第十四話 単細胞
「皆様、お疲れ様でした。」
出口でリリさんが皆を出迎えてくれた。出口に到達すると同時にクロックが地面にふせぎ込む。
「クロックがグリーンスライムの毒を負っている。薬をもらえないか?」
「はい、すぐ用意しますのでお待ちください。」
会話を繋げる気力もない。24時間の戦いの後というのもそうだが、エルビーが命を失っている事実がより一層重くのしかかった。
クロックに肩を貸し、ソファーに寝かせる。
リリさんが薬を持ってきて、クロックに飲ませると息が穏やかになっていった。
落ち着いた所で、リリさんから俺に確認が入る。
「帰還は3名ですか?」
「ああ、そうだ。」
「皆様、アテストリングを持たれていますね?回収させていただきます。」
そう言ってリングを回収していった。
「エルビーさんは未だ洞窟内ですか?」
「・・・・・・・・」
なんと言っていいのか分からない。ルートは無言だ。確かに洞窟内にいるが、恐らく命はない。
「そうですか・・・・。分かりました、生死の確認も含め試練場を確認しますので、階数が分かれば教えてください。」
「地下一階だ。入口手前の大岩の傍にいると思う・・・」
「わかりました。手配して確認します。皆様は食事と睡眠をお取りください。」
そういって、扉の奥に消えていった。
食事をとる気分にもならなかった俺は、ただこれ以上考えるのが苦痛で、ベットに潜り現実から逃避した。
嫌な汗をかいて、不快さで中途半端に目覚めた俺は、口を潤したくなったので、水を飲むためロビーに移動した。
ルートも眠れなかったらしく、ソファーに座っていた。
「レオさんも眠れませんか。」
「流石に。知人が命を落とす事はあまりなかったからな。」
「そうですね。いくら規約書にサインを書いたとはいえ、命を落としたら浮かばれないでしょうね。」
「どうして、エルビーは最後走ったのかな?」
「自分のプライドや命よりも大事なものがあったのでしょう。今だから言うわけではありませんが、あのままエルビーさんが入口に戻っていても私は構わないと思っていました。」
「どうして?」
「リングを分配するときの条件として、あなた達3人に私の願いを一つ聞くというものを飲んでもらおうと思っていたからです。」
「どんな願いを?」
「私の国は、王の圧政に苦しんでいます。なにかしらの方法で王の圧政をやめさせていただければと。」
「ふっ、そりゃまた大きな願いだな。」
「これが私の勇者の力の目的ですので。」
「・・・そうか。」
「・・・なので、私がもし勇者の力を手に入れたら、エルビーさんのお子さんを救おうと思います。」
俺にとって、その一言は救いだった。
エルビーが命を懸けたものを、エルビーの代わりに守る。そうする事でエルビーの供養になるだろう。
「流石だな。俺も一枚かませてくれないか?勇者の力を手に入れたら、俺もエルビーの子に会おう。」
「二人で行けるといいですね。」
「ああ。」
暫くの沈黙が続いたあと、ルートは部屋に帰っていった。
俺も水を飲んで、部屋に戻り、睡眠の続きを取る。単純なのは分かっているが、今度は少しばかりゆっくり寝ることができた。
睡眠から覚め、支度をした後、ロビーに向かうと皆集まっていた。
「おはようございます。」
「レオ、よく寝たな。もう起きないかと思ったぞ。」
どうやら、少しばかりではなかったらしい。
クロックの隣には、ルートが座っている。
「レオさん、すっきりした顔してますよ。」
「ルートのおかげだ。ありがとう。」
「お前ら何があったんだ?」
「もし、勇者の力を手に入れる事ができたら、エルビーの息子を救ってやろうって話をしたんだよ。」
「本当か?よろしく頼むぜおい!」
「え?」
どういうことだろう?目の前にエルビーがいる。禿げているから間違いない。
挙動不信になっている俺に、天使のリリさんが説明してくれた。
どうやら、大岩と壁の間に挟まって気絶していた所を捜索隊の人が救ったらしい。あの一瞬で大岩と壁の間に武器と防具を挟んで隙間を作ったようだ。
「ふざけんな!地下に帰れ。お前の墓標はあの大岩だ!」
「まあそういうな、命があって助かったぜ。タイムアップだし、悔いは無いからもう帰るがな。違う方法で息子は救ってみせる。」
「ちっ。まあ頑張れよ」
「ああ、世話になったな。それから、ルート、クロック、レオ、すまなかった。心配かけたな。」
クロックももう責める気はないのだろう。
「もういい。息子を大事にしろよ。」
ルートも屈託のない笑顔を浮かべている。
「私からは何もありません。結果が決まった今、只生きててよかったです。」
それから少しの間、迷宮の悪口で盛り上がった後、解散になった。
そして、それぞれのタイミングでフロアは移動する事になった。
その前に、俺にはやるべき事がある。
「リリさん。俺が勇者の力を得たら、デートしてくれ。」
「そうですね。勇者の力を得ることができて、それを皆の為に使うことができたら、考えてもいいですよ。」
「本当か?」
「どうでしょうね?」
そういって微笑んだリリさんの笑顔は俺のモチベーションを最高潮に引き上げるのだった。




