第二三話 テストの罠
「以上で講義は終了となります。お疲れ様でした。」
「ありがとうございました。」
塔の成り立ちと強さの理解についての講義はなんと一週間を要した。
ちなみに、時間だけ聞くと長いと感じるが、凄く面白い内容だったので暇など無かった。
アンナさんに講師を務めて貰い、不明点があればその都度質問できたので、充実した講義となった。
「では今後ですが、休憩を挟んで理解度テストになります。・・・正直、テストの必要性を感じていません。」
内容についてはかなり理解が出来ている自信があった。都度質問の内容からアンナさんが判断した言葉だろう。
「とはいっても省く訳には参りませんので、休憩後、テスト用紙を配らせていただきたいと思います。」
休憩後、そういって結局用紙は配られた。
テスト用紙
問い1
水上の塔にて過去、試験に合格した人数は何名か。(5点)
問い2
水上の塔を立てたのは誰か。(5点)
問い3
肉体的、魔力的強さとは(***)を集積した量によって決まる。(5点)
問い4
(問い3の解答)が世界で一定に保たれるように働く力を(***)という。(5点)
問い5
水上の塔を立てた人物が研究した生物は何か。(5点)
問い6
水上の塔で習得可能なレベルは何段階あるか。(5点)
問い7
勇者の力を得た場合の義務は何か?(5点)
問い8
(問い3の解答)を効率的に収集する方法を答えよ。※記述式(10点)
問い9
水上の塔が大陸最北端に立っている理由を答えよ。※記述式(15点)
問い10
水上の塔ではどのように強さを身につけるのか方法を答えよ。※記述式(20点)
名前:
「各問に点数が割り振られていますが、合格点は96点です。それでは頑張ってください。」
全問正解しか合格できないなら、点数の振り分けとかいらないと思うんだ。などと考えながら、早速記入していく。
(問い1)の試験合格者数だがこれは「10名」(自分含む)だ。9名の先輩がいる。
(問い2)水上の塔を建てた人だが、「トールマン」だ。この世のものとは思えない位、頭がいい人との事。
四次元制御魔法や、数々の発明品は門外不出(塔からの持ち出し禁止)とされている。
(問い3)穴埋め問題だが、肉体的、魔力的強さとは()を集積した量によって決まる。の()に入る言葉は「存在値」だ。
存在値というのは単に魔獣を倒した事による経験が自分に与えるものでは無く、実際に体内に取り込む有機的物質だ。
魔獣等を倒したり、戦争で人を殺したりして、自身が強くなるのはこの存在値を奪っているためだ。
食事等によっても微量は取り込むことが可能だが、存在値という名の通り、相手の存在に対して影響を与える事で奪えるものらしい。
特徴として、自分を基準として、同様またはそれ以上の存在からしか奪うことはできない。
(問い4)これも穴埋め。存在値が世界で一定に保たれるように働く力を()という。の()に入る言葉は「存在値保存の法則」だ。
これは例だが、存在値80の人間Aが存在値100の人間Bを殺し、人間Aが人間Bの存在値の内10を奪ったとする。
すると、人間Aの存在値は90となり、残りの90は人間Bの死体と共に土に還る。
土に還った存在はこの世界の存在値となり、新たな生物を生み出す事で結果的に一定に保存されるのだ。
そしていきなり例外だが、世界の存在値は常に一定なのかというと、厳密には違う。
世界がコップで存在値が水のような関係だ。そのコップの底は不安定な丸形で形成されている。
水を一杯にしたコップを傾けると水がこぼれる。傾きを戻すと一旦はコップに空き容量ができるが、それが直ぐにまた水が注がれ元の量に戻るイメージだ。
この概念はちょっと理解するのに時間がかかった。
だが、一旦世界から消えた存在値はどこから補充されるのか?は今だ解明されていないとの事だ。
ちなみに、後述するがこの存在値も存在値保存の法則もトールマンが定義した。
(問い5)水上の塔を立てた人物が研究した生物は、この世の最弱生物と名高い水棲生物「スライム」だ。
ここが面白い。研究者は基本的に強い生物を研究する事が多い。
例えばウイングドラゴン等の強い生物を人間の身で狩り、その恩恵を得る事ができるよう、弱点だったり、生息だったりを研究する。
このトールマンという人は最弱でも生きることができる環境や、その仕組みが人間に応用できないか考えた。
(問い6)水上の塔で習得可能なレベルは3段階だ。
ここにきて初めて知ったのだが、魔物の強さは赤、深紅だけではなく更に黒もある。
赤に楽勝で勝てるレベルが1、そして深紅と戦って勝てるレベルが2。そして黒と互角に戦えるレベル3。
数式にすると、赤<<レベル1<深紅≦レベル2<黒=レベル3だ。
赤と深紅の間には言葉に表せない程の強さの差があり、黒に関しては、もう別物らしい。
大変残念な事だが、どのレベルまで習得できるかは4階迄の試験で決まる。
つまるところ、僕の学習コースはレベル3に認定された。生きて帰れるだろうか?
(問い7)勇者の力を得た場合の義務は、定期報告だ。
生存、非生存、活動場所、最近の活動内容を半年に一回報告しなければならない。
また、行動内容を変更する際には、臨時報告が必要となる。
何か有事が発生した場合の緊急連絡先を塔が把握するためだ。
伝達方法は、特殊な出し方が必要な手紙で、各国で受付箇所が決められている。
塔の従業員が回収していくらしい。
(問い8)存在値を効率的に収集する方法は、自分と同じ強さ又はそれ以上の魔物を倒す事だ。さらに人間が戦い易い魔物と戦う。
つまり、「存在値を多く蓄えているのに人間との相性で戦いやすい魔物と戦う。」のである。
どうです?嫌な予感してきたでしょ?
(問い9)水上の塔が大陸最北端に立っている理由、これはスライムの研究と共に理解する必要がある。
まず、トールマンの研究対象はスライムだった。
スライムは、水分がなくなると一定の時間を経て、生命活動を停止する事が分かった。
続けて、海水を入れると分裂する事が分かり、この海水を川水に変えても、分裂する事も分かった。
そして、人間が飲むために煮沸された水では分裂せず、生命活動の停止も確認された。
この時すでに水中の微生物は発見されていたので、実験の結果から、スライムは微生物を捕食していると仮定された。
トールマンは証明のため、分裂前、分裂後の海水を取り出し、水中の微生物を捕食して生きている小魚をそれぞれの海水で飼育した所、分裂後の海水では小魚は生息できない事が判明した。
つまり、スライムは水中の微生物を捕食していたという仮定は事実として結論づけられた。
そして、次の発見は偶然だった。
増殖したスライムを一か所に纏め飼育している環境で、海水を入れるのを忘れて数日の間外出してしまった。
帰宅すると、500匹以上いたスライムが数匹にまで減ってしまった。その変わり、そのスライムの中に赤いスライムがいたのだ。
これを再現しようと、同様の環境を作り、今度は外出する事なく観察していた。
すると、食事のないスライムは共食いを始めたのだ。そしてあるスライムは一定数捕食したタイミングで赤になった。
この現象から、定義されたのが存在値である。さらに、赤いスライムを集め同様に捕食させた所、深紅のスライムが誕生した。
研究を進め、大体同数のスライムで一匹の赤いスライムが発生し、同数の赤いスライムで深紅のスライムが発生した事から存在値保存の法則が導き出された。
そして、この研究結果を認められ研究施設が与えられる事になった。その研究施設は以下の条件が必要だ。
①海水等の自然水を常時供給する事が可能である事。
②繁殖させた深紅及び黒の魔物を取り扱う必要がある事から、人々の生活基盤から隔離された場所である事。
本題に戻るが、(問い9)の回答は「スライムの研究、繁殖のため、海水を常に供給できる場所であり、事故があっても人々の生活基盤に影響を与えないから」なのである。
(問い10)水上の塔ではどのように強さを身につけるのか?そう、スライムに吸収させた存在値をひたすら狩るという方法。
つまり、海水で分裂させまくったスライムを赤にしたり、深紅にしたり、黒にしちゃったりして、それを倒し存在値を回収するという手法になる。
解答としては「よくわからない」としておいた。これでテストは不合格。生きて帰れる。
そうしてテストの時間が終了し、解答が回収された。
帰り支度をしながら沙汰を待つと、合格が言い渡されたため不服を申し立てた。
解答用紙の添削を確認すると、(問い10)で記述式の回答に対する部分点が17点与えられていた。
「どうして僕は一問一答式で間違えなかったのか・・・・・」
「期待していますよ、レベル3合格は初めてですからね!」
すまないレオ、僕は君との約束を守れないかもしれない・・・・




