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第5話 「リリアナのお願い」

第5話 「リリアナのお願い」


数日後。

アキラはスーパーとコンビニを何軒も回っていた。


目的はもちろん。

異世界用のお菓子である。


ポテトチップスだけでも大量。

チョコレートも大量。

グミも大量。


店員さんから、


「パーティーですか?」


と聞かれるレベルだった。


「うーん、まあそんな感じかな」


嘘は言っていない。

たぶん。

その夜。

魔法陣が現れる。


ピカァァァァァッ!!


魔王城。

到着した瞬間。

リリアナが走ってきた。


「アキラ!」


「こんにちは」


「来ましたね!」


「うん」


「待ってました!」


「お菓子?」


「それもあります!」


「それも?」


リリアナの様子が少し違う。

どこかそわそわしている。

珍しく落ち着きがない。


お茶会が始まった。

大量のお菓子が並ぶ。

兵士たちが遠くから羨ましそうに見ている。

もはや恒例行事だった。

リリアナはチョコレートを食べながら言った。


「アキラ」


「うん?」


「お願いがあります」


「なに?」


「断ってもいいですよ」


「うん」


「でもできれば聞いてほしいです」


「分かった」


リリアナは少しだけ言いにくそうな顔をした。

そして。


「現実世界を見てみたいです」


沈黙。

アキラ。


「え?」


リリアナ。


「えへへ」


魔王。


「は?」


魔王が勢いよく立ち上がった。


「待て待て待て」


「なんです?」


「なんですではない!」


「行ってみたいのです」


「お前は魔王の妻だぞ!?」


リリアナはむくれた。


「だって」


「だってじゃない」


「ポテトチップスの国を見てみたいんです」


「日本をそう呼ぶな」


アキラは少し笑った。

確かに気持ちは分かる。

異世界の人から見れば未知の世界だ。

興味が湧くのも当然だった。


すると。


突然。

部屋の隅にいた大魔導師が口を開く。


「理論上は可能です」


全員が振り向く。


「え?」


「行けるの?」


リリアナの目が輝いた。

大魔導師は頷く。


「短時間ならば」


「本当ですか!?」


「ただし条件があります」


全員が耳を傾ける。


「目立たないこと」


「はい」


「騒ぎを起こさないこと」


「はい」


「現実世界を征服しようとしないこと」


「しません!」


即答だった。

魔王が頭を抱えた。

嫌な予感しかしない。


翌週。


準備が整った。

魔法陣が完成する。


リリアナは普段のドレスではなく。

現代風の服を着ていた。

白いブラウス。

黒いスカート。

長い銀髪はリボンでまとめている。


挿絵(By みてみん)


かなり目立つ。


「大丈夫かな」


アキラが呟く。


「大丈夫です!」


「本当に?」


「たぶん!」


「不安になってきた」


そして。


ピカァァァァァッ!!


現実世界。

アキラの家。

リリアナは目を輝かせた。


「すごい!」


「静かでしょ?」


「建物が綺麗!」


「普通の住宅街だよ」


「感動しました!」


窓から外を見る。

車が通る。

リリアナは固まった。


「ドラゴンがいないのに動いてる」


「車だからね」


「魔力は?」


「ないよ」


「えっ」


異世界人には衝撃だった。

その後。

アキラは近所を案内することになった。


商店街。

公園。

本屋。


リリアナは全部に感動している。


しかし。

事件は突然起きた。

二人が公園を歩いていると。

小さな女の子が泣いていた。

五歳くらい。

迷子らしい。

リリアナは慌てて駆け寄る。


「どうしたのですか?」


「お、お母さんがいない……」


女の子は泣いている。

アキラもしゃがみ込んだ。


「大丈夫だよ」


「うぅ……」


「一緒に探そうか」


すると。

女の子がリリアナを見上げた。


「お姉ちゃんきれい……」


リリアナは固まった。

数秒後。

顔を真っ赤にした。


「お、お姉ちゃん!?」


「うん!」


「お姉ちゃん……」


「きれい!」


リリアナは完全にノックアウトされた。

魔王城では恐れられる存在。

伝説級の魔族。

だが今。


「お姉ちゃん」


の一言で機能停止していた。

アキラは思った。


(リリアナさん、意外とちょろいなぁ)


そして数分後。

無事に母親が見つかった。

女の子は笑顔で手を振る。


「お姉ちゃんありがとう!」


「はいっ!」


満面の笑みだった。

その夜。

異世界へ帰還したリリアナは。

魔王に報告していた。


「あなた」


「なんだ」


「現実世界は素晴らしいです」


「そうか」


「あと私、お姉ちゃんになりました」


「意味が分からん」


魔王は理解を諦めた。

最近それが増えている。

そしてリリアナは嬉しそうに呟く。


「また行きたいですね」


一方その頃。

アキラは知らなかった。

現実世界でリリアナを見かけた人物が一人いたことを。


そしてその人物が。

後にとんでもない騒動を巻き起こすことを。

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