第3話・闇に跳ねるは白色の ~心に満ちた輝きの~
第3章 闇に差し込む光のごとく
第3話・闇に跳ねるは白色の ~心に満ちた輝きの~
ぼんやりと開いた瞳に映るインスの顔を眺めながら、これは夢? とアインは内心で首を傾げる。
何が夢で、何が現実なのか……もう何も分からなくて、けれど、全部が夢であったのなら、あいたかったヒトの姿に嬉しくなって、ほわりと笑顔が浮かぶ。
体の感覚も、温度も、何も感じ取れない幻のような闇の中で、見えるのはインスの顔だけで……
(……インスさま……目の色、いつもと、ちがう……?)
じっと見つめるうちに、そのことにも気づいたけれど、それより目の前に、インスが見えるだけで幸せだった。
(……これが、ぜんぶ……ゆめでも……)
いいや、とそう思う。
本当は、今もまだ、怖い人たちのところに居るのだとしても。
クロードに助けてもらって、神殿や皇宮で、色々教えて貰えて……
ちょっと怖い人や、厳しい人や、苦手な人もいたけれど……
優しくしてくれた人たちも、沢山いたし、何より、インスさまにあえた、そんな夢を見られただけで……十分だ。
このまま、自分が消えて無くなってしまっても、全然怖くない。
だって……
(……いんすさまに、あえたから……)
この闇の中で。
自分が作った幻だとしても。
それだけで、もういいやと満足して……
「アイン君!」
遠退きかけた意識を、叩きつけるような強い思念を宿した声で揺さぶられる。
「……っ!?」
ぱちりと、閉ざされかけた瞳が開いて、今度こそ真っ直ぐに、意識を持ってインスと目を見合わせた。
いつもの、赤みを帯びた紫色ではなくて、それより明るい、きれいで、鮮やかな紫色の瞳をしたインスの目を見つめる。
「……ゆめ……じゃ……?」
ない?
「……ちゃんと、私はここに居ますよ……」
潤んだ紫色に見つめられて、呆然と呟くアインに、きっぱりとインスは告げる。
「……ィンス、さま……?」
「……はい……」
掠れた声が漏れて、ふわりと微笑むインスの返答に、アインの目からぽろぽろと涙が零れ落ちた。
闇の中に、その雫が白く光って跳ねる。
「……インスさま……っ!!」
本当に、目の前にインスがいると分かって、アインは自分を抱きしめるインスにしがみつく。
今度は、ちゃんと感じられるぬくもりにますます涙が溢れた。
「……はい……」
そっと、アインを撫でながら答えるインスに、声を上げて泣くアインは意味をなさない言葉を、悲鳴のように繰り返す。
「……怖かったですよね? つらかったですよね? 淋しかったですよね?」
聞かれるたびに、頷いて、アインはますます泣いて、しがみつく。
「沢山、意地悪されていたのに……気づいてあげられなくて、ごめんなさい……」
ぎゅっと、インスの腕にも力が籠って、震える息が、それでもなお言葉を続けた。
「助けてあげられなくて、守って、あげられなくて……ごめんなさい……」
泣いて、喚いて、必死に縋りつくアインに思いを伝え続ける。
首を振って、ひたすらに泣くアインは、ただ、インスのぬくもりを、やさしさを少しでも感じたくて、体を押し付けるようにしてますます強くしがみつく。
「……忘れないで……何があっても、どんな時でも、私は君の味方です……絶対に、君を独りきりにはしません……だから、君も……私を置いていかないで……」
宥めるように撫でながら、囁くインスの言葉に頷く。
「……や、……くそ、く……しま……す……っ」
上ずった泣き声が、それでもきちんと思いに応えて……
二人の全身を、二人の魔力が入り混じるように包み込み、闇をすべて薙ぎ払うように吹き荒れた。
闇が晴れたそこは、今度は真っ白な光に満ちた世界に変わって……揺らめく水と氷が、小さな何かを形作る。
「……っ……!!」
びくっと震えたアインを強く抱きしめ、撫でながら、インスは冷ややかにソレを見据えた。
「……サイズを変えても、魔力は変わらないのです……私や、アイン君を誤魔化すことなんて、できませんよ?」
インスの声の冷たさよりも、目の前のそれに対する恐怖で震えるアインは、ますますインスにしがみつき……
水が形作った小さな龍と、氷が形作った羽の生えた小さな狼は、少し困った様子でお互いの顔を見合わせた。
沈黙は一瞬。
「はじめまして? あなたたちが、アイン君の中に居座る『水の神剣の意思』ですか?」
「えっ!?」
冷ややかに問いかけたインスに、龍と狼が応えるよりも先に、アインが驚きの声を上げた。
第3章第3話をお読みいただきありがとうございます。
絶望の闇の中で、ついにアインの意識を呼び覚ましたインス。
涙を流してしがみつくアインを優しく宥め、互いの味方であると誓い合う二人の姿は、まさに魂の共鳴そのものです。
そんな感動的な魔力の奔流で闇を吹き飛ばした先、光に満ちた世界で二人を待ち受けるものとは!?
次回もお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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【第7弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
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