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第8話 「異世界バレの危機!?」

第8話 「異世界バレの危機!?」


アキラはいつものように異世界へ来ていた。


お茶会。

ケーキ。

ポテトチップス。

もはや定例行事である。


しかし。


今日は少し空気が違った。

魔王。

リリアナ。

執事。

大魔導師。

全員が集まっている。

そして誰もお菓子に手を付けていない。


「何かあったの?」


アキラが聞く。

大魔導師が重々しく頷いた。


「現実世界で我々の痕跡が発見され始めています」


アキラ。


「やっぱり」


最近のニュースを思い出す。


謎の光。

奇妙な目撃情報。

SNSの投稿。


少しずつ。

少しずつ。

異世界の存在が現実世界へ漏れ始めていた。


「このままでは」


魔王が腕を組む。


「世界同士の境界が不安定になる」


「危険なの?」


「かなりな」


珍しく魔王の顔が真面目だった。

お菓子の話をしていない。

これは本当に深刻らしい。

大魔導師が説明を続ける。


「原因はおそらく」


全員がアキラを見る。


「僕?」


「アキラ様です」


「やっぱり僕?」


「アキラ様が両世界を何度も行き来したことで」


「うん」


「世界同士の繋がりが強くなりすぎました」


「ごめんなさい」

即謝った。


しかし。

リリアナが首を横に振る。


「違います」


「え?」


「アキラは悪くありません」


優しい声だった。


「私たちが会いたかったのです」


魔王も頷く。


「責任は我々にもある」


アキラは少しだけ胸が温かくなった。

でも。

同時に。

嫌な予感もしていた。


そして。


その予感は当たる。

大魔導師が静かに言った。


「境界を修復するには」


誰も喋らない。


「しばらく往来を止める必要があります」


沈黙。


リリアナの笑顔が止まった。

アキラも言葉を失う。

つまり。

会えなくなる。

しばらく。

いや。

場合によってはもっと長く。

部屋が静かになる。


すると。


リリアナが無理やり笑った。


「だ、大丈夫です!」


明らかに大丈夫じゃなかった。


「また会えますし!」


声が少し震えている。


「そうだね」


アキラも笑う。

でも。

少し寂しい。

魔王も珍しく黙っていた。


執事なんて少し目を逸らしている。

空気が重い。

その時だった。

アキラが何気なく言う。


「じゃあ」


全員が見る。


「会えない間のお菓子、いっぱい置いていこうか?」


沈黙。

次の瞬間。

リリアナ。


「天才ですか?」


魔王。


「天才だな」


執事。


「天才ですね」


大魔導師。


「天才ですな」


アキラ。


「え?」


急に絶賛された。

その後。

異世界では前代未聞の国家事業が始まった。


『アキラお菓子備蓄計画』


魔王城の地下倉庫。

ポテトチップス。

山。

チョコレート。

山。

グミ。

山。

ラムネ。

山。


兵士たち。


「戦争ですか?」



「違う」


「食糧危機ですか?」


「違う」


「じゃあ何ですか」


「アキラ不足対策だ」


兵士たち。


「なるほど」


納得した。


そして数日後。

現実世界。

研究者たちがついに結論を出す。


『異常現象は消失した』


境界の修復が始まっていた。

それは良いこと。

だけど。

少しだけ寂しいことでもあった。


その夜。

アキラは最後のお茶会に呼ばれる。

豪華なケーキ。

豪華な料理。


そして。

少しだけ無理して明るく振る舞うリリアナ。

アキラは気付いていた。

きっと魔王も。

でも誰も言わない。


最後だから。

最後くらい。

笑っていたかった。

お茶会は夜遅くまで続いた。

帰る時間。

魔法陣が光る。

リリアナが言う。


「また会いましょう」


「うん」


「絶対ですよ」


「うん」


少しだけ沈黙。

そして。


「もし会えなくても」


リリアナは笑う。


「ポテトチップスを見るたびに思い出します」


アキラは吹き出した。


「それ絶対僕じゃなくてポテトチップスだよね」


「半分くらいは」


「半分なんだ」


魔王まで笑った。

寂しいのに。

なぜか笑えてしまう。

そんな別れだった。


魔法陣の光が強くなる。

アキラは最後に手を振る。

リリアナも。

魔王も。

執事も。

兵士たちまで振っていた。


そして。


光が世界を包む。

アキラの姿が消えた。

静かになった魔王城で。

リリアナはぽつりと呟く。


「……またお茶しましょうね」


誰に聞かせるでもなく。

優しく。

とても優しく。

そう呟いたのだった。

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