安息の場所にて
1998年から学校は週に五日になり土曜日もお休みになりました。
薊学園に来てから慌ただしい日々が過ぎて初めての大型連休からの実家への帰省。家に帰る生徒とそのまま寮に残る生徒の半々である。実家へ電話をして大型連休に帰る事を伝えると最寄りの駅まで迎えに来てくれると行ってくれた。友達の卓也と廉にも連絡して久し振りに会って遊べるようだ。夕飯が終わってテレビの音が響く食堂では大型連休をどうするかの話ばかりだ。
「帰るんだ」
自分も明日は家に帰るんだと話すと亜季は一瞬だけこちらを見て頷いた。
「ゴールデンウィークの最終日には帰って来るから」
「ふーん。楽しんでな」
亜季と忍、月人は寮に残るらしい。遼一は帰省するらしく明日入寮初日の待ち合わせの駅まで大塚さんが送るそうだ。
「いやー、土曜日も休みになって連休が長くていいな」
「そうそうゆとり教育万歳」
帰省する遼一と話しながら二年前から始まった土曜日も休みのゆとり教育に感謝をする。
「遼一は埼玉県だっけ?」
「そう。埼玉」
「どうやって行くんだ?」
「駅に着いたら空港まで行って…東京行きの飛行機に乗るんだ」
「んじゃ明日、移動移動じゃん」
「そうなんだよ。ずっと乗り物に乗りっぱなしだから暇潰しなんか持っていかないと」
道内の自分よりも大変な移動になるんだ。関東から来ている生徒は来るだけで行くだけで一日休みが潰れてしまうのは可哀想なものだ。
「和彦は道内だっけ?」
「そう。道内」
「いいな近くて」
「近、くはないがな」
「だって道内だろ?」
「北海道の広さを甘く見るなよ」
「そんなか…?」
「そんなだよ」
でっかいどうって言うだろう。
「認識を新ためないとな…そうだ。帰って来る時にお土産買ってくるよ」
遼一が思い付いたように話すがそれを聞いていた全員が首を傾げる。
「埼玉って何が有名なの?」
「クレヨンの五歳じゃね?」
「埼玉…埼玉って何だ?」
埼玉県以外の自分を含めた彼等が首を傾げる。東京ならバナナのあれや神奈川なら中華街があるから中華なお土産があるだろうと思い付くが遼一の生まれ故郷の埼玉県は何だと本気で分からないでいると「ちゃんとあるからな!」と遼一が声を上げた。
「え?何があるの?」
月人が本気で分からない顔をして聞いている。
「…まんじゅうとか煎餅とか」
「ちゃんとお土産あるんだからな!お茶も有名なところがあるし!」
「確かに春日部の五歳の子どもが真っ先に出るけどよ!」
遼一と忍がそう言って抗議する。そうだった忍も埼玉県の人間だったと思い出した。仲間意識が生まれて二人は帰って来た時のお土産をあれこれと考えている。
「亜季は帰らないんだな」
「まあ、帰ってもな」
「俺も帰らないし!そしたら遊びに行こうぜ!カラオケに買い物に…」
「皆で行くなら」
「皆!?」
「俺も行くわ」
「弘忠!」
「じゃあ俺も」
「月人まで!?」
予想はしていたが忍のお誘いが来た亜季は少しではあるがその勢いに慣れて来たらしく最近はあしらうことを覚えていた。初めの頃は苦笑いか引いていたのに良い事だ。
周りを自分なりに避けていたのにこうして亜季の周りに人がいる事に安堵する。
「何?にやにやと」
「…いやぁ、良かったなぁと…」
「意味が分からない」
「へへへ…なあ亜季、俺も何かお土産買って来ようか?」
「蟹」
「鮪」
「鯛」
「お前らには聞いてないんだけど?」
「伊勢海老」
話を聞いていたのか響子。
「道内で取れるのにしろや」
箱のお菓子とかそう言うのを聞いている訳でどうやって海産物をここに届けるんだ。仮に持って来れる事が出来たとしてもどうするんだ。
「刺身」
「ボイル」
「舟盛り」
「やれんのか?出来んのか?」
「任せなよ。出来るよ」
出来るのか響子。隣の由美が驚いているぞ。
「出来るんだよ。大塚さんがね」
「あの人何でも出来るな」
と言うか何で知っているのかと尋ねると夏休みに入る前にバーベキューをするらしいが大塚さんが魚を捌いたり手際よくしてくれるらしい。
本当に何でも出来るな。
学校に行けば校内の点検や花壇の世話をしていたり、かと思えば職員室に行くと電話を取って事務仕事をしていたり寮に帰れば部屋のトラブルに対応していたりと常に動いていて働いている。大塚さんに何か言えば大体の事は解決するような雰囲気まであるのだ。
「バスの運転もしてるしな」
「本当に、何なんだあの人」
「欠点ないのか?」
「うーん…あ、たばこ臭い」
「大人は吸うもんだろ」
先生専用の喫煙所は職員室の前にあり職員室に用事のある先生がいなければ大抵そこだと知った。新島先生に頼まれて授業で集めたノートを職員室に届けに行くとおらず、職員室の向かいの部屋から煙草の匂いを纏った新島先生が出てきた後ろで大塚さんが吸っていたのを知っている。
「でも吸うの憧れない?」
「あー……まあ、うん」
「ちょっとな」
「買おうと思えば帰るけど停学になるし」
「でも絶対吸ってる先輩いるよな」
自販機の飲み物と同じくお金を入れれば煙草なんて自販機で買えるのだから。買えるが勿論校則違反、見つかったら停学処分。
で、あるにも関わらず隠れて吸っている生徒は恐らくいるであろう。
「…仮にお前らが吸ったら学級委員長の俺が何か言われるのか…?」
煙草に興味を持つ同級生の会話に一人不安な顔をして呟く弘忠。さすがは責任感の強い学級委員長、このクラスの未来をきちんと考えている。
「大丈夫だよ委員長」
「安心しなよ委員長」
「何かあったら責任取ってくれ委員長」
「バレないようにするから委員長」
「待て。忍と遼一…お前らもしかして」
「吸ってない。吸ってない」
まだ、吸ってないよと責任感の強い学級委員長に不安を煽っていた。
「それじゃ駅に向かうから!帰省する奴は乗れー!
」
大型連休初日、バスが用意されており一台では乗りきれないので二台用意されている。先頭を走るバスは大塚さんが運転するようだ。
どちらのバスに乗るかは決まっていないので皆、よく知っている大塚さんのバスに乗り込み余った生徒は大型バスの運転のプロが走らせる方に乗り込む。寮に残る生徒は見送りに来ている生徒と部屋で寝ている生徒半々。
亜季はわざわざ起きて見送りに来ていた。
「んじゃ行ってくるわ」
「気をつけて」
「そっちものんびり過ごしな。面白い事があったらメールするわ」
「はいはい」
軽く手を振ってバスに乗り込み出発する。隣に遼一が座りバスを降りた後の事を何度と確認していた。
ここの寮に来た時と同じ道を反対方向に進みながら懐かしい、と言っても約一ヶ月前に来た駅に降り立つとここからは各々自分達の家に帰るために動き出す。
「それじゃあな和彦」
「おう。お土産よろしく」
「そっちもな、蟹よろしくたらば蟹で」
「だから無理だって」
笑いながら別れて実家の最寄りの駅まで乗り継いでいく。時刻表を確認しながら分からない時は駅員に尋ねる。高校生になると自然と電車の乗り方も分かるものだと思っていたがそうもいかないらしい。
まさか歩いて通うにようになるとは思っていなかった。
「和彦」
「…お、迎えありがとう」
「おかえりおかえり。さ、帰ろう」
最寄り駅にようやく着くと母が出迎えてくれた。車で迎えに来てくれていてすぐに車に乗り込むと一ヶ月少しでまあ変わる訳がないが何の変化も無い地元を走る車の窓から眺めていた。
「どう?寮生活」
「何とかやってる」
「洗濯とか自分でやるんでしょ?出来てる?」
「平気。洗濯機の使い方も教えてもらったし」
「ご飯はどう?食べてる?」
「三食食べてる。おやつも出るんだよ」
「あらそうなの?」
自分の見えない所で暮らす息子の生活に不自由が無いかと母は細かく聞いてきた。
朝はお母さんが起こす事が無くなったから寝坊する事はないか?
休みの日は何をしているのか。
お友達と遅くまで騒ぐような事はないか。
「大丈夫だよ。何やかんや出来てるから」
「お友達は出来た?」
「出来たよ。都会の奴」
「都会?」
「東京からとか神奈川からとか来てるのがいてさ、驚いた」
「そんな都会の子と仲良く出来てるの?」
「出来てるよ」
友達だと思っている。
家に着くと姉が出迎え、居間に行くと父が顔を上げて「帰ったかと」と一言だけだった。
初めての帰省だからか、母は自分の好物ばかり用意してくれて寮の栄養バランスが考えられた食事も美味しいがやはり生まれた頃から食べている母の料理が落ち着くらしい。
「おかえりー!」
「ただいまー!」
「おかえり」
「ただいまー!」
そうして帰省の楽しみ、地元の友達との再会だ。
卓也は髪を染めていて明るく茶髪になっていたが廉は特に中学の頃から変わってはいなかった。再会を大袈裟に楽しみ外国人のように抱き締め合うと早速近況報告となる。
「どうよ?寮生活」
「スケジュール管理されて大変じゃないか?」
「だから割と自由なんだって、飯と風呂の時間が決まってるだけ」
「テレビとかは?何時から何時までしか見ちゃ駄目とかあんの?」
「無い無い、でも皆で見てるテレビは夜の十一時まででそれ以降は見れない」
「え、夜更かし出来ないじゃん?」
「でも十一時になったら寝ろって訳じゃないから…個人部屋だけどさ、部屋にテレビある奴もいて夜遅い時間に見たい時とからそいつに頼む」
「優しいな」
「いや断れるけど」
委員長。見たいテレビがあるからお邪魔していい?
寝ろ!来んな!
「そんな感じでさ」
「いやそうだろ」
他にも全国から来ているから方言など喋り方が個々によって違う部分があると話す。自分達が標準語だと思っていた言葉が関東の首都圏で生まれ育った同級生には通じないと話すと驚いていた。
「でもちゃんと楽しんでるな」
「まあな」
「良かった良かった」
「そっちは?卓也はどう?」
「俺は辞めたよ」
「ん?」
「高校辞めた」
「え!?」
「だからこいつ今働いてるんだよ」
結構最近辞めたらしく、理由を聞くと分かってはいたが治安がよろしくない進学先の高校の様子に嫌気が差してそれなら社会人としていち早く働いた方が良いのではと結論付けて辞めたらしい。
「親は何て?」
「入学金払って制服とかも買ったから無駄になったて怒られた。でも納得してたわ」
「行きたくないなら仕方ない…だっけ?」
治安がよろしくない高校だとは分かっていたがそこまで我慢して通う必要もない。自分にかかるお金は自分で稼ぐようにと今は父親の知り合いの紹介してもらった仕事をしているらしい。ガテン系だと。
「俺はこっちの方が合ってるわ」
「そうか…驚いたけど、納得も出来るな」
「俺も初めは驚いたけど辞めた後の方が楽しそうにしてるしな」
廉はそう言って頷く。
地元にいる二人は何もない限りは毎週会っているらしい。廉は地元の進学校に進んだが高校生活はどうかと尋ねるとつまらないの一言だった。
「皆先先の大学の事まで考えて、つまらない」
「進学校だもんな」
「塾に通って勉強三昧…中学の時は楽しかったな」
「中学の時か…」
「学校に行けば卓也と和彦がいて、休み時間に馬鹿な話して…体育館で人間ピラミッドに挑戦して」
「三人でな」
「そんで怪我して怒られた」
高校でも話すような同級生や友達になった者はいるらしいが中学の頃と比べてしまいどうしもつまらないらしい。
「…俺こっち残ってた方が良かったかな」
二人の話を聞いてついそう言ってしまう。
「まあ前はそう思ってたよ」
「廉…」
「でも、お前はえーっと…薊学園だっけ?、そこに行って正解の顔をしてる」
「そうか?」
自分では分からないと思っているが卓也と廉にはそう見えるらしい。
「顔が明るい」
「そう、なのか?そう見えるか?」
「俺達にも同性愛の事隠してた時も笑ってたけどどこか無理してた笑いだからな」
「今はそれが無いんだろ?だから明るいんじゃねぇの?」
友達としてここから離れるのはどうも寂しいと思っていたが、友達として帰って来た自分の表情を見てこれが正しかったのだと思わせてくれたと言う。
廉はそう恥ずかしげもなく伝えてくれる。
「…そ、そうか」
「ところで」
「ん?」
「彼氏は出来たか?」
「出来てねぇよ」
「同級生どれぐらいいるんだ?」
「三十人ちょい」
「全国から集めてるにして…少ない?多い?」
「いや…先生とか先輩が言ってたけど断る奴もいるからそう言う人も集まるともっと多いと思うんだと」
「やっぱりいるんだな。俺達が気付かないだけで」
「隠してる奴もたくさんいるんだろ。あの時の和彦みたいに」
「そうだよな…」
同級生は今でこそ皆明るく見えるが、自分達の知らない過去がある。ただそれをこじ開けて知ろうとはせずに今はただ同級生として距離を縮める事が出来ればいい。
もしそうして距離を縮め相互が信頼の置ける人間だと分かった時に抱えている傷や重い暗い部分を見せてそれらを払拭することが出来るだろうか。
(全員が全員、傷付いて来たとは限らないだろうけど)
「……」
亜季は。
(もっと笑ってくれないかな)
寮に残った彼等は何をしているのだろうか。
寮から出てバスに乗って着くショッピングモールは自分達の足で来れる唯一の遊び場だ。ここに来て買い物をしたり映画を見たりゲームセンターもあるらしいが怖いので行かない。あと煙草の匂いがするから嫌だ。
「わー賑わってる」
「百均あるから百均行きたい」
「よせば?前にノート買ったら」
寮に残った忍と月人、弘忠に誘われてショッピングモールに来てみると初めて来たが確かに賑わいはあった。特に必要な物は無かったので彼等に付き合うように付いていくと忍から何か渡される。
「これ!」
「何?」
「ここで買ったんだけどさ、めっちゃ美味いお菓子!亜季にも食べてほしいんだわ」
「北海道銘菓…」
「それでさ…今度は俺と二人で来ないか?映画見てそれで買い物して」
「あーそれはちょっと」
悪い奴ではないと分かっているが忍と一日いると考えると正直疲れそうだ。遠慮をしておく。
「駄目?もうちょい仲良くならないとか…」
「また亜季にちょっかいかけて…」
弘忠がこちらの様子を気にしながら忍を自分から離してくれる。分かっている、悪い奴ではないがどうも距離が近い。好いてくれるのは嬉しい…かは微妙だが。
「亜季はさ」
弘忠が忍の相手をしていると月人が話しかける。近くで見ると本当に目が大きい。自分の二倍ぐらいは冗談抜きであるのではないか。
「好みのタイプ何?」
「好みのタイプ?」
この言葉を聞き逃さない忍が結構な勢いで振り返り首を痛めた。弘忠が呆れた顔をしている。
(と言うか)
「好みのタイプ…」
「うん」
「それは…その、男の?」
「当たり前じゃん。あれ?どっちもいけたの?」
「いや…」
まさかそう言う話をするとは思っていなかったと驚き月人に言われて考える。そうだ。ここなら別にどんな男が好みかだとかは隠さずにしていいのだ。
「…筋肉質で…」
「…!」
「肌は黒いのが…」
「!?」
「……」
忍の顔がうるさいな。
「お前顔がうるさいよ」
いちいちそんな反応するなと弘忠に怒られるが反論をした忍の言葉にこちらの話す言葉が止まる。
「何だよ!好みは聞かなきゃいけないだろ!俺の親父はそうしてお袋と結婚した!」
「お前のその性格は親父さん譲りか」
「言われてるんだ。好きな奴には真っ直ぐ行けと」
「真っ直ぐ過ぎるんだよ」
父親と母親。
両親の事を話すのに何の迷いも無い。むしろ自分の両親の事を誇らしくも思っていそうな表情で忍は語った。
「俺の家は逆かな?母親が父親にどんどん行ったみたいで…」
「へぇそうなんだ」
月人もだ。彼の両親の事は前に聞いた。自由にはさせてくれている。破天荒だとは言うが月人の両親の事を話す表情からそうだろう。
いいな。両親に愛されてて。
同級生で楽しんでいる。仲も深まったはずなのにそれと同時に分かるそれぞれの家庭の事情と自分の家を比べてしまい勝手に落ち込んで並んで歩いているはずなのに自分だけが切り取られた何もない空間に放り出されたようだった。
そうした終わった大型連休。
最終日に帰って来た生徒によってまた寮は賑やかになっていく。
遠方にいた生徒がお土産を持参してあちらこちらで楽しんでいると埼玉県に帰っていた遼一が明るい顔で帰って来てお土産の入った紙袋を掲げる。
「喜べお前ら」
「遼一!」
「遼一様!」
「何買って来たの?」
紙袋から取り出したるは埼玉県銘菓と銘打ったあんこが入ったお菓子だった。同じ埼玉県の忍が「あぁこれ知ってる」と言って遠慮無く箱を開けて夕飯前にも関わらず一つ、二つと開けていく。
「どうだった?実家」
「何も?普段は祝日忙しい親父が家にいて驚いたわ。おかげで高い寿司食えたけど」
「嬉しいんじゃねぇの?久し振りに息子が帰って来て」
「…かもな。ほら食え」
遼一から渡された個別包装のお菓子を眺める。嫌な想像をしてしまう。例えばこのお菓子は彼が両親にどんなお土産がいいか聞いて返ってきた答えを参考にして買った。もしくは一緒に選んで来たのではないかと。
自分には無い、そんな光景があるのではと。
「…俺部屋で食べるわ」
「え?もう夕飯だぞ?」
不思議そうにする皆に黙って部屋へと向かう。
どうしようも無いのは分かってはいるがいちいち自分の家の状況と同級生の、愛されたであろう彼等の背景に自分と何が違うのかと問答してしまう。
別に家族全員に見捨てられた訳でもないのだ。兄がまだいるのにどうしてもこうも寂しいのか。
「亜季!」
部屋のドアノブに手がかかる直前に声がかかる。
「…和彦」
帰省を終えて明るい顔で帰って来た和彦が手を振りながらこちらへと歩み寄る。
「久し振り。さっき帰って来たんだけどよ…これ、お土産」
海産物は流石に持ってこれなかったけど北海道には場所によって色んなお菓子があってと話しながら手にした紙袋からお土産を取り出そうとする。
その時紙袋の中にインスタントカメラがあるのに気付いて指摘すると笑いながら彼は答えた。
「親がさ、どんな生活してるか見たいって」
「親が?」
「そう。色々あったから心配してるんだってよ。だから撮って来いって」
「親が、心配」
「部屋が散らかってないかとか…そんな……亜季?」
インスタントカメラとお土産を手にしてこちらを向き直した和彦は自分を見て固まった。
何に驚いているのか分かる。
自分は今、両親に愛されているであろう彼等に彼に嫉妬しているひどい顔をしている。
「…何?どうした?」
「……」
「泣きそう…?何か、そんな感じの」
「……」
そんな自分を見てひどく狼狽える和彦を前にして何と話そうか。
何でもない。
大丈夫。
何の心配も無いから気にするな。
「何か嫌な事があったのか?」
「お前には何も分かんねぇよ」
柊先輩。自分はまだまだそう言える程に余裕がある人間ではないようです。
事情を知らない皆や和彦に嫉妬をして嫉妬をして膨れ上がった感情から出た突き放す言葉を浴びせられた和彦は驚いていた。
その和彦から何と返されるのか怖くなり慌てて部屋に戻り激しく自己嫌悪に陥る。
全部自分の責任なのに。
薊学園九期生、三井遼一
埼玉県出身。学級委員長の弘忠程ではないが世話焼きな性格。ふざける時はふざける。
身長160センチ後半。普通体型。
誕生日11月25日。




