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勇者の塔  作者: 正十郎
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第三十話 入管審査

~~~~~1カ月後~~~~~



僕はマリー・ルーを探すため、ヴィオールの刑務所を目指している。


トールマンに貰った地図を見ると、もうすぐヴィオール周辺のはずだ。


塔を目指していた際には酷くきつかった旅路も、レオを探しながら安全マージンをとって尚、早く進むことができた。


あれから深紅がでたという話は聞かなかったが、赤については二度遭遇している。


赤は年に一度の災害として扱われるので、頻度を考えれば、存在値が魔獣よりの天秤に傾いているのだろう。


トールマンの危惧も的外れでないという事だ。



そんな事を考えながら道を進んでいると、遂にヴィオールの位置を示す地図標識を発見した。


「ここから8kmでヴィオールか・・・」


そういって標識が指す方向を見て驚愕した。



8km離れているのにヴィオールと思わしき物が見える。



巨大な石の塀に囲まれ、中心に非常に大きな建造物がある。


強く興味をそそられた僕は、これまでの疲れも何処へやら、町に向かって走りだした。



~~~~~ヴィオール到着~~~~~



「何だこれ・・・・・」


入口の堅牢な門の前に行列ができており、その周りに日本でいう祭りの露天のようなものが配置されている。


ここだけで僕の故郷より遥かに人が多い。


「なにか売ってるのかな・・・?」


賑わっている露天を回ってみると、ある事に気が付いた。


確かに、食事や土産物などの販売もあるようだ。だがこれは・・・


「兄さんは何の行商だい?」


カウンター越しに話しかけられた店は[武器買取屋]と記載されていた。


つまり、この露天の群れは行商の人達が町の中で売るであろう商品を、事前に買い取り、独自の販売経路で販売する人達なのだろう。


行商も、自分の足で売りに回って苦労するより、一括で買って貰えるこの露天で売る方がいいっていう事か。


まあ、その分割安に買われるんだろうけど。


「すみません、特に売れるものは無くて・・・」


「そうかい?兄さんは行商じゃないのかい?この町は初めて?」


「はい、ちょっと人を訪ねてきました。初めてです。」


田舎者でごめんなさい。


「そうか。あの入管の列に並んで、入管審査を受けて町に入るんだ。」


そう言って、買取屋のお兄さんが指した所は、やっぱり門の前の行列だった。


素直にその列に並び、半日以上が経過。日も落ちかけてきた頃、門の扉が閉まった。


「今日の入管審査はこれで終わりだ!明日の受付は日が登ってからだ!」


役人さんと思われる人が、そう叫んで消えていった。


「あれ?」


これ今日町に入れないんじゃ?そう思って野宿を覚悟すると、露天の店舗が大型のテントへと変わっていった。


そのテントには[宿泊所 1000G]と書かれている。


「なるほどね・・・・」


野宿には違いないが、有料でテントは借りられるという事か。


流石商人。無駄がない。


せっかくなので、テントに泊まる事を選択する。先程声を掛けてもらった買取屋のお兄さんを訪ねた。


「ああ、いらっしゃい!」


「お邪魔してもよろしいでしょうか?」


「ああ!もちろんさ、ありがとう!この旗を並んでいた場所に刺してからテントに入ってくれ。」


そういって旗を渡された。自分の並んでいた場所を明確にするための旗のようだ。


その旗を並んでいた場所に刺し、テントに入る。


「お疲れさま!」


「ははは、正直疲れましたね。ずっとこんな行列なのですか?」


「そうだね、この町は入管が厳しいからね。」


「そうなんですか?」


「そうか。この町は初めてだったね。町の外からでも見える大きな建物があるだろ?」


「ええ。」


「それがこの地方の刑務所でね。犯罪者が収容されてるのさ。だから入管も厳しいってわけ。」


「そうなんですね!それにしても大きな建物ですね・・・」


「ああ、それはね・・・・」


説明によると、あの刑務所はとても合理的に作られている。


そもそも最初は刑務所では無く[黄泉の大穴]と呼ばれる、魔物が湧いてしまう場所があり、そこから湧く魔物を外に逃がさないようにできた建物らしい。


最初はハンターを雇い魔物を駆除していたが、追いつかなくなって犯罪者にも魔物を処理させるようになったと。


そのうち其処の上層に収容所ができて刑務所となり、逆にハンターが其れをサポートするように変化していった。


また量刑の付け方も変わっていて、行った悪事の程度に対して、貢献ポイントが決定される。


執行については討伐した魔物、魔獣の数、特別依頼に対する貢献度などが総合的に評価され、献身ポイントが与えられる。


献身ポイントが貢献ポイントを達成して初めて、出所することができる仕組みとの事だ。


ただ、あまり出所した人は見た事が無いという怖い噂もあるらしい。



「明日も早いだろうから、今日はもう寝るといい。」


「はい、そうします。色々教えて頂きありがとうございました。」


そんな有用な情報を手に入れ、どうやってマリーを探すか考えながら、心地よい眠りに落ちた。



翌朝、店主にお礼を言い、お金を払って外にでる。


旗を返して並び続けると、ようやく僕の入管審査の順番が回ってきた。


牢屋のような審査をする場所に案内されると、綺麗な白衣の正装をしている入館審査官と思われる人が一人、他には其れをサポートするであろう黒服を着た人が二人と、棚にはギッシリ何かの本が詰まっている。


「ようこそヴィオールへ。今から入管審査を行う。」


「お願いします。」


「うむ。では名前と出身地を教えてくれ。」


「アレン・ハートです。出身はシマダ国クレオ村です。」


「こちらでも調べるが、犯罪歴があれば申し出てくれ。」


「ありません。」


そう言うと、黒服の内の一人が棚の本を調べだす。


「アレン・ハートの犯罪履歴はありません。」


了解。その本の中には過去の犯罪履歴が記載されているのか。


「よろしい。では次に、ヴィオールへの訪問目的を教えてくれ。」


「マリー・ルーを訪ねて来ました。彼女への伝言を預かっています。」


「わかった。しばし待つがよい。」


もう一人の黒服が部屋を出て、何かを調べに行った。しばらく経つとその黒服が戻ってきた。


「マリー・ルーという名前の者は、現在確かにヴィオールに滞在しています。」


そんな細かく調べるのか、厳重に審査してるんだな。


「よろしい。最後に確認するが、内部で不審な行動を起こすつもりはないな?」


「ありません。」


「よろしい。入管審査はこれで終了とする。ヴィオールへようこそ。」


よろしいが口癖の入管審査官に許可を貰ってヴィオールに入った時には、既に日が傾いていた。

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