後日談 ・後編「また来るよ」
後編 「また来るよ」
光がアキラを包み込む。
見慣れた感覚だった。
ふわりと身体が浮く。
紫色の空。
魔王城。
リリアナ。
魔王。
執事。
みんなの姿が少しずつ遠ざかる。
最後に見えたのは。
満面の笑みで手を振るリリアナだった。
「また来てくださいー!」
「うん!」
「絶対ですよー!」
「分かってるって!」
そして。
ピカァァァァァッ!!
視界が白く染まる。
次に目を開けた時。
そこは自分の部屋だった。
見慣れた天井。
見慣れた机。
見慣れたカーテン。
だけど。
今は少しだけ違って見えた。
「帰ってきたなぁ」
アキラはベッドに腰を下ろす。
楽しかった。
本当に楽しかった。
一年ぶりとは思えないほど。
自然だった。
まるで昨日も会っていたみたいに。
時間なんて感じなかった。
アキラはふと笑う。
「ポテトチップスかぁ」
最後までそれだった。
本当に変わらない人たちだ。
すると。
コンコン。
部屋のドアが鳴る。
もちろん異世界ではない。
ソウマだった。
「いるかー?」
「いるよー」
ソウマが入ってくる。
そして。
アキラの顔を見る。
数秒。
「なんかいいことあったな」
「分かる?」
「分かる」
長い付き合いだった。
アキラは少し笑う。
「友達に会えたんだ」
「遠くにいる友達か」
「うん」
ソウマは頷く。
それ以上は聞かない。
昔からそうだった。
聞いてほしい時は聞く。
言いたくない時は聞かない。
心地良い距離感だった。
「よかったな」
「うん」
本当に。
良かった。
その夜。
異世界。
魔王城。
お茶会が終わったテーブル。
いつもなら片付けが始まる時間。
でも。
リリアナはまだ席に座っていた。
テーブルには空になったティーカップ。
食べ終わったケーキ。
そして。
楽しそうな時間の余韻。
「帰りましたね」
執事が言う。
「はい」
リリアナは微笑む。
寂しそうではなかった。
むしろ。
どこか満たされた顔だった。
「どうでしたか?」
「楽しかったです」
即答だった。
執事も笑う。
「それは何よりです」
すると。
隣に魔王が座った。
「随分機嫌が良いな」
「良いです」
「見れば分かる」
リリアナは窓の外を見る。
紫色の夜空。
たくさんの星。
一年前。
同じ場所で見送った。
あの時は不安だった。
もう会えないかもしれないと思った。
でも。
今は違う。
「また会えますから」
ぽつりと呟く。
魔王も頷いた。
「ああ」
「今度は一年も待たなくて済みそうです」
「その予定だ」
すると。
リリアナが少し考える。
そして。
「次は現実世界へ遊びに行きたいです」
魔王。
「またか」
「だめですか?」
「だめとは言っていない」
「やった!」
即復活だった。
魔王は苦笑する。
本当に分かりやすい。
その時。
クロガネが庭からやって来た。
のそのそ。
のそのそ。
以前より少し大きい。
というより。
少し丸い。
「太ったな」
魔王。
クロガネ。
目を逸らす。
図星だった。
リリアナが笑う。
「あなたも次はアキラに会えるといいですね」
クロガネは嬉しそうに尻尾を振った。
その勢いで庭の植木が一本倒れた。
「ぎゃあああ!」
遠くで庭師の悲鳴が聞こえる。
いつもの魔王城だった。
変わらない。
でも。
確かに変わった。
少しだけ明るくなった。
少しだけ笑顔が増えた。
そして。
その中心には。
一人のおっとりした青年がいた。
現実世界。
アキラは窓を開ける。
夜風が気持ちいい。
空を見上げる。
遠く。
見えないくらい遠く。
きっと異世界がある。
そこで今頃。
リリアナは笑っている。
魔王は呆れている。
執事は紅茶を淹れている。
そんな気がした。
アキラは小さく笑う。
そして。
机の上に置いてあったメモ帳を開く。
そこに一言だけ書いた。
『次行く時はポテトチップスを忘れない。』
数秒後。
自分で見て吹き出した。
「僕もだいぶ影響されてるなぁ」
静かな夜だった。
でも。
どこか温かい夜だった。
物語はここで終わる。
だけど。
アキラたちの日常は続いていく。
お茶会も。
笑い声も。
きっとこれから先も。
何度でも。
いっぱいある作品の中から見つけて
読んでくださってありがとうございます!!
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