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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑦ ~過去《きおく》の悪夢《おり》に執念《いのり》の意地《ひかり》を~  作者: norito&mikoto
第4章 明けない夜がないように

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第5話・特別室に残された ~誰も知らない彼女の氷笑《ほんしょう》~

第4章 明けない夜がないように



      第5話・特別室に残された ~誰も知らない彼女の氷笑ほんしょう



 シリウムが教皇の依頼で一旦退室した後、特別室では裁きの天使が残した白い水晶球の記録からヴィロバの罪状が確認されていた。



 水晶球から空中に投影される、実物さながらの幻が、ヴィロバが実際に口に出して言ったこと、アインに対して行った行為、その際の思考、すべてが再現されていく。



 けれど、いくらも見ないうちに教皇ステラから「そこまでにして。」と声がかかる。



 中断された時には女性の神官長らを中心に顔色を悪くしている者が多かった。


 神前裁判を執り行った判別神官長のラティスが事前に言っていた「見て気分の良いものではない。」を、全員がこれでもかとばかりに実感する。



「……本当に、これが教育者の言動か……?」



 六十代ほどの外見をした男性の神官長が憮然として呟けば、彼を若くしたような三十代くらいの外見の男性神官長が何かを思い返すようにしながら頷く。



「間違いないな……ヴィロバ校長……もう、元・校長か……は、俺たちが学生のころからこんな感じの言動だった……正直、当時も言ってることは正しいのに、何か変だな……という感じはしていたが……」


「……それでも、私たちは既に十三歳になっていましたからね……口はともかく、手を出してくることはありませんでした……」



 後に続いたのは同じく三十代ほどの外見の男性神官長。



 先ほどまでヴィロバがいた席の左右に座っていた、攻撃を専門とする攻術神官長と、結界作成を専門とする結術神官長の二人は、同い年で同期生。


 彼らが学生の頃はまだヴィロバは校長ではなかったが、座学を担当する教師の一人としてヴィロバも教鞭を執っていた。



 妄信的というよりは狂信的であったヴィロバの言動は、常に自分の考えが「正しい神の教えだ。」というのが根底にあったようだ。


 それも、水晶球に記録されたヴィロバの『思考』を確認することで判明した。



 考えが合わない相手というのは、すべて道を踏み外しかけた者、あるいは堕落しかけた者、といった認識で、自分の考えに染めることを「正しい道に戻す」と本気で思っていたようだ。



「……これを、せいぜい五歳の子供相手にやっていたのなら……」



 二人よりは少し上、四十代くらいの外見の男性神官長が呟くと、室内には重い沈黙が落ちた。



 消滅刑も当然。いや。むしろ、ヴィロバ一人に裁きの範囲が収まってくれたのはかなりの慈悲と言えるだろう。



 何しろ、ろくに抵抗できない子供であるのをいいことに、暴力と言えるような行為まで繰り返していた。


 更には、その痕跡を回復魔法で治すことで消して、「正しい道に戻ったので、赦しを与えましょう。」と本気で言ってのけたことまであるのが確認されている。



 ろくに抵抗できないと言えば、低学年の生徒は殆どそうではあるのだが、流石に反撃される可能性や……女性の見習いに対しては『誤解』を持たれるのを嫌って手出しを避けていた。



 だからこれまで表沙汰になることもなかったようだ。



 いや。むしろ、自分が完全に支配下における相手が出てきたがゆえに、自分の理想通りに育て上げるのが正しいと考え、半ば暴走していた部分もある。



「……そう考えると、運が悪かったともいえるかもしれないが……だからと言って許されるはずもないな……」



 再び、六十代くらいの外見の男性の神官長がそう呟き、それを合図にしばしの休憩となった。




 一同がそれぞれの休憩室から特別室に再び集まったのは一時間半ほど後のこと。


 シリウムが戻って来たのを知らされ、その後の進捗を聞く。



 アインの状況は、思っていたほどには悪くはなさそうだった。



 けれど、合わせて報告された数々……


 アインの腕の怪我に残る風の神剣の魔力を除去できる可能性について。


 アインが見者の目で精神体を視認できることなど……の爆弾ともいえる情報。



 更に、皇宮医務殿から届けられたインスの容体に関する報告に絶句する。



「相変わらず、無茶をする子ねぇ……」



 報告を受けた高祖母(きょうこう)が言ったのはそれだけだったが、そっと溜め息を漏らす様子から、気にかけていないわけではないことは分かった。



「……とりあえず、インス君の件は皇宮医務殿(ウスニー君)の判断に任せるわ。アイン君の方は、シリウム君に任せるから、問題がありそうならまた相談してくれる?」


「かしこまりました」



 けれど、その後に伝えられたのは『すべて現場に任せる』という信任の言葉。


 一礼して請け負ったシリウムに頷き返し、シリウムが不在であった間に確認されたことを共有する。



 そして、今後の神官呪師学校の運営に関しての意見交換を交わしたのち、解散となった。



 時刻は既に深夜に近く、新体制に関する告知などは夜が明けてからになるだろう。



 ここで一つが終わり、まだ続く問題が残り、そして新たな問題が立ち上がった。



「……本当に……」



 皆を見送り、一人残ったステラは、ゆっくりと円卓に残された水晶球を起動させる。



 再び空中に投影された幻が、ヴィロバの言葉(こえ)を再現し始めた。


〈……やはり、私が常に()()()あげなければいけませんね……一体()()()愚かな考えに触れてしまうのか……皇宮に行かせていた時期に、穢れに触れてしまった影響でしょうか……?〉



 ソファに寝かせたアインに、回復魔法をかけて爪で引っ搔いて負わせた怪我を癒し、痕跡を消す。


 ぐったりとして意識を失ってしまっているその小さな体を抱き上げて、仮眠室へと運び込むと、ベッドに寝かせてサラリと髪を漉いた。



〈……ああ。神よ……。この、()()()()()()をお与えくださり、感謝いたします……〉


 床に跪き、恍惚とした表情で十字を切って祈りの文言を囁く。



〈どうか、私の()()()()()をこのまま御見守りください……私が必ずや、この子どもを()()()にふさわしい(しもべ)に育て上げて見せます……〉



(清廉にして、高潔なる我が志に祝福あれ……)



 最後は心の中で呟かれた思考。



 ヴィロバの口元に薄く浮かぶ笑みが、酷く満足そうに弧を描き、自画自賛と自己満足をこれでもかと主張する。



「……愚かすぎる子ねぇ……」



 冷めた目でヴィロバの幻を眺め、何の感慨もない声音が呟く。



(……でも、良かったわねぇ……審判を下して貰えて……天使に断罪されるなら、本望でしょうよ……)



 心の中でそう呟いたステラの口元に、冷たい笑みが一瞬浮かぶ。



「……もう少し、遅くなっていたら……()()()も貰えないところだったわね……」



 消滅刑がマシだとでも言いたげなその囁きを聞くのは、ヴィロバの幻だけだった。


第4章第5話をお読みいただきありがとうございます。


今回は、神前裁判を終えた後の特別室での事後処理のお話です。


水晶球に記録された元・校長の真意。暴力を振るいながら本気で「正しい導きだ」と信じ込んでいた狂信性。


その生々しい異常性に胃を痛める大人たち。


彼らもまた、この最悪の事態を見逃していた責任を痛感し、言葉を失います。


そして、全員が退室した後に一人残った教皇猊下の、冷え切った眼差しと呟きの意味とは……?


彼女が誰の、どんな行動を危惧していたのか……想像するだけで背筋が凍ります。


長かった夜が明け、物語は一つの決着を見せます。


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第7弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s8365j/

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