10話 「またお茶しましょう」
10話 「またお茶しましょう」
秋が過ぎ。
冬が過ぎ。
そして春が来た。
アキラの日常は変わらなかった。
朝起きて。
学校や仕事へ行って。
帰宅して。
のんびり過ごす。
普通の日々。
だけど。
たまに空を見上げることがあった。
紫色の空じゃない。
いつもの青空。
それでも。
ふと思い出してしまう。
魔王城。
お茶会。
リリアナ。
魔王。
執事。
兵士たち。
「元気かなぁ」
そう呟くことも少なくなった。
寂しくなくなったわけじゃない。
ただ。
少しずつ受け入れられるようになっただけだ。
そして。
春のある日。
アキラは帰り道を歩いていた。
コンビニ袋を片手に。
中身は。
もちろんポテトチップス。
完全に影響されていた。
「リリアナさん見たら喜びそう」
そう笑った瞬間だった。
足元が光る。
ピカッ。
アキラは止まった。
「え?」
見覚えがある。
絶対にある。
魔法陣だった。
「えええええ!?」
慌てるアキラ。
しかし。
魔法陣は以前より小さい。
ゆっくり。
そして。
ぽん。
何かが出てきた。
紙だった。
「紙?」
アキラは拾い上げる。
そこには。
見覚えのある文字。
リリアナの字だった
――――――――――――――――――
アキラへ
境界の修復が終わりました。
でもまだ不安定なので、人は通れません。
残念です。
とても残念です。
本当に残念です。
あとポテトチップスも残り少ないです。
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「最後いらないよね!?」
思わずツッコんだ。
何も変わっていなかった。
続きを読む。
――――――――――――――――――
でも元気にしています。
魔王城のみんなも元気です。
あなたのおかげで楽しい思い出がたくさんできました。
ありがとうございます。
――――――――――――――――――
アキラは少しだけ笑った。
そして。
少しだけ目が熱くなった
続きを読む
――――――――――――――――――
またいつか。
世界が繋がったら。
一緒にお茶をしましょう。
最後に。
追伸
あなたが持ってきたポテトチップスランキングは今でも更新中です。
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「まだやってるんだ」
思わず吹き出した。
その瞬間。
魔法陣が再び光る。
今度は少しだけ強く。
そして。
聞こえた。
本当に一瞬だけ。
かすかに。
「アキラー!」
リリアナの声だった。
アキラは目を見開く。
「リリアナさん!」
光の向こう。
見えない。
でも。
聞こえる。
「聞こえますかー!」
「聞こえるよ!」
「ポテトチップス送ってくださいー!」
「それかー!!」
最後までそれだった。
アキラは大笑いした。
そして。
向こうから。
魔王の声も聞こえる。
「私の分も頼む!」
「魔王様まで!?」
さらに。
執事。
「チョコレートもお願いします」
「執事さんまで!?」
もうめちゃくちゃだった。
でも。
その声を聞けただけで。
十分だった。
本当に。
十分だった。
光は少しずつ薄れていく。
最後の時間。
リリアナが言う。
「アキラ」
「うん」
「ありがとう」
優しい声だった。
昔みたいな。
お茶会の時の声。
「こちらこそ」
アキラも笑う。
「楽しかったよ」
少し沈黙。
そして。
リリアナが笑った。
「またお茶しましょう」
「うん」
「絶対ですよ」
「絶対」
光が消える。
魔法陣も消える。
静かな帰り道。
でも。
アキラはもう寂しくなかった。
だって。
終わりじゃないから。
少し離れているだけだ。
また会える。
いつかきっと。
アキラは空を見上げた。
春の空だった。
そして。
コンビニ袋からポテトチップスを取り出す。
一枚食べる。
パリッ。
「うん」
少し笑う。
「今度はもっと持っていくね」
誰もいない空へ向かって。
そう呟いた。
遠く離れた異世界では。
その瞬間。
なぜかリリアナがくしゃみをした。
「はくしゅん!」
魔王。
「どうした」
「今アキラがポテトチップスの話をした気がします」
「気のせいだ」
「いえ絶対です」
執事。
「きっとそうですね」
誰も否定しなかった。
魔王城は今日も平和だった。
そして。
現実世界も。
平和だった。
これは。
異世界と現実世界を行き来した。
一人のおっとりした青年と。
魔王の妻のお茶会から始まった。
少し不思議で。
少し笑えて。
少し切なくて。
とても温かい物語。
本編はこれで終わりになります
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