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勇者の塔  作者: 正十郎
29/30

第二九話 冷たい風

~~~~~レオを助けた後に戻ります~~~~~


「レオ・・・・・」


レオが放心した顔でこちらを見ている。それはそうだろう。


力を得た事を黙っていただけに、何とも間が悪い。


少しの時間の経過と共に、レオが現実に帰ってきたようだ。


「どういうことだよ!」


レオが詰め寄ってくるのも尤もだ。


「黙っていてごめん・・・・」


僕が言えるのはそこまでだった。


冷たい風が二人の間を吹き抜け、お互いの距離を離していくのがわかる。


「お前が協力したら、リトランさんは死ななかったんじゃないのか!」


やはりレオは僕が力を持っている事を黙っていた事よりも、できる事をやらなかった事に怒りを覚えている。


そうだ。僕には勇気がなかった。深紅も確実に倒せるとは限らない。


「そうかもしれない・・・・」


顔が上がらない。レオの目を見るのがとても辛い。


「もし、その力を俺が知って、俺が嫉妬するとでも思ったのか!喜びこそすれ、妬むような事はしない!」


それも知っている。ただレオを危険な目に合わせたくなかった。


「すまない。でも見ただろ!凄く危険なんだ!僕でも死ぬかもしれない!レオなんてもっと危険だ!」


「お前は俺を何だと思ってんだ!お荷物か?ずいぶんと偉くなったな!」


「そうじゃない!」


自分の声が届かない事がわかる。


「うるさい!もうこれ限りだ。気を遣われる友達なんてゴメンだ!」


「待ってくれ!」


レオは町に向かって走っていく。でも僕にはそれをすぐ追いかける事ができなかった。


痛いほどレオの気持ちが分かってしまったからだ。


僕が逆の立場でも、張り裂けそうな気持ちを味わうだろう。


結局、僕の足は二人の間の空気を振り切る事はできなかった。




夕方になり、町に帰るとレオの荷物は無かった。


携帯食料が半人前残され、旅に必要な道具が僕の分だけ残されている。


「行っちゃったな・・・・」


レオの信頼を傷つけた僕が、全て悪い事は分かっている。


唯後悔の念が僕の心を支配して、その日は動くことができなかった。




次の日、少しだけ心が持ち直した僕も、町を出ることを決めた。


町に残っていた数名の職員に、深紅を討伐した事を伝え、証明部位として前足両方と耳を渡した。


大層驚いていたが、色が深紅なので信用はして貰えたようだ。


森に同行し、深紅狼の死骸を確認した後、一時金として30万を受け取った。


領主に報告するまで2週間程町で待機して欲しいと言われたが、そんな気にはなれず、


その後町長の元に向かい、別れの挨拶とレオの消息を尋ねたが、何も知らないようだった。




それから、レオを探しながら故郷への帰路についたが、見つける事ができなかった。




立ち寄った町で手紙を残し、消息を伝えていたが、レオに届いているだろうか?


ひょっとしたら別の場所に向かっているのかもしれない。


新しく目標を見つけたかもしれない。


好きな女性ができて、恋に落ちているかもしれない。



僕のことも少しだけ心配しているかもしれない・・・



レオ・・・・


こんな事になるなら、僕は勇者の力なんて要らなかったよ・・・


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