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勇者の塔  作者: 正十郎
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第二四話 理解は人それぞれ


テストの後、一旦は休憩日となった。


辛い長旅と心無いテストの疲れが酷く溜まっていた事を察していただいた。


寝て、起きて、ご飯を貰ってを2回繰り返し、3回目の就寝に入ろうとしたが、


「じゃ、そろそろいくか。」


と声を掛けられてしまった。


そんな気やすい言葉で誘ってくるのはタールさんで、さてどこに誘われているかというと、次の階、つまり6階だ。


6階はタールさん管轄らしい。


「わかりました。此処まで来たのですから、もう次の階までは降りるなんて言いませんよ。お世話にもなっちゃったし。」


「そうだな、まあ最初はなんかあったら守ってやるから、安心しとけ。」


「危険から守ってくれるんですか?」


「ああ、そもそも俺達は公務員だが、塔を管理するための力はあるぞ。」


「そうなんですか?流石ですね。」


見た感じ筋肉凄いしな。戦場であの腕に捕まれたら、走馬灯のように過去を思い出すんだろう。


そんな話をしている内に6階についた。


「同じ形のフロアですね。」


「そうだな、まあ受付は俺だ。そして、あまり来ることはないな!」


「でしょうね。」


合格者が自分を含めて10人だからな。


「うむ。ではこれから早速強くなって貰おうと思う。」


「大体察しはつきますが、何をすればよいでしょうか?」


「赤いスライムの乱獲だ。手当たり次第やっつけろ。」


そういって扉に近づき、身分証をかざしている。


武器を抜き、気合を入れて待つ。


「まあ、そんな堅くなるな。このフロアはこれまで通りでいい。」


扉が開く。


するとそこには、ばかでかい運動場の中心で巨大なプールが赤く染まっているのが見えた。


近づいて確認すると、やっぱり赤いスライムがビッシリ詰まっていた。


巨大はプールには網が掛かっていて、スライムは外にでる事はできないようだ。しかし・・・


「グロイぃぃぃい!」


「慣れろ。とりあえず今からプールの水を抜く。知っている通り、水棲のスライムは地上では力を発揮できん。」


「ソウデスネ。」


「水から上がったスライムは概ね弱体化する。魔法には抵抗力があるから、剣で倒せ。何より魔法は回数撃てないからな。」


「僕は剣が苦手なのですが・・・」


「よし、いくぞ!」


「人の話を聞いて下さい!」


「俺はお前の後ろにいるから、何かあったら叫べよ!」


僕の話を無かった事にしたタールさんは、何かのボタンを押して、サッサとプールの水を抜いてしまった。


スライムを外界と隔離していた網の一部は取り外され、スライム一体が外にでる。一体が外に出た所で、再度網によって遮断された。


スライムは僕に向かって進行を始めたが、予想以上に緩慢な動きだ。これなら自分の剣でも当てる事が出来そうだ。


「よし倒せ!遠距離を保つと体液を飛ばされる。外に出た体液は強い毒だから気をつけろ。それと近距離だと体内に取り込もうとしてくる。」


じゃあどうしろと。


「取り込まれたら溶ける前に引きずりだしてやるから安心して行ってこい!」


選択肢の無い一本道を、タールさんの言葉を信じて特攻しかないということか。


「うおおおおぉぉぉおぉ・・・・・」


自分を鼓舞しながら記念すべき一体目に向かう。


両者の距離が近づくと、スライムは自分を体内に取り込もうと体当たりのような攻撃になるので、これを回避しつつ剣で攻撃する。


相手が立体楕円形なので、型もなにもないメッタ切りだ。


スライムの突撃、かわす、切る、スライムの突撃、かわす、切る・・・


暫く闘牛のような戦いをしていると、コツが掴めて来た。


「これで終わりだ!」


弱ったスライムにとどめを刺す。激闘の時間は20分を超えた。


なんとか勝った・・・・緊張が解け、疲れが押し寄せる。


思わずその場にへたり込んでしまう。


ふー、やっと休憩できる・・・・


「休んでる暇はないぞー!」


鬼軍曹の声と共に、今度は二体同時に放たれた。


双方が自分に向かってきている。




こんな時にはこれしかない。


大きく気合を入れて息を吸い、全身に力を漲らせる。




「タースケーテクーダサーイ!」




「ちょっとは頑張れよ!」


「無理です!死にます!」


そう叫ぶとタールさんがダッシュでやってきて、光の速さで一体を屠って元の位置に戻って行った。


「強っ!」


「最初だけな!サービスだ。残りの一体は自分で倒せ!一時間やったら休憩だ!」


「そんな持ちませんよ!」


必死な形相をしている僕を見ながら、確かにタールさんは呟いた。


「2匹イケると思ったんだけどな・・・・」




~~~~~~そんな感じで一週間~~~~~~~~




「そういえば、タールさんの故郷ってどこなんですか?」


そんな雑談をしながら、スライムの攻撃にカウンターを入れる。もう一撃で仕留められるようになった。


タールさんも後ろで全体を見通す必要もなくなり、近くで見物している。プールの網も開けっ放しだ。


「俺の故郷は戦争によって滅んでしまった。地図にも乗らないような所だ。おそらくアレンに言っても分からない。」


「出身地がですか?」


「そうだな。」


更に剣を振り、また一体のスライムが土に還る。いや、海か。


「国は残っていないかもしれませんが、タールさんは故郷に帰りたいと思いませんか?」


「一族はみんな戦争で死んでしまった。もう俺は愛する妻と子供の傍に居られればそれでいい。」


「奥さんとお子さんは何処に?」


「この塔に住んでいる。運営職員は俺達だけじゃないし、居住人数だって結構なもんだ。」


アレンが横にスライドするように動き、十字に剣を振る。今度は二体のスライムが海に還った。


「そうなんですか・・羨ましいですね・・・・」


家族と共に居られる喜びは大きなものだ。僕は一方的な別れを経験しているが、失って初めて一番大事なものである事に気が付かされた。


「お前だって女作ればいいじゃないか。」


「ふふふ・・・そう思って作れるのなら誰も苦労はしませんよ・・・」


僕から出る見えない黒いオーラでタールさんが引いている。


「・・・まあ、人それぞれだと言っておこう。」


「いいですよ別に。・・・あれ?」


スライムが来ない。毎日、夢に出るまで切り続けたスライムがピタリと止んだ。


「少し待っていろ。直ぐ戻る。」


そういってタールはプールを覗きにいった。プールサイドを一周確認して僕を呼ぶ。


「こっちに来てみろ!」


呼ばれたので行ってみると、そこには何も入っていない、空っぽの空間があった。


タールさんは労う様に、僕の肩を叩く。


「お疲れだったな。これでレベル1は終了だ。」


あの衝撃を受けたスライムプールはもうそこには無かった。


代わりに、空のプールがそこにあり、プールの底に「人間最強」と書いてある。


シャレか。シャレなのか。そしてつっ込み待ちか。


そんな事より、


「私は強くなったのでしょうか?」


「スライムとはいえ、赤をよそ見しながら苦手な剣で倒す事ができる。これで凡百であるわけなかろう。」


「強くなるには、もっと天稟と努力が必要なイメージがありました。」


「天稟はあるだろう。考え方、頭の回転も立派な才能だろが。もっと自分に自信を持てよ。」


そういってタールさんはニヒルな笑顔を浮かべている。


しかし、自分にはどうしても納得がいかない事があった。


「そういうものでしょうか?大して外見も変わってないように見えるのですが・・・・」


「ああ、それはな。存在値を取り込む事自体と、筋肉トレーニング等による肉体強化は直接関係ないからだ。」


「ですが、現に筋力が上がっています。」


筋力だけではない。相手の攻撃も見えるようになった。


「上がっているのは筋力じゃない。自分の存在を世界に示す力だ。存在値の蓄積による能力向上と筋肉は別次元だ。」


「じゃあ何故タールさんはそんなに筋肉があるんですか?」


「カッコイイだろ。」


「左様でございますね。」


つまり趣味か。


「とにかくこれでこのフロアは終了だ。よくやった。次のフロアはリリー担当の7階だ。」


「やめてください。ただでさえ命の危険を感じてるのに。正直、塔を降りようと思っています。」


「アレンなら大丈夫だ。そして必要もある。健闘を祈る。」


「是非根拠を伺いたいですね。」


そんな無責任感溢れる、大丈夫という言葉に反応してしまう。


「根拠?今まで7階で死んだ奴はいないからだ。危なかったって話を聞いたこともない。」


そうなのか!リリさんが同じように守ってくれるのかな?


「本当ですか?!」


「ああ、本当だ。それに外の世界では深紅の脅威も増えていると聞く。普通に身を守りたいならレベル2は必要だろう。それに大事な者も安心して守る事ができる。」


「そうですか・・じゃあ頑張ってみようかな・・・」


軽率だろうか?だが大事な人を守れる力は魅力的だ。乗せられた感は否めないが死なないなら何とか頑張れる気がする。


「おう、じゃあ飯でも食ってからリリ呼ぶか。」


そういって今日も美味しい食事をいただく。


食べ終わった所に今日も美しいリリさんがやってきた。


「お待ちしていました!7階は私がご案内します。塔は登られますよね?」


「はい、登ります。」


そういって席を立つ。タールさんにお礼を言う。


「タールさん、美味しいご飯をありがとうございました。」


「そこじゃねえだろ。だがレベル2も頑張れよ!」


「はい。赤いスライムを見たら、タールさんだと思って殲滅します。」


少しでも、鬼軍曹に意趣返しをしたいと思うのは仕方ない事だろう。


「それはよせ!」


よし、地味に効いている。そんな事を思いながら、6階の出口まで送ってもらう。


「それでは本当にお世話になりました。」


「ああ、では行け。」


仁王立ちのタールさんに別れを告げ、7階に向かう。


7階に向かう途中で、リリさんから話かけられた。


「6階の赤スライム討伐はどうでしたか?」


「最初の頃、3回程死にかけましたが、タールさんに助けてもらったりして何とかクリアしました。」


少しリリさんとの間に間が開く。


「そうですか。無事で何よりです。ですがその調子ですと7階は大変危険なので、注意して下さいね。」


何その悲しそうな笑顔?




「・・・タールさんには7階で死者が出たことは無いと伺いましたが・・」


「死者も何も、アレンさんが初めてのレベル2挑戦者ですよ。」




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