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後日談・中編 「変わらない時間」

中編「変わらない時間」


一年ぶりのお茶会。

最初は近況報告から始まった。


「現実世界はどうでしたか?」


リリアナが身を乗り出して聞く。


「普通だったよ」


「普通とは?」


「朝起きて」


「はい」


「仕事行って」


「はい」


「帰って寝る」


「つまらないです!」


即答だった。

アキラは笑う。


「そんなことないよ」


「絶対つまらないです」


「決めつけないでよ」


一年ぶりなのに。

会話のテンポは変わらなかった。


その後。

リリアナは一年間で集めた現実世界のお菓子ランキングを見せてきた。


なんと。

冊子になっていた。


「何してるの!?」


「研究成果です」


「研究?」


「第三十二回ポテトチップス総会議事録もあります」


「総会開いてたの!?」


魔王は遠い目をしていた。


「止めたのだがな」


「止まらなかったんだ」


「止まらなかった」


夫婦の力関係が少し見えた。


昼を過ぎ。

気付けば夕方。

それでも話は終わらない。

アキラは現実世界の写真を見せた。


桜。

商店街。

夜景。

コンビニの新商品。

リリアナは全部に反応した。


「これは?」


「桜」


「綺麗です」


「これは?」


「期間限定プリン」


「限定!?」


そっちだった。


一方。

アキラも異世界の話を聞く。

兵士たちの失敗談。

新しく生まれたドラゴン。

クロガネの近況。


なんと。

クロガネは太ったらしい。


「なんで?」


「ポテトチップスです」


「お前もか」


クロガネは庭の隅で寝ていた。

確かに丸くなっていた。


「久しぶり」


アキラが頭を撫でる。

クロガネは嬉しそうに尻尾を振った。

その勢いで兵士が吹き飛んだ。


「ぎゃあああ!」


「大丈夫?」


「いつものことです!」


大丈夫らしい。


夕方。

お茶会はまだ続いていた。

気付けばテーブルの上のお菓子はほとんど消えている。


誰が食べたのか。

主にリリアナだった。

魔王も結構食べていた。

執事は静かに補充していた。

完璧だった。


窓の外を見る。

紫色の空が夕焼けに染まっている。

綺麗だった。

アキラは少しだけ懐かしい気持ちになる。


一年前。

ここでお別れした。

あの時は。

もう会えないかもしれないと思った。

でも。

今はこうして笑っている。

不思議なものだ。


「アキラ」


リリアナが呼ぶ。


「ん?」


「どうかしましたか?」


「いや」


アキラは笑った。


「楽しいなって思って」


リリアナは一瞬だけ目を丸くする。

そして。

優しく笑った。


「私もです」


魔王も頷く。


「同感だ」


執事も微笑んだ。


「本当に」


穏やかな時間だった。

どれだけ話したのか分からない。

何を話したのか全部は覚えていない。

でも。

楽しかった。

それだけは確かだった。


そんな時。

足元がふわりと光る。

アキラは気付く。


「あ」


魔法陣だった。

帰る時間。

一年ぶりに再会できた。

でも。

時間は止まってくれない。

リリアナも気付いた。

笑顔が少しだけ寂しそうになる。

魔王も黙る。

執事も静かになる。

部屋が少しだけ静かになった。


アキラは立ち上がる。


「そろそろ帰るね」


「……はい」


リリアナは頷く

去年の別れとは違った。

誰も泣きそうな顔をしていない。


なぜなら。

もう知っているから。

会える

また会えると。

分かっているから。


それでも。

少しだけ寂しい。

そんな絶妙な空気だった。

魔法陣の光が少しずつ強くなる。

そして。

リリアナが立ち上がった。


「アキラ」


「ん?」


「最後に一つだけ」


なぜか真面目な顔だった。

アキラは首を傾げる。

リリアナは深呼吸して。

そして。


「次来る時」


「うん」


「ポテトチップスお願いします」


「やっぱりそれかー!!」


魔王が吹き出した。

執事も笑った。

兵士たちまで笑っていた。

しんみりした空気が全部吹き飛んだ。


リリアナも笑う。

いつもの笑顔だった。

魔法陣の光がさらに強くなる。

アキラは思わず笑いながら手を振った。


「また来るよ」


「はい!」


「今度はもっと早く来てください!」


「努力する」


そして。

光がアキラを包み込んだ。

一年ぶりの再会。


楽しかった一日。

その終わりが近付いていた。

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