表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
11/14

後日談 前編「一年ぶりのお茶会」

後日談 「一年ぶりのお茶会」


あの日から一年が経った。

春。

暖かな風が吹く午後。


アキラはいつものように自宅でのんびりしていた。

ソファに寝転がりながらスマホを見ている。

相変わらずマイペースだった。


ただ一つ。

変わらないことがある。

時々。

机の引き出しを開けること。


そこには。

リリアナからもらった手紙。

金貨。

そして思い出の数々。


「元気かなぁ」


一年経った今でも。

時々そう思う。

もちろん。

もう寂しくはない。

きっと元気にしている。


リリアナも。

魔王も。

執事も。

兵士たちも。

そんな気がしていた。


その時だった。

足元が光る。


ピカッ。


アキラは固まった。


「……え?」


見覚えがある。

絶対にある。

忘れるはずがない。

魔法陣だった。


数秒。

アキラは動けなかった。


「え」


光が強くなる。


「えぇ!?」


一年ぶり。

本当に一年ぶりの光。

そして。


ピカァァァァァッ!!


懐かしい浮遊感。

視界が白く染まる。

そして。

ゆっくりと目を開ける。


紫色の空。

巨大な城。

懐かしい景色。

魔王城だった。


「戻ってきた……」


思わず呟く。


その瞬間。

遠くから誰かが走ってくる。

全力だった。

ものすごい勢いだった。

兵士たちが慌てて追いかけている。


「奥様落ち着いてください!」


「走らないでください!」


「危ないです!」


しかし止まらない。

銀色の髪が揺れる。

黒いドレスが翻る。


そして。


「アキラぁぁぁぁぁ!!」


リリアナだった。

アキラは目を見開く。

一年ぶり。

本当に一年ぶりだった。


リリアナは走る。

全力で走る。

その顔は。

泣きそうだった。


でも。


とても嬉しそうだった。

今にも涙がこぼれそうなのに。

笑っている。

そんな顔だった。


そして。


勢いそのままに。

ぎゅっ。

アキラを抱きしめた。


「うわっ!?」


アキラが少しよろける。

リリアナは離れない。

ぎゅうっと抱きしめたまま。


「本当に……」


声が震えている。


「本当に来ました……」


アキラは少し困ったように笑った。


「来たよ」


「一年です」


「うん」


「長かったです」


「うん」


「本当に長かったです……」


少しだけ涙声だった。

アキラは優しく笑う。


「ただいま」


その一言で。

リリアナの目から涙がぽろっと落ちた。


でも。


次の瞬間には笑っていた。


「おかえりなさい!」


満面の笑みだった。

その後ろから。

ゆっくり歩いてくる人影。


魔王だった。

相変わらず大きい。

相変わらず威圧感がある。


でも。


少しだけ笑っていた。


「久しぶりだな」


「魔王様」


「一年ぶり!」


「うん」


魔王は頷く。

そして。

ぽつりと。


「元気そうで良かった」


それだけ言った。

でも。

それだけで十分だった。

一年分の言葉が詰まっていた。


その頃。

兵士たち。


「帰ってきた……」


「アキラ殿だ……」


「本物だ……」


「ポテトチップスの人だ……

最後だけおかしい。

そして。

執事も現れた。

相変わらず完璧な執事である。


しかし。


珍しく少しだけ笑顔だった。


「お待ちしておりました」


「ただいま」


「おかえりなさいませ」


なんだか家に帰ってきたみたいだった。


その後。

当然のように。

お茶会が始まった。

一年ぶりのお茶会。


ケーキ。

クッキー。

紅茶。

そして。

大量のポテトチップス。


「増えてる」


アキラが言う。


「増やしました」


リリアナ。


「倉庫一つ使ってるぞ」


魔王。


「何してるの!?」


一年ぶりなのに。

会話は何も変わっていなかった。

それが嬉しかった。

リリアナはケーキを食べながら笑う。


「アキラ」


「なに?」


「今日はいっぱい話しましょう」


「うん」


「一年分です」


「長くなりそうだね」


「覚悟してください」


魔王も頷く。


「私も聞きたいことが山ほどある」


執事までメモ帳を出した。


「え?」


アキラは思った。


(帰れるかな……)


そして。

魔王城には久しぶりに。

大きな笑い声が響いた。

一年前と同じ。


いや。


一年前よりももっと温かい。

そんなお茶会だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ