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勇者の塔  作者: 正十郎
17/30

第十七話 早すぎる別れ


次の日から、旅に必要なものを買い付けるため、町に店を出している商人に話をして回った。


だが、携帯食料だけがどうしても一週間待ちとの事だった。


時間を潰す為に日当系の仕事を取り扱っている所がないか確認すると、役所の求人局の仕事斡旋科で取り扱っている事がわかった。



その足で仕事斡旋科に向かう。斡旋受付と記載された看板らしき物の隣に受付が座っている。


こういう堅い所は、もちろんアレン担当だ。


「こんにちは。」


「はい、どのようなご用件でしょうか?」


「日当が出る仕事を受けたいのですが、今何かありますでしょうか?」


「カウンター横の掲示板に依頼内容の一覧が記載されています。依頼金額等記載の無い物や、詳細はこちらにお問い合わせ下さい。」


「わかりました。ありがとうございます。」


掲示板を早速確認すると、思ったより色々な依頼があるようだ。その中で自分たちで遂行が可能なものを抜粋する。


平原で魔獣を仕留める食肉調達の仕事と、護衛が必要な危険区域での薬草採取の仕事が適任といった所だろうか。


「食肉調達の仕事と薬草採取の仕事について、教えていただけますか?」


「わかりました。少々お待ちください。」


そういって棚から書類を持ってきた。


「お待たせしました。食肉調達ですが、此処から南3キロ程に生息するジンギースカンという魔獣の討伐になります。依頼料は1万でこちらが対象の絵と地図になります。」


「ありがとうございます。白いモコモコした毛が特徴なんですね、街道沿いに行けば遭遇しそうですね。覚えました。」


「続いて、薬草採取ですが、場所はここからすぐ東の森になります。この地域に流行する病の特効薬となる材料です。通常の金額は5000なのですが、今は10万になっています。こちらが対象の絵と地図になります。」


「ありがとうございます。食肉調達にします。」


即答するアレン。綺麗な拒絶だ。


恐らく深紅がでるから時価が大変な事になっているのだろう。しかしほんとにすぐ近くなんだな。地図を見たが30分とかからない。



俺達は食肉調達の仕事を受領し現地に向かった。


これといった苦労は無く、対象の魔獣を仕留める事ができた。獲物を担いで運び、規定の場所へ納品した。




半日がかりで対象の魔獣を探し、討伐、獲物を町まで運ぶ。この繰り返しを3日やった時だった。




その日の仕事を終え、町に帰ると役所の人から声が掛けられた。俺は後ろに下がり、アレンが前にでる。


「緊急避難命令がでました。此処サギサ宿場町から130km程南にあるケング鉱山町まで避難してください。」


「急にどうしたのですか?」


「深紅の討伐に失敗しました。深紅がこの町に報復する恐れがあるので、一般の方は避難をお願いします。」


「リトランさんがいらっしゃるのでは?」


「リトラン=ウォーカー様は現在重体です。討伐に失敗し半身を失われました。」


アレンが身を乗り出す。ちょっと取り乱してないか?


「今どちらに?」


「町の中心近くにある、医院にいらっしゃいます。」


「そうですか、重体ということは意識はないんですよね?」


「はい。戻るかどうかも今はわからないそうです。」


「そうですか・・・・」


よくわからないがアレンが酷く凹んでいる。何か自分を責めているようにも感じた。



荷物が宿に置きっぱなしであったため、宿に荷物を取りに帰る事になった。


宿につくと俺達を余程待っていたのか、主人が勢いよく話しかけてきた。


「おいおい、待ったぜ。聞いたか?英雄様がやられちまったってよ。避難してえから早く荷物まとめてくんな。」


「そうしたいんだが携帯食糧がないんだ。分けてくれないか?」


「う~ん・・すまないがうちの分もギリギリでな・・・・」


「そうか・・携帯食料を手にいれるまで、ここに居させてもらえないか?」


「そりゃかまわんが・・。取られるものもないからな。」


正直、宿が確保できただけでも有難い。


「助かる。俺達の事は構わず避難してくれ。」


「すまねえな、見捨てるみたいでよ・・・」


そういって宿の主人は俺達に鍵を渡し、家族を連れて出て行った。


「携帯食料がありそうな所といえば・・・・」


「役所か医院位だね。もうみんな居ないだろうし」


「じゃあ医院が近いからそっちから行ってみるか。」


「うん。」


宿を後にし医院に着くと、ハンターらしき人が数名、院内から出てきた。


すれ違ったハンターは皆、目を腫らし、涙を流した後があった。


「知り合いが無くなったのかな?」


「・・・・・いこう。」


院内に入ると医者らしき人が二人、避難をしようとしていた所だった。


「あの、すみません。」


「すまないが、診察は終了だ。」


「違うんだ。携帯食料を分けてくれないか?」


「そうか、こんな時だからな。少しは分けられるが二人分は無いぞ。」


「ありがとう。役所も回ってみるから、少しでも分けてもらえると助かる。」


そういって携帯食料を分けてもらう。


「あの、ちょっといいですか?」


アレンが医者を呼び止める。


「リトラン=ウォーカーさんは?」


医者が首を振った。


「結局意識を取り戻す事無く、ついさっき天国に旅立ったよ。若いハンター達を庇って重傷を負ったらしい。若いハンターがリトランさんを背負ってここにきた時には既に呼吸は止まっていたよ。」


「最後にお別れだけさせて貰えませんか?」


「知り合いなのかい?」


「一緒にお酒を飲む約束をしていました。」


俺はギョっとした。酒を飲む約束をした人など一人しかいない。


「霊安室にいるよ。私たちはもう出るから別れをすませるといい。」


「食料ありがとうございます。無事にケング鉱山町まで着ける事を祈っています。」


地下の霊安室に入り、目的の人を探す。


いた。傍らには無骨な剣がそっと置かれている。


「リトランさん。お酒飲めなくなっちゃったな。」


アレンがずっと沈んでいた理由はこれだったのか?


「本人だったのか・・・知らないまま色んなこと聞きたかったな。」



俺達は遺体にそっと手を置き、別れを済ませ、医院を出た。



「教えてくれてもよかったんじゃないか?」


「そうだね。レオを驚かせたかったんだ。リトランさんも笑ってたから。それに途中までは教えようと思ってたよ、つっついたでしょ?」


「そういえば、そんな記憶もある。」


「そういうことだよ。とりあえず人がいなくなっちゃう前に、役所に行こう。」



俺達は役所に移動した。着いたときにはもう人の気配がなかった。



俺が辺りを探しているとアレンが大声で探し出した。


「誰かいませんかー?」


物音がした、まだ誰かいるようだ。


「なんじゃい!避難せえ!」


奥から紙きれを持ったお爺さんがやってきた。


「実は携帯食料が無くて避難できないのです。」


「むう、実は最後の携帯食料はもうくれてしまってのう。」


「おじいさんはいいの?」


「わしゃええんじゃ。一応町長じゃからの!どっちにしろこの町から出ることは叶わん。」


町長だったのか。町長っていうより事後処理してる用務員に見えたことは秘密。


「そうでしたか。失礼しました。」


「礼儀正しいのはええこっちゃ。保存できない食料なら5食分程あるが、携帯食料はちと用意できんのう。」


「いえ、では大丈夫です。ありがとうございました。」


アレンと町長の会話が終わるのを待って、俺も聞く。


「この町においてった人の食料とか飲み物なんだけど、帰ってきたらお金払うから、貰っていいかな?」


「何をどれだけ貰ったか、しっかり留めておくなら構わん。緊急じゃからのう。もちろん普段は許可せんぞ?」


「わかった。恩に着る。」


そういって礼をする。事後に取り計らってくれるのだろう。


それはそうと、俺は爺さんが持っていた紙切れがずっと気になっていた。


理由は簡単。金色をしていたからだ。そして銀色で文字が書かれている。塔で見た成金趣味だ。


「それ何だい?」


「これは領主からの手紙じゃ。深紅を討伐したものには、金1億に加えて、何でも望みを一つ叶える事が追加されたようじゃ。よっぽど困っとるようじゃの。」


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