第4話 「ポテトチップス戦争」
第4話 「ポテトチップス戦争」
数日後。
アキラはコンビニで買い物をしていた。
カゴの中には大量のお菓子。
ポテトチップス。
チョコレート。
グミ。
ラムネ。
クッキー。
店員さんに少し驚かれるレベル
「これだけあれば喜んでくれるかなぁ」
そんなことを呟いた瞬間。
足元に魔法陣が現れた。
「タイミングいいなぁ」
ピカァァァァァッ!!
魔王城。
到着した瞬間。
リリアナがいた。
「アキラ!」
「こんにちは」
「持ってきましたか!?」
「持ってきたよ」
「やったー!」
奥様とは思えない反応だった。
後ろのメイドたちは微笑ましそうに見ている。
お茶会のテーブル。
アキラは袋を並べた。
「まずはこれ」
「おお……」
「ポテトチップス」
「ぽてとちっぷす……」
まるで伝説の秘宝を見る目だった。
袋を開ける。
パリッ。
リリアナは一枚摘まむ。
恐る恐る口へ。
パリッ。
沈黙。
数秒。
十秒。
十五秒。
「なにこれ」
「え?」
「なにこれぇぇぇぇぇ!?」
立ち上がった。
椅子が倒れた。
メイドが慌てる。
「塩味!」
「うん」
「軽い!」
「うん」
「止まらない!」
「うん」
「危険です!!」
「お菓子だよ!?」
その後。
リリアナは無言になった。
ひたすら食べている。
パリパリパリパリ。
パリパリパリパリ。
恐ろしい速度だった。
そこへ。
魔王がやって来た。
「何を騒いでいる」
「あなた!」
リリアナが叫ぶ。
「食べてください!」
「なんだこれは」
「いいから!」
魔王は一枚食べた。
パリッ。
沈黙。
もう一枚。
パリッ。
さらに一枚。
パリッ。
「うまいな」
「でしょう!!」
夫婦の意見が一致した。
珍しい出来事だった。
城中に衝撃が走る。
その日の夕方。
問題が起きた。
兵士の一人がポテトチップスを食べたのである。
「うまっ!」
別の兵士も食べる。
「なにこれ!」
さらに広まる。
「俺にもくれ!」
「ずるい!」
「一枚!」
「半分!」
「欠片でもいい!」
翌日。
魔王城では。
ポテトチップス不足が発生した。
会議室。
魔王。
リリアナ。
大臣たち。
真面目な顔で座っている。
議題。
『ポテトチップスについて』
「現在の備蓄は?」
「残り三袋です」
「少ないな」
「深刻です」
「深刻なの!?」
アキラだけ驚いていた。
大臣が説明する。
「兵士たちが仕事中にポテトチップスの話しかしません」
「そんなに?」
「はい」
「重症だ」
その時。
リリアナが真顔で言った。
「アキラ」
「うん?」
「お願いがあります」
「なに?」
「今度もっと持ってきてください」
「買えるだけ買うね」
「ありがとうございます!」
深々と頭を下げた。
魔王の妻が。
ポテトチップスのために。
お茶会の後。
アキラは庭園を歩いていた。
すると。
例の黒狼が駆け寄ってくる。
「こんにちは」
黒狼は嬉しそうに尻尾を振る。
アキラは頭を撫でた。
「相変わらず懐いてるな」
後ろから声がした。
振り返る。
魔王だった。
珍しく一人である。
「この子の名前ってあるの?」
アキラが聞く。
「クロガネだ」
「クロガネ」
黒狼は尻尾を振る。
どうやら気に入っているらしい。
魔王は少し笑った。
「不思議なやつだな」
「僕?」
「ああ」
「そうかな?」
「リリアナがあんなに笑うようになった」
魔王は庭を見渡した。
以前の城は静かだった。
どこか冷たかった。
だが今は違う。
笑い声が増えた。
兵士たちの表情も明るい。
「ありがとう」
魔王がぽつりと言った。
「え?」
「妻と仲良くしてくれて」
アキラは少し照れた。
「僕も楽しいから」
「そうか」
魔王は穏やかに笑った。
その頃。
リリアナはメイドと話していた。
「奥様」
「なんです?」
「アキラ様のこと、本当に気に入っておられますね」
リリアナは少し考える。
そして優しく笑った。
「ええ」
「弟みたいで可愛いのです」
しかし。
その発言を偶然聞いた兵士たちは勘違いした。
「弟!?」
「家族認定だ!」
「ついに養子になるのか!?」
「人間なのに!?」
噂は一瞬で広がった。
もちろん。
アキラ本人は何も知らない。
そして帰宅の時間。
魔法陣が現れる。
「またね」
「はい!」
「次はお菓子いっぱい持ってきてね!」
「了解」
こうしてアキラは現実世界へ帰った。
だが彼はまだ知らない。
次に異世界へ行った時。
リリアナから、とんでもないお願いをされることを。
そのお願いは。
魔王ですら止められない内容だった。




