第二九話 冷たい風
~~~~~レオを助けた後に戻ります~~~~~
「レオ・・・・・」
レオが放心した顔でこちらを見ている。それはそうだろう。
力を得た事を黙っていただけに、何とも間が悪い。
少しの時間の経過と共に、レオが現実に帰ってきたようだ。
「どういうことだよ!」
レオが詰め寄ってくるのも尤もだ。
「黙っていてごめん・・・・」
僕が言えるのはそこまでだった。
冷たい風が二人の間を吹き抜け、お互いの距離を離していくのがわかる。
「お前が協力したら、リトランさんは死ななかったんじゃないのか!」
やはりレオは僕が力を持っている事を黙っていた事よりも、できる事をやらなかった事に怒りを覚えている。
そうだ。僕には勇気がなかった。深紅も確実に倒せるとは限らない。
「そうかもしれない・・・・」
顔が上がらない。レオの目を見るのがとても辛い。
「もし、その力を俺が知って、俺が嫉妬するとでも思ったのか!喜びこそすれ、妬むような事はしない!」
それも知っている。ただレオを危険な目に合わせたくなかった。
「すまない。でも見ただろ!凄く危険なんだ!僕でも死ぬかもしれない!レオなんてもっと危険だ!」
「お前は俺を何だと思ってんだ!お荷物か?ずいぶんと偉くなったな!」
「そうじゃない!」
自分の声が届かない事がわかる。
「うるさい!もうこれ限りだ。気を遣われる友達なんてゴメンだ!」
「待ってくれ!」
レオは町に向かって走っていく。でも僕にはそれをすぐ追いかける事ができなかった。
痛いほどレオの気持ちが分かってしまったからだ。
僕が逆の立場でも、張り裂けそうな気持ちを味わうだろう。
結局、僕の足は二人の間の空気を振り切る事はできなかった。
夕方になり、町に帰るとレオの荷物は無かった。
携帯食料が半人前残され、旅に必要な道具が僕の分だけ残されている。
「行っちゃったな・・・・」
レオの信頼を傷つけた僕が、全て悪い事は分かっている。
唯後悔の念が僕の心を支配して、その日は動くことができなかった。
次の日、少しだけ心が持ち直した僕も、町を出ることを決めた。
町に残っていた数名の職員に、深紅を討伐した事を伝え、証明部位として前足両方と耳を渡した。
大層驚いていたが、色が深紅なので信用はして貰えたようだ。
森に同行し、深紅狼の死骸を確認した後、一時金として30万を受け取った。
領主に報告するまで2週間程町で待機して欲しいと言われたが、そんな気にはなれず、
その後町長の元に向かい、別れの挨拶とレオの消息を尋ねたが、何も知らないようだった。
それから、レオを探しながら故郷への帰路についたが、見つける事ができなかった。
立ち寄った町で手紙を残し、消息を伝えていたが、レオに届いているだろうか?
ひょっとしたら別の場所に向かっているのかもしれない。
新しく目標を見つけたかもしれない。
好きな女性ができて、恋に落ちているかもしれない。
僕のことも少しだけ心配しているかもしれない・・・
レオ・・・・
こんな事になるなら、僕は勇者の力なんて要らなかったよ・・・




