」
知り合いも何もいないし仲良くなれるだろうかと思い友好の握手をしようと手を出す。
「……」
手を出す。
「……」
握手が交わされない。
「…何かごめん」
いきなり距離を詰めすぎただろうかと手を下ろして反省すると、ふっと吹き出す声が聞こえて顔を上げると須田はすぐに口を手で押さえて自分の鞄を持って部屋に戻った。
「……何で?」
そうして俺は一人残された。
朝食の時間はこの時間。先生が起こしたりしないから自力で起きて向かうように。
昼は弁当が届けられるからそれを食べて午後の授業に向かうように。
夕飯はこの時間、部活動によってはこの時間に間に合わない人もいるからそれは寮に戻ったら各々食べるように。
部屋に行く時にシャワールームがあったと思うが各階シャワールームは三つしかない。使う時は使用中の札をしっかりかけるように。
シャワールームもあるが一階に大浴場があるから基本はそこを使って大浴場が苦手な奴はシャワールームとするように。大浴場はシャンプーとかボディーソープがあるけどシャワールームは無いからな。
洗濯もここでの生活の間は自分でやるように。部屋の掃除もだ。
「ご飯の時間と入浴時間以外は自由にしていい。食堂の入り口の側に自販機があったと思うけどそれも好きに使うように」
新島先生と前園先生が交互に説明する。
「自販機でお金使いたくない時は食堂にお茶があるからそれは自由にどうぞ。でも使ったコップは自分で洗って戻すようにね」
「寮から出て町に遊びに行く時は何時に戻るか外出届を出すようにな」
「遊びに行くのはいいけど夕飯の時間には戻るように」
以上、何か質問はあるか。
寮での生活の説明を受けて頷いているが、横目で須田を見てしまった。
(何だあいつ)
バスでもたいした会話も無く素っ気ない。愛想が無いと思っていたが鞄を間違えて慌てる様子や自分の空回りの握手に笑ったように思ったが最初の印象とは違う人間なのだろうか。
「あの、談話室って二部屋ありましたけどどっち使えばいいんです?」
そう思っていると東が談話室の使用について質問する。
「あ?談話室?…そうか…」
新島先生が前園先生に目配せすると前園先生が説明をしてくれる。
「どの学年が使うか決まってないんだけど…奥にある一番大きなテレビの談話室が三年生専用、手前の談話室が二年生専用みたいになっててね」
「え?じゃあ俺達一年生は?」
「ここ、ご飯の時間以外は使われないからテレビ見たい時は一年生はここ使ってくれ」
ええ…首痛くならないか。
若干の不安と不満を抱え始めるとあっという間に時間が過ぎているらしく玄関の方から複数の足音と声が聞こえる。
「あ、二年と三年帰って来たな」
新島先生が玄関へと向かい「おかえり」と呼び掛けると複数の明るい「ただいま」が返ってくる。そしてそのままその明るい声の持ち主達は食堂に来て自分達、一年生を笑いながら見学しにきた。
(ん?わ、金髪?)
二年か三年か分からないが女子の先輩で顔の横ぐらいまでの長さの髪にパーマをかけた金髪の先輩がいる。スカートめちゃくちゃ短い。
(外人もいる??)
先輩の中で頭一つ飛び出ているどこの国だろうか、白人の先輩もいた。全国から呼んでいると聞いたが海外からも呼ぶのか。つい先輩達の観察をしているとこちらを笑いながら見ている先輩達が何やら鞄から取り出して誰か、女子の声がかかるとパンッと破裂する音とカラフルの紙が舞う。
クラッカーを鳴らしたらしい。
「ようこそ!新一年生!ここは皆!ホモとレズの集まりだよ!」
中央にいた制服のブレザーの下にパーカーを着た男子の先輩が何とも明るい声でそう言った。
「…えぇ」
その歓迎にどう反応していいか慌てていると周りはどうか。
東は口を開けて驚いていた。
和田は控えめに笑っていた。
宝塚の女子は口角を綺麗に上げていた。
安道は小さく「おぉ…」と呟いていた。
須田は無表情だった。
「…お前ら!散らかすな!」
先輩方は新島先生に怒られていた。
こうして戸惑いっぱなしになりながら薊学園の生徒としての三年間が始まった。
薊学園寮。
一階に食堂、談話室二部屋、大浴場がある。自動販売機があるのは一階のみ。飲み物とお菓子の自動販売機があり。
二階から四階が女子寮
五階から七階が男子寮
エスカレーターは基本的に特別な理由が無いと使えない謎の寮のルールがある。
階段で自分の部屋に向かうが女子専用の階段と男子専用階段に分かれている。




