第6話 「謎の美少女を追え!」
第6話 「謎の美少女を追え!」
翌日。
現実世界。
アキラはいつものようにのんびり歩いていた。
コンビニで買った肉まんを片手に。
「平和だなぁ」
本人は気付いていない。
全然平和ではない。
実は昨日。
リリアナを見かけた人物がいた。
それはアキラの幼なじみ。
ソウマだった。
面倒見が良くて頼りになる。
アキラとは昔からの付き合い。
そして。
妙に勘が鋭い。
昨日のこと。
商店街で偶然アキラを見かけたソウマは固まった。
「ん?」
アキラの隣にいる超絶美人。
銀髪。
整った顔立ち。
気品ある雰囲気。
明らかに普通じゃない。
そして聞こえてきた。
「アキラ!」
「なに?」
「ぽてとちっぷす買ってもいいですか!?」
「いいよ」
「やったー!」
ソウマ。
「誰?」
その後。
ソウマは一晩考えた。
考えた結果。
結論が出た。
「分からん」
そして今。
ソウマはアキラの前に立っていた。
「アキラ」
「ソウマ」
「昨日一緒にいた人誰だ」
「リリアナさん」
「誰だ」
「リリアナさん」
「だから誰だ」
会話が進まない。
アキラは少し考える。
説明しようとして。
やめた。
「友達だよ」
「絶対違う」
即答だった。
ソウマは確信している。
アキラに限って隠し事は珍しい。
つまり。
言えない理由がある。
「まあいい」
「うん」
「そのうち分かるだろ」
「そうかも」
実際その通りだった。
なぜなら。
リリアナ本人がまた来る気満々だからである。
その日の夜。
異世界。
魔王城。
リリアナは上機嫌だった。
「アキラ」
「なに?」
「現実世界のお菓子ランキングを作りました」
「ランキング?」
机の上には紙。
真面目に書かれている。
第一位 ポテトチップス
第二位 チョコレート
第三位 プリン
第四位 グミ
第五位 ラムネ
「本気だ」
「本気です」
すると。
魔王がやって来た。
「何をしている」
「ランキングです」
「仕事しろ」
しかし。
魔王も紙を見る。
「ふむ」
「あなたも参加しますか?」
「参加しない」
数秒後。
「第一位はポテトチップスだな」
「参加してる!」
夫婦で議論が始まった。
アキラは笑った。
以前よりも二人が仲良くなっている。
そんな気がした。
その時。
城の外から悲鳴が聞こえた。
「大変です!」
兵士が飛び込んでくる。
「魔獣が出ました!」
空気が変わる。
魔王が立ち上がる。
リリアナも真剣な表情になる。
アキラは初めて見た。
魔王夫妻の本来の姿を。
「場所は」
「北の森です!」
魔王はマントを翻した。
「リリアナ」
「ええ」
その瞬間。
凄まじい魔力が城を包む。
窓が震える。
床が揺れる。
アキラ。
「すごい……」
普段はお茶会ばかりしている。
ポテトチップスで盛り上がっている。
でも。
この二人は本当に魔界の頂点なのだ。
「アキラ」
リリアナが振り返る。
「少し留守にします」
「うん」
「帰ってきたらお茶にしましょう」
緊張感が一瞬で消えた。
「分かった」
「ケーキも食べましょう」
「うん」
魔王は少し笑った。
「行くぞ」
「はい」
そして二人は飛び立った。
夜空へ。
その姿は圧倒的だった。
まるで伝説そのもの。
アキラは城のバルコニーから見送る。
すると隣にいた老執事がぽつりと呟いた。
「奥様があれほど楽しそうに笑うようになったのは、アキラ様のおかげです」
「僕?」
「ええ」
執事は優しく微笑んだ。
「以前の奥様は、とてもお優しい方でしたが、少し寂しそうでした」
アキラは黙って聞く。
「魔王様も同じです」
遠くの夜空を見る。
「お二人とも立場がある」
「うん」
「だから普通の時間が少なかったのです」
アキラは少し考えた。
そして。
「じゃあこれからも遊びに来ようかな」
執事は笑った。
「ぜひお願いします」
その頃。
北の森では。
魔王とリリアナが巨大な魔獣と戦っていた。
そして戦闘中。
「終わったらポテトチップスを食べましょう」
「今その話をするな!」
大爆発。
魔獣撃破。
兵士たち。
(いつもの奥様だ……)
と妙に安心したのであった。
そして数日後。
アキラの周囲で。
少しずつ不思議な出来事が起き始める。
それは。
異世界の存在が。
少しずつ現実世界へ近付いている兆候だった。
まだ誰も知らない。
その中心にいるのが。
おっとりマイペースなアキラだということを。




