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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑦ ~過去《きおく》の悪夢《おり》に執念《いのり》の意地《ひかり》を~  作者: norito&mikoto
第4章 明けない夜がないように

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第2話・神の怒りに触れたのは ~鎮まる先になお残る~

第4章 明けない夜がないように



      第2話・神の怒りに触れたのは ~鎮まる先になお残る~



 神官呪師学校・校長室前にて。



 校長室に隣接する仮眠室で起きていた魔力暴走とも思える現象は、数分間続いたのち、唐突に治まりを見せた。



 ――ように見えた。



「……………」



 あまりにも急激な変化に、教皇からの指示だと言ってクロードに連れてこられたペルフィーも、騒ぎに集まった教職員たちも困惑気味に顔を見合わせる。



「……っ」



 すさまじい衝撃音や荒れ狂う魔力によってインテリアが破壊されていくのを目撃していた神殿護衛官らも、急に静まり返ったことにむしろ緊張感を高めた。



 まだ、終わりではない。言うならば、嵐の中心地点では一時的に風雨が弱まるような、そんな薄気味の悪さを誰もが感じていた。



「「……っ……!?」」



 そして予想通り、一瞬の静けさを裂くように、熱さと冷たさを併せ持つ魔力が凄まじい圧となって周囲に広がる。



「……ぅ……っ!!」



 あまりにも濃密なそれに、神官呪師らが一斉に顔を青くし、吐き気に口を押えて蹲った。



「……っ!!」



 同様に、ヒュッと息を飲んだ神殿護衛官らも青ざめて体を強張らせ、咄嗟に腰に下げた剣を抜く者も出る。



 がくがくと震え、必死に息を継ぐ神官呪師らが恐慌状態に陥らなかったのは、その魔力のあまりの圧に完全に心を折られてしまったから。



 まるで、神の怒りにでも触れたかのような、圧倒的な格差に逆らうことも逃げることも……ましてや抵抗するなどもっての外だと本能で悟ってしまった。



 何人かの教職員が十字を切って祈りの言葉を繰り返す。


 神に懺悔し、赦しを乞うのではなく、むしろ己の罪深さを認め、告白するような祈りだった。



 しばらく続いた圧が、現れた時と同様に突然消え失せ、全員が何とか落ち着きを取り戻した頃には、仮眠室どころか校長室の中までもが破壊され、インテリアの残骸が散乱していた。



 幸いと言っていいのか、あるいは流石と言うべきなのか、室内は惨状と言っていい様相ではあったが、建物自体に被害は少なく、精々、壁や天井、床に魔力が走ってできた傷痕が残るだけ。



 窓も、傷自体はついているが、割れてはいなかった。



「……っ。アインは……!?」



 落ち着いてきてすぐ、そう叫んで立ち上がったペルフィーが、辺りの魔力を探りながらゆっくりと室内に足を踏み入れる。



 あれほどの魔力圧の中で、暴風と言って差し支えない状況のただ中に一人取り残される形となったアインの元へと急いだ。



 後を追ってクロードが続くが、他の者は万一を考え、廊下で待機する。



「……う、そ……だろ……?」



 散乱する障害物を避け、仮眠室に続く扉から中を覗いたペルフィーの唇から渇いた音が零れ落ちた。



 これだけの惨状のただ中にあって、アインが寝かされているベッドだけが何の被害も受けず無事に残っていた。



 ぐったりとして青ざめたアインは、先ほど見た時と違い、もうその全身を魔力に包まれてはいない。


 縫い留める魔力が無くなったおかげか、ひきつけは治まり、唸ってもいなかった。



「アイン!」



 周囲の魔力を探って、問題がなさそうだと判断したペルフィーをクロードが無言で押しとどめ、先に部屋の中、死角までを素早く確認する。


 それを待って、ペルフィーは部屋に飛び込み、ベッドに寝かされたアインの容体を見た。



 苦し気な呼吸を繰り返すアインは完全に魔力切れの状態で、身体が酷く冷えていて脈が速い。


 怪我らしい怪我は増えてはいないようだが、濃密な魔力のせいで治らない左腕の怪我からの出血が袖を赤く濡らしていた。


 舌打ちして、ペルフィーはアインの上衣をはだけ、腕に巻かれた包帯も解く。



 縫い合わせてあるのに治らない傷口の、その縫い目の間からあふれる血を、懐から取り出した布で押さえた。



 押さえたところで完全に止血できるわけでもないのだが、それでも多少はマシになる。


 それでなくても貧血が酷い状態になってしまっているアインに、これ以上、失血させるわけにはいかなかった。



(……って、いっても……っ!)



 傷口に残る魔力のせいで治らない怪我。


 多少は抑えられても、二か月半以上続いている出血。


 その二か月半ほど前には、他にも生死を危うくするほどの大怪我も負っていて、そちらの怪我は治せたけれど、その時点で失った量も多すぎた。


 どれだけ造血剤や貧血薬を飲ませ、少しでも血を作らせようとしても、追いつくはずがない。



(……まずいっ! このままじゃ……!!)



 焦るペルフィーは、クロードが顔を上げ、動線を開けるように動いたことにも気づけない。



「そのまま押さえていろ」



 そこに、居なかったはずの人物の声がして驚く。



「っ!? シリウム神官長!?」



 パッと顔を上げると、医呪神官長のシリウム=ゾナールが駆け付けたところだった。



 目を見張ったペルフィーに先ほどの指示を繰り返し、シリウムは手早くベッドの上に治療の道具を並べていく。



「ペルフィー。補助に付け。縫合し直す」


「っ! 分かりました!!」



 これからやることを伝えたシリウムに頷いて、素早く配置に付いたペルフィーに代わり、傷口の状態とアインの容体を診たシリウムは一瞬だけ眉を顰めた。



「呼吸補助ができる奴はいるか!? あと、水魔法使える奴も洗浄補佐に付け! 傷口洗え!!」


「「は……っ。はい……っ!!」」



 廊下で様子を見る教職員に声をかけると、二人が返事をしてすぐに中に入ってくる。



 次々出される指示に従い、その場でアインの緊急手術が始まった。


第4章第2話をお読みいただきありがとうございます。


今回は、荒れ狂っていた魔力の嵐が過ぎ去った後の、校長室周辺のお話です。


現場の大人たちはすっかり心を折られ、神官たちが本能的な恐怖で祈りを捧げてしまうほどの「圧倒的な魔力の圧」。


しかし、周囲のインテリアが破壊されるほどの惨状の中で、アインが寝かされている場所だけは何の被害も受けていません。


魔力切れでぐったりとするアインと、その出血に焦るペルフィー。


一刻を争う事態の中、ようやく現場に駆けつけた「頼れる大人」の姿。


新たに始まる緊急事態に、大人たちはどう動くのか!?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第7弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


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