第1話・信誓《ちかい》は永劫《とわ》の ~解放するのは~
第3章 闇に差し込む光のごとく
第1話・信誓は永劫の ~解放するのは~
全身を己の魔力で包んで、アインを縛る魔力の鎖に手を伸ばす。
「……っ!」
反発する魔力が火花を散らし、跳ねた力に焼かれ、斬られても、少しずつ、けれど確実に近づいていく。
厚い抵抗の壁を、無理やり押しやり、時々押し戻されながらも、それでも一歩も引かない。
「……アイン……君……っ!」
ギリギリと、アイン自身を縛り、締め上げる魔力の鎖は、アインのものではあったけれども別の何かに歪められ、変質していた。
吹き込まれた言葉に侵されたのか……あるいは、直接的に洗脳をかけたのか……どちらにしろ、自分で自分を殺そうとさせているなんて!
(……許せるはずがない……!)
ギっと、噛みしめた唇が切れて、鉄臭い苦みが広がる。
精神体でしかないはずの……物質の器ではない今の姿で、そんな味覚が働くなんてと、どうでもよいことに思考が逸れかけた。
更に一歩、踏み込んで、伸ばした指先が鎖に触れる。
「……っ……!!」
バチっと、大きく衝撃が来たけれど、予想していたので今度は弾き飛ばされることなく踏み止まった。
指先が魔力に焼かれる。
痛いとも熱いとも感じたが、どうでもよい。
グッと、手を伸ばし、身を寄せて、指先だけではなく、掌全体で鎖を掴む。
「……っぁ……っ!!!!」
掴んだ手から、腕を伝って全身に衝撃が走った。
思わず悲鳴が零れるが、手は離さない。反対の手も伸ばして、両手で掴みかかる。
「――――っ!!」
先ほどの比ではない衝撃に、悲鳴を上げる事すらできず、仰け反って……がくりとアインが寝かされたベッド脇に座り込んでしまった。
それでも、手は離さない。確実にアインに近づいて、その顔を覗き込む。
「……ァ……イン……く……っ」
掠れた声が呼び掛けるけれど、ぐったりとして苦し気なアインが気付く様子はない。
絶え間なく襲い掛かる衝撃に、痙攣を起こす体を無理やり押さえ込んで、片方の手だけ鎖から放して、そっと、アインの頬に触れた。
「……っ!?」
その頬がゾッとするほど冷たくて、一気に背筋が冷える。
「……あいんくん……?」
愕然として、零れ落ちた自分の声があまりにも弱々しくて、感情に引きずられた魔力も弱まってしまう。
抵抗に耐えられなくなって、跳ね飛ばされそうになる体を、必死でその場に縫い留める。
「アイン君! アイン君、気づいて下さい!!」
アインの頬に触れた手から、自身の魔力を流し込む。
無理やりにでも、気づかせるために。
「っ。アイン君!!」
呼び掛けて、冷え切ったその頬に、その体に、自分の魔力を伝え続ける。
どうか。どうか、気づいて!!
「………………………」
苦痛に歪むアインの表情が、一瞬、酷く頼りなげなものに変わって、呻く吐息の代わりに囁くような嘆きが零れる。
「っ!?」
様子に気づいて、インスはさらに、魔力を送りながら、耳を澄ませて、口元に注視する。
(……ぜんぶ……ゆめ……だった……?)
あのヒトに、あえたことも……?
「っ。いいえ……」
その囁きに、インスはきっぱりと返す。
「……私と、アイン君が遇えたことも……アイン君が、他にもたくさんの方と知り合えたことも……全部、現実ですよ……」
だから、どうか、忘れないで……なかったことにしないで……
「……私を……独りに、しないで下さい……」
込み上がる熱を必死に堪えて、アインの頭の後ろに手を回し、弾き飛ばそうとする魔力に逆らって、アインを縛る魔力の鎖ごと抱きしめる。
「……っ!!」
接触面が多くなった分、焼けただれるほどの痛みと熱も増えたけれど、苦痛を堪えて強く抱く。
「……思い出して……アイン君……何があろうとも、私は君を、独りにはしません……」
そう、約束したでしょう?
「たとえ、一時的には、物理的な距離ができてしまったとしても、ずっと、君を想っています……そして……かならず、また、君の元に戻りましょう……」
絶対に。
「どんな手を、使ってでも……」
この言葉を伝えた時には口には出さなかった最後の一言までもを、誓いのように刻む。
内に秘めた……本来の力を……解き放つ。
広がる魔力が色彩を帯びて、焼けただれ、傷ついた精神体をまるで何もなかったかのように修復しながら、アインを縛る魔力を、負担をかけないように慎重にほどく。
「……アイン君……」
囁きながら、こつりと額を触れ合わせて、その名を呼ぶ。
「……………」
魔力の高まりと共に、ゆっくりとアインが瞳を開いた。
神秘的な、黒にも見える深い紫色が……ぼんやりとインスの瞳を捉える。
その慈愛に満ちた……やさしさとぬくもりを宿す紫色を映し出して……
「……ぃ……んす……さま……?」
第3章第1話をお読みいただきありがとうございます。
アインを傷つけ、縛り上げている鎖の「正体」。
それに気づいた時、インスの中で許せないという怒りと、彼を救うための執念が限界を突破します。
自らが傷つくことなど一切気にも留めず、強引に魔力の鎖ごとアインを抱きしめるインス。
そして静かに刻まれる「どんな手を使ってでも」という、狂気すら孕んだ絶対の誓約。
果たしてインスの必死の呼びかけは、闇の底に沈むアインに届くのか!?
次回もお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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また次回もどうぞよろしくお願いいたします!
【第7弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
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ノリト&ミコト
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