第十 中盤から終盤へ
盤の上の駒を数えれば、局がどこまで来ているかは分かる。並べたときに三十四枚ある駒は、十手目には三十枚ほど、二十手目には二十六枚ほど、三十手目には二十枚ほどになり、詰みの盤に残っているのは、両方を合わせて十二枚ほどだ。駒が三十枚を切ったら中盤で、二十枚を切ったら終盤の支度に入る。序盤が出す時間だとすれば、中盤は取り合う時間で、終盤は追う時間になる。この三つは別の遊びだと思って指したほうがよく、上手の人は、駒の数が減るたびに、盤の見方を変えている。
中盤の仕事は取り合いで、取り合いには数え方がある。集いでは駒の値打ちを兵で数え、兵一枚を一つとして、門守神と聖母神が三つ、英雄兵が四つ、堅磐神が五つ、流転神が七つ、律天神が八つ、叡智神が九つ、これが師から伝わった古い数え方で、いまの集いでもこの数で損得を言う。万夜側の駒は向かい合う駒と同じ値打ちで数える。取るときは、取ったあとに取り返されるかどうかを数え、取り返されるなら、渡す駒と得る駒の値打ちを比べる。門守神で狂叡将を取って門守神を取り返されれば、三つを渡して九つを得たのだから六つの得で、堅磐神で堕命将を取って堅磐神を取り返されれば、二つの損になる。七の列で滅法将と律天神を取り合うのが損でも得でもないと前に書いたのは、八つと八つだからだ。
序盤で遅れた一手は、中盤でこの数えの差になって出てくる。七手目までに出した駒が相手より一枚少なければ、十手目からの取り合いで、相手は一枚多い駒で取り、こちらは一枚少ない駒で取り返すことになり、たいていどこかで一つか二つの損が出る。そしてその損は終盤まで消えない。二十手目に兵三つ分の差がついていれば、差をつけられた側が勝つ局は十局に一局で、残りは差をつけた側が勝つか、追いつけずに引き分けになる。駒は戻らず、取られた駒は箱の中だから、序盤の一手の遅れは中盤の一枚の損になり、中盤の一枚の損は終盤でそのまま、詰ます側と詰まされる側の違いになる。二十手目までの出し遅れと、三十手目までの取り合いとで、一局の八分は決まっている。
中盤の初めにしておくことが二つある。一つは王護で、三十手目ごろ、取り合いが本格になる前に王の居場所を決めておく。もう一つは、お客の居場所を見ておくことで、お客が初めの段から出てこないのか、兵の壁の外へ出てきたのかで、終盤の追い方が変わる。詰まされる王の半分は初めの段から一度も動かないまま詰まされる。お客がそこにいるなら、終盤の仕事は、お客の周りの駒を減らすことに尽きるのであって、取り合いの相手を選ぶときは、お客のそばにいる駒から取っていく。
取り合いで何を残すかも終盤を見て決める。詰みの盤に勝った側が持っている駒を調べると、英雄兵が十局に六局、堅磐神が十局に六局、叡智神は十局に四局しか残っていない。叡智神は中盤の取り合いで的になりやすく、取り合いに出れば出るほど早く盤を去る。堅磐神は違う。堅磐神は段を切る駒で、終盤でお客を端へ追うのに、これほど向いた駒はほかにない。だから中盤の取り合いには跳ぶ駒と聖母神と叡智神から出し、堅磐神は壁の後ろに置いたまま、取り合いが終わるまで動かさないでおく。王と堅磐神と英雄兵、この三枚が残っていれば、終盤はたいてい勝てる。
駒が二十枚を切ったら、兵を走らせる時期だ。序盤に兵を走らせると跳ぶ駒に取られるが、跳ぶ駒が取り合いで減った盤では、兵の前は空いている。残った兵のうち、隣に仲間のいる兵を選び、隊列行軍で二歩ずつ進める。兵が名を得るまでに相手の駒が三枚減っていれば、その英雄兵は取られない。英雄兵が生まれた局は、生まれた側が十局に七局を勝つと前に書いたが、それは終盤に生まれたときの話であって、序盤に生まれた英雄兵は、私が二十五の年にそうだったように、次の手で詰まされる王の脇に立っていることがある。
詰ますための動きは、三つの段取りに分かれる。一つ目はお客を端へ追うことで、堅磐神を一つ上の段に置けば、お客はその段を越えられない。神側の王が六三にいて、お客が六一にいるなら、堅磐神を二の段に置いてしまえば、お客は一の段から出られなくなる。二つ目は自分の王を近づけることで、王どうしは隣に立てないから、一つ隔てて向かい合わせるのであって、六三の王と六一のお客は六二を挟んで向かい合い、お客の逃げ場の五二と六二と七二は、どれも六三の王の利きの中にある。三つ目は守られた駒で最後の王手をかけることで、お客が六一で動けなくなった手で、堅磐神を一の段へ下ろす。堅磐神が一二から一一へ下がれば、一の段の五一と七一は堅磐神の利き、二の段の三つは王の利きで、お客はどこへも行けない。段を切り、王を寄せ、最後に堅磐神を落とす、この三つを集いでは段落としと呼び、王と堅磐神一枚だけで、お客がどこにいても詰ませられる。
英雄兵の詰みは、引き分けの章で見せた形がすべてだ。お客を隅へ追い、自分の王を一つ隔てて置き、英雄兵を二マス離れたところから利かせる。英雄兵は二マスまでしか動けないが、二マス離れていればお客に取られないのであって、取られない距離から王手をかけられる駒は、堅磐神のほかには英雄兵しかない。英雄兵が二枚あれば、一枚で段を切り、もう一枚で王手をかけられるから、堅磐神がなくても段落としと同じ手順が踏める。勝った盤に英雄兵が二枚立っていることが多いのは、そのためだ。
三十一の年の集いで、私は中盤に堅磐神で相手の滅法将を取り、取り返されて堅磐神を失った。五つを渡して八つを得たのだから、数えの上では三つの得で、私は得をしたつもりで終盤に入った。残ったのは王と門守神と兵が二枚、相手は王と兵が三枚で、私の兵は一枚ずつ相手の兵と取り合って消え、相手の最後の兵は門守神が取り、盤には私の王と門守神、相手の王だけが残った。駒不足の引き分けだ。三つの得が段を切る駒を失った損に遠く及ばないことを、私はその局で覚えた。あの日から私は、堅磐神を取り合いに出すときは、取り合いが終わったあとの盤に、段を切る駒が残っているかを先に数える。
さて、今日の宿題だ。盤に三枚だけ駒を置いてほしい。六一に万夜側の王、六三に神側の王、一二に神側の堅磐神だ。手番は神側として、堅磐神を一二から一一へ下ろし、お客の逃げ場を五一と七一と五二と六二と七二の順に指で押さえて、詰みであることを確かめてほしい。確かめたら、今度はお客を五五に置き、堅磐神を一二に、王を六三に戻して、お客を一の段まで追い落として詰ますまで、誰かにお客を持ってもらって指してみるといい。追い落とすのに何手かかったかを数えておけば、次に指すとき、それより少ない手で済む。




