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第二 初めの並べ方



 箱を開けて、駒を全部卓の上に出してほしい。前の宿題で分けたとおり、濃い色が万夜側、白が神側で、どちらから並べてもよいのだが、私は師に習ったとおり、いつも神側から並べることにしている。白い駒のほうが暗い部屋でも見分けやすいという、それだけの理由で始まった癖なのだが、六十年も続けていると、万夜側に座る日でも先に向かいの駒を並べてしまい、相手に不思議な顔をされることがある。並べ方は昔からの申し合わせで一つしかなく、誰と指しても、どの館の盤でも、駒の居場所は変わらない。


 神側の駒は、九の段と八の段に並ぶ。まず九の段で、一の列に堅磐神、二の列は空けて、三の列に聖母神、四の列に門守神、五の列に叡智神、六の列に聖嵐神を置く。王の隣の七の列は空け、八の列に律天神、九の列は空け、十の列に流転神を置けば、九の段に七枚の駒が並び、三つのマスが空いたことになる。空くのは二と七と九の列で、ここに駒を詰めて置きたがる子が多いのだが、空いているのも並べ方のうちであって、詰めてはいけない。次に八の段に、一の列から十の列まで一般兵を一枚ずつ、一つも空けずに置く。十の段には何も置かず、神側の駒十七枚はこれで全部だ。


 万夜側は、神側を写せばよい。九の段に置いた駒の向かい、同じ列の二の段に、同じ動きをする駒を置いていく。一の列の堅磐神の向かいに崩壊将、三の列の聖母神の向かいに堕命将、四の列の門守神の向かいに破境将を置く。五の列の叡智神の向かいに狂叡将、六の列の聖嵐神の向かいに反逆神、八の列の律天神の向かいに滅法将、十の列の流転神の向かいに不転将だ。二と七と九の列は、二の段でも空いたままになる。三の段に一般兵を十枚置き、一の段は空けておく。駒の名を教えたときに、向かい合う駒は同じ動きをすると言ったが、その組は、初めから同じ列で向かい合って置かれている。組を覚えていれば万夜側の並べ方を別に覚える必要はないのであって、この並びは、覚える者のためにある定めだと私は思っている。


 並べ終えたら、手を離す前に、二つだけ確かめてほしい。一つは、両方の王が六の列にいて、六二と六九で向かい合っていること。もう一つは、四の段から七の段までの四つの段が空いていることだ。盤の真ん中に王を置きたがる子は多く、最初の日の下の子もそうだったのだが、縦横十の盤には真ん中のマスというものがなく、五の列と六の列、五の段と六の段が真ん中を挟んでいる。王はその六の列に、自分の兵の後ろに隠れて立つ。下の子はこれを聞いて、では五の列でもよかったのではないかと言い、私は、よかったかもしれないが昔から六なのだ、と答えるほかなかった。


 ついでに、集いで使う言い回しを一つ教えておく。向かいに座る相手の王のことを、集いの者は冗談めかしてお客と呼ぶ。盤を挟んで座ると、自分の王は手前の兵の後ろに隠れて見えにくく、向かいの王のほうがよく見えるからで、万夜側に座った君にとってのお客は六九の聖嵐神、神側に座ったときのお客は六二の反逆神だ。一局のあいだ君が追いかけ、最後に動けなくするのはこのお客であって、自分の王ではない。お客がどこにいるかを、並べたときに一度、目で確かめておくといい。


 一の段と十の段が空いていることについては、師から聞いた呼び名を一つだけ書いておく。師は十の段を、神々が退いていく先だと言って輝界と呼び、一の段を大扉の前と呼んでいた。神書の終わりに、神々が輝界へ退いて現界を人の手に委ねたとあり、反逆神が闇界の大扉の内に封じられたとあるから、盤の両端の空いた段をそれになぞらえたのだろう。集いでそう呼ぶ人をほかに私は知らないし、申し合わせでもないから、覚えなくてよい。ただ、王の後ろに一段空いているということは、王がそこへ下がれるということでもあって、それだけは頭の隅に置いておいてほしい。


 十八の年に初めて王都の集いに出た日、私は父の館でしか指したことがなく、向かいに座った年長の人の前で手が震えていた。震えたまま万夜側を並べ、並びをそっくり左右に裏返して置いてしまって、反逆神は五の列に来た。父の館では私がいつも神側に座っていたので、神側の並びを頭の中で裏返したつもりが、裏返しすぎたのだ。向かいの人は何も言わずに自分の聖嵐神を五の列に置き直し、そのまま一局を指した。私は負けた。終わってから、今日の盤は五の列の王だったな、と笑って言われて、私は初めて盤を見直し、顔が熱くなった。あの人は並べ間違いを直す代わりに、間違えた盤で付き合ってくれたのであって、それ以来、私は手を離す前に必ず六の列を指でなぞる。


 並べ方には、申し合わせのほかに人の癖がつく。駒を音を立てて置く人、王を最後に置く人、兵から先に並べる人がいて、どれも好きにすればよい。ただ一人、兵法家気取りの対局者で、並べながら一枚ごとに駒の由来を向かいに聞かせる人がいたのだが、あの人の並べる時間は私の一局より長く、しかも由来のほうは半分が違っていた。並べ方は申し合わせであって、語るものではない。君は黙って並べ、黙って六の列を確かめればいい。


 並べ終えた盤を、動かす前に少し眺めてほしいのだが、両方の王のあいだには六三と六八の兵が一枚ずつ立っているだけで、そのあいだの四つの段には何もない。初めの一手で動かせるのは、兵と、兵の列を跳び越せる駒、それから二の段や一の段の空いたマスへ動ける駒で、何が動けて何が動けないかは、駒の動きを教えたあとで君が自分で数えればよい。いまは、三の段と八の段の兵が壁のように並んでいて、固有駒の多くはその壁の後ろで待っている、というふうに盤を見ておけば足りる。


 さて、今日の宿題だ。いま並べた駒を一度全部崩して箱に戻し、何も見ずにもう一度並べてほしい。並べ終えたら、六の列に両方の王がいるか、二と七と九の列の二の段と九の段が空いているか、兵が十枚ずつ一つも空かずに並んでいるかを順に見て、一つでも違っていたら崩してやり直す。三度続けて間違えずに並べられたら、その日はそれで終わりにしてよい。駒を動かすのは、まだだ。


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