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勇者の塔  作者: 正十郎
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第十五話 領主代行

リリさんとの一時的な別れ(希望)を惜しみ、同じ作りの階段で4階に上がる。


自動扉が開いたので、中に入る。これまでと一緒だ。


「ようこそ、4階へ。」


俺を出迎えてくれたのは、白髪、オールバックの壮年の男性だった。タールよりちょっと若い位だろうか?


「レオだ。よろしく頼む。」


まあ慣れた挨拶だ。


「4階受付のルックだ。よろしく頼むよ。」


そういって握手する。


どうしてこの流れで3階で握手できなかったのか。


「4階の説明をしてもらっていいか?」


「もちろんだ。ソファーにかけたまえ。」


「ああ、そうさせてもらう。」


そういってソファーに移動する。テーブルを挟んでソファーに腰かけ、正面に座る。テーブルの上には砂時計がある。


一息ついてルックが話し出した。


「3階までの試練はお疲れ様だったと言っておこう。ここではあまり物騒な事はしない。私と会話し、君がどう考えるか?が合否のポイントだ。」


「言っている意味がよく分からないが、クイズみたいなものか?」


「ふむ、クイズほど一問一答の形式はしていないが、似たようなものだ。」


もう準備はできているし、そのまま始めてもらう。


「じゃあ、早速お願いしたいのだが。」


「わかった。では始めよう。」


そういって試練は始まった。


「これから、君の置かれている状況を箇条書きで説明していく。全ての条件からお金の使い方と君のとる行動、考え方を教えてくれ。制限時間は私が話し終わってから一時間だ。それとその一時間の間には私に質問もしてもらってかまわない。一時間後、答えを聞く。」


「金の使い方とその状況で取る行動と考え方だな。わかった。状況を教えてくれ。」


「一つ目、戦争があったばかりで、治安が乱れている町がある。領主が倒れたため、領主代行を依頼するための書類を持った宰相が、君の元を訪ねてきた。」


俺は黙って頷く。


「二つ目、領主代行の期限は、二週間だ。」


二週間か、短いな。


「三つ目、領主代行は町からでる事は出来ないが、町の中は自由に移動する事ができる。」


ある程度の自由はあるということか。


「四つ目、町には、奴隷商が横行している。その奴隷商に不法に捕まり、奴隷に落とされたものがいる。」


奴隷を買うのはいくらなのだろう。


「五つ目、町には、収入が得られず、高利貸しから借金をし、返すためには命で返すしかないものがいる。」


元の借金と返すべきお金はいくらだろうか。


「六つ目、町には、病気の母を抱え、母の薬を買うことが出来ず、体を売って日銭を稼いでいる少女がいる。」


何故薬が手に入らないのか。


「七つ目、町には、浮浪者があふれている。」


戦禍だろう、職を失ったからだろうな。


「八つ目、領主代行を務めるに当たり、君は一億の特別予算を執行する事ができる。」


一億か。個別にいくらかかるかは後で確認するが、恐らく合計すると一億では足りないんだろうな。


「以上だ。この状況で、領主代行として、君の取るべき行動、考え、一億の予算の使い道を教えてくれ。」


そう言って、ルックはテーブルの上の砂時計を返した。


3分程考え、考えをまとめる。


まずは直接的に解決できるのが一番いい。


全てのお金を出し、浮浪者に仕事を与えるだけの金銭がだせれば問題ないだろう。


一応確認するが、恐らくはそういう設定にはなっていないだろうから、その回答でもう一度考えよう。


「質問したいがいいか?」


「いいとも。」


「奴隷を買い戻すにはいくらかかる?」


「5000万だ。」


「高利貸しに借りたお金と返さなくてはならないお金は幾らだ?」


「借りたお金は400万だ。返さなくてはならないお金は2000万だ。」


「病気の母を治すための薬の値段は幾らだ?」


「4000万だ。」


「浮浪者は何人程度だ?それと浮浪者に仕事を与えようと思ったら幾らかかるんだ?」


「500人だ。現状仕事を与えるだけならば町の復興等であれば5億位だな。」


「ふむ、まともに解決しようとすると一億では全然足りない訳か。」


「そうなるな。」


なるほど・・・これまでの情報では足りない。


出されている条件で今聞いた事以外を聞こう。何か出てくるかもしれない。


「町には何がある?施設とかの種類で答えてくれ。」


「町には、両替(銀行)、宿屋、武器防具屋、民家、酒場、娼館、孤児院がある。」


何か違和感がある。戦禍の残る中で娼館は分かるが、酒場?つぶれないのか?


「酒場には誰がいるんだ?」


「この戦争に勝った国の傭兵がいる。」


なるほど。金で動く傭兵か。少しとっかかりができたな。


ちょっと考慮に入れよう。


しかし、領主代行に傭兵と話ができるだろうか・・・・



まてよ?!、そもそもどうして「俺」が領主代行なんだ?理由があるはずだ。



「何故俺が領主代行に選ばれたんだ?」


「それは君が勇者の力をもっているからだ。」


なんだと!凄く重要な条件じゃないか!そういうことか。疑問に思えるかどうかも試験なんだな・・


「なぜ勇者の力を持っていると領主代行になるんだ?」


「王が代行に押した理由は、治安維持のためだ。」


「どうして、勇者の力を持ったものが代行になると治安維持になるんだ。」


「現状この国は軍隊が壊滅している。武力がなければ、経済が維持できない。浮浪者が暴れだす。」


「軍の代わりか。」


「そうだ。」


重要な事が足りない気がする。なんだろう。もう一度条件を思い出せ・・・・まだ追及していない部分・・・これだ。


「何故、二週間なんだ?」


「二週間後には、他国から王への援軍が到着する。」


それで二週間なのか・・・・解答にする気はないが、一応聞くだけ聞いておこう。


「二週間なにもしないと、問題は発生するのか?」


「発生しない。そのままだ。飢えているもの、弱者が虐げられる世界が続くだけ。」


なるほど、国政は弱者の事など特別に考えていない。保守派や改革派があれど、全体の事を考えているだけだ。


この問題の本当のお題は正規の力を手にした「二週間の間に勇者として何ができるか」という現実的な問題なのだ。




丁度、砂時計の砂が全て落ちた。




「では、君の取る行動、なぜそう考えたか。金の使い道を教えてくれ。」


「俺は高利貸し、奴隷商、薬等の日常品から暴利を得ている連中と戦おうと思う。」


「なぜ、そう考えた?」


「戦争後、治安が乱れている時に、さらに弱いものから搾取する事は簡単だ。二週間の間に自分の力と傭兵の力を借りて、現状を改善したい。」


「金の使い道は?」


「傭兵を雇う為に使う。傭兵には俺が攻めている間、弱者を守ってもらう。」


俺の回答をルックはメモに取っている。なんか残されるのは嫌だな。恥ずかしいし。


「ふむ。君は人格者だな。」


「お褒めにあずかり光栄だ。」


「ではすぐ戻るので、しばしお待ち頂こう。」


その後、食事の案内をされ、ルックは扉の奥に去って行った。


遠慮なく食事を頂く。毎度の事であるが、大変素晴らしい。


久しぶりに一人になって緊張が解けたのか、ちょっと眠くなってきたのでロビーでくつろごうと思い席を立つ。


ロビーに戻ると、ルックがソファーで待っていた。


「食事はどうだったかね?」


「相変わらず食材は分からないが、旨かったぜ。」


「そうか、それは何よりだ。続いて君に結果を伝えたいのだが準備はよいか?」


緊張が走る。


「ああ。」


一呼吸置いて、静かにルックが語る。


「残念だが、 レオ君は不合格だ。一階に繋ぐので塔を降りるように。」


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