第二十話 美しい花
「では3階にすすめ。」
「ありがとうございました。」
タールさんに別れを告げ銀色の階段を3階に進む。
レオは2階を無事通過できたろうか?自分の心配よりも、レオの心配の方が大きかった。
3階ではレオが好きそうな美人さんが迎えてくれた。リリさんというらしい。
パーティーで受ける試験と聞き、メンバーの紹介を受ける。
「じゃあ俺からいこう。俺はクロックだ。前衛職なら担える。魔法は苦手だ。」
「次は私ですか。ルートです。魔法使いです。氷系と土系の魔法を使う事ができます。前衛は期待しないでください。」
「俺はエルビーだ。斥候だ。道の安全を保障しよう。一般的な罠から専門的な罠まで、引っかからない自信があるぜ。体力はあるが、攻撃力は低めだ。攻撃系魔法は使えない。」
「私はアレンといいます。魔法は風と水が得意ですが前衛はできません。旅の仲間に頼ってここまで来ました。」
そういって自己紹介が終わった後、魔王の迷宮というダンジョンに移動して攻略を開始する。
魔王の迷宮はなんというか、試験としては総合的なバランスがよい。人間性を考えなければ。
地下五階までの探索では、発見できたリングは3つ。
道程でクロックが毒を負ってしまったので、安全を考え引き返す事になった。
リングを所持しているのは、クロック、エルビー、僕だ。
地下五階~地下二階迄はリングを発見する事が出来ず、残り探索可能なフロアは地下一階のみとなった。
ゴール間近でエルビーが走り出たのを切っ掛けに罠が作動し、大岩が転がって来た。
エルビーが入口に着く間際、横道から高速で飛び出してきた更なる大岩がエルビーを襲う。
エルビーは大岩に反応しており、入口とは別の小さなくぼみのような側道に入って身をかわした。
しかし、大岩がエルビーの入った側道へ急に進路を変える。
こちらからは死角になっていて、エルビーがどうなったかは分からなかった。
ズガァン!
エルビーの逃げ込んだ側道に大岩が刺さる。
「エルビーさん!」
エルビーが逃げ込んだ道ごと、大岩が壁を粉砕した。
アレンはダッシュで大岩の元へ走る。
「ルートさん!土の魔法で岩の処理を!」
「・・・!わかりました!」
岩は細分化され、少しづつ質量を減らしていった。
残り5分、奇跡的にできた空間に避難している、エルビーの救助に成功したのである。
「ふいぃ、助かったぜ。」
「なぜ走ったのですか?」
「そうだ!途中で落としちまったが、リングが有ったんだよ。これとは別に。」
そう言って右手にしているリングを見せる。
「本当ですか?!どこにありましたか?」
「この道沿いにちょっと戻った所だ。」
夢中になって見えなかったが、確かに床が緑に光っている部分がある。
「リングを拾おうとしたら、床が動く罠が発動した。無駄に走らされて岩をぶつけられそうになったときは、流石の俺も終わったとかと思ったぜ。」
「急に走ったから、リング持って逃げたのかと思いましたよ。」
普通そう思うはずだ。
「んなわけねえだろ、おりゃ斥候だぜ。斥候がそれやったら全滅しちまうだろが。」
はっはっは、すみませんちょっと疑いました。反省していると、クロックが口を挟む。
「ふう・・ふう・・まあ、時間がないから外で話そうぜ。」
リングを4つ集め、時間ギリギリで洞窟から出る。外では笑顔のリリさんが迎えてくれた。
「皆様、お疲れ様でした。」
クロックが毒でダメージを負っているので取り急ぎ薬をもらい、休ませた。
リリさんが雑務を終え、皆をソファーに案内し、お茶と茶菓子を持って労う。
「素晴らしいですね!4つ集めて生還されるとは!」
そういえば不思議な事があったので何気なくリリさんにそれを振ってみる。
「ほんとです。4つ目のリングは一階にあったのですが、最初その通路を通った時には見つからなかったのです。」
その振りでスイッチが入ったのか、リリさんは聞いて下さいとばかりに、説明を開始した。
「最後のリングは時限性で発光するようになってまして、最初にお渡しした、水時計の光量の残量が規定値を下回らないと、発光しないようになっています。」
それなら納得だ。地下5階で引き返せなかったらアウトだったな。エルビーも納得している。
「なるほど、道理で見つからない訳だ。一階は特に光を頼りに探していたからな。」
「更に、動く床で斥候が逃げ出した様に映るはずです。それまでの状況によっては、斥候に対して不信になり、そのまま見捨てることもあるでしょう。」
「えげつねえな。」
エルビーの顔が青くなっている。
「ちなみに最後の罠だけは、塔のオリジナル隠蔽方式に従ってますので、どんな優秀な斥候も罠を見抜けないようになっています。」
「・・・・・どおりでな。あんなん分かんねえよ。最後の20分でそれやられちゃかなわんな。」
僕もそうだが、エルビーもルートも心を整理しているのだろう。少し間が空く。
「まあ、もう過ぎた事です。各々の役目を各々が果たして合格。これでよいではないですか?」
もう思い出したくないとばかりにルートさんが会話を打ち切った。
みんな無事だったからこそ、この大団円だ。素直に喜ぶ事にしよう。
クロックの復活を待って、順番に次のフロアに移動することになった。
その前に、僕にはやるべき事がある。
「リリさん、一つよろしいでしょうか?」
どうしても訪ねずにはいられなかった。
「はい、なんでしょう?」
「その、なんというか詳しいなと思いまして・・・」
「?」
はっきり言わないと伝わらないようだ。
「つまりですね、まさかダンジョンの設計をしたのは・・・・・?」
「はい、私です。」
「嘘だっ!」「嘘だろ!」「嘘でしょ!?」「マジかよ!」
綺麗なバラには棘がある。
勇者不合格になったとしても、これだけは覚えて帰ろう。
こうして4人合格となり、それぞれ次の階へ進むのであった。




