表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の塔  作者: 正十郎
13/30

第十三話 マイナス1

~~~~~帰り道~~~~~



そういって地下五階の残部分を調べ、何もない事を確認して、地下四階に戻った。


リングが見つかっていないフロアであるため、時間を大目に割いたが、スライムしかいなかった。


地下三階にも、地下二階も、同様であった。やはり、怪しい所もない。


地下六階に降りるべきだったとの疑念を払いつつ、地下一階にたどり着いた。残り時間はあと3時間。


クロックが皆に提案する。


「はぁ・・はぁ・・ここから、入口の近くに向かって探索しよう。入口に着いたら、分配方法を考えることで・・どうだ・・」


「いいと思うぜ。」


疲労困憊の中、緑のリングを探す。


時間が少しずつ無くなって行く。真綿で首を絞められるようだ。


先を行っていたエルビーが引き返してきた。


「ちっ!見つからねえ!」


だいぶイラついているようだ。無理もない。休憩も碌にせず、睡眠もせず、もう20時間以上経過している。


「俺はどうしても勇者の力を手に入れにゃならん。病気の息子が俺を待ってんだ!」


「ぜぇ・・ぜぇ・・そんな・・都合なんぞ、みんな同じようなもんさ・・」


「なんだと!」


「はぁ・・・はぁ・・・・・」


クロックは毒で憔悴している。もう目の焦点が合っていない。


同時に険悪な雰囲気が漂う。この場と取り繕うべく、俺とルートも会話に参加した。


「ルート、最悪見つからなかったらどうしたい?」


「じゃんけんにでもしますか?」


「そうだな、ルートだけグー禁止でやるか。」


「そうしたら、私はチョキを出すと宣言します。そしたら何だしますか?」


「グーだ。」


「素直ですね。チョキだせば負けないのに。」


「よく考えるとそうだな。アホか俺は。」


こんなつまらない冗談と残り時間を表す光時計の弱々しい光が、場の空気を和ませた。


「・・・・そうだったな。・・・すまなかった。」


エルビーは、そういって斥候のポジションである先行の位置に戻っていく。




ますます時間はなくなり、残りは20分も残っていない。


誰が割を食うのか、それぞれが不安に思いながら、無常にも入口が近づいて来る。もうすぐにでもついてしまうだろう。




それは、リングの分配について、切り出そうとした所だった。




急にエルビーが走り出した。


「まて!エルビー」


しまった!エルビーは腕輪を腕に着けている。あのまま入口に行ってしまえば、合格になってしまう。


エルビーを呼び止めたのと同時に、大岩が音を立てて前方からこちらに転がってくるのが見えた。


エルビーはギョッとしている様だったが、咄嗟に岩を避け、さらに走り出した。


俺はクロックを抱えて横に跳ぶ。ルートもギリギリ事なきを得たようだ。


岩は避ける事ができたが、体制を崩してしまったため、走るエルビーに追いつくことができない。


ドゴォン!後方で岩が壁に衝突する。


もうエルビーが入口に着いてしまう!


だめかと思った瞬間、横道から高速で飛び出してきた更なる大岩がエルビーを襲う。


エルビーは大岩に反応しており、入口とは別の小さなくぼみのような側道に入って身をかわした。


しかし、大岩がエルビーの入った側道へ急に進路を変えたのである。


こちらからは死角になっていて、エルビーがどうなったかは分からなかった。


ズガァン!


エルビーの逃げ込んだ側道に大岩が刺さる。


「エルビー!」


エルビーが逃げ込んだ道ごと、大岩が壁を粉砕した。


エルビーの逃げ込んだ側道に駆けつける。


「大丈夫か!エルビー!聞こえたら返事をしろ!」


返事はない。クロックがふらつきながら、追いついてきた。


「・・これは・・助からないんじゃないか・・・・」


クロックはふらつく足で大岩の周りを調べている。俺も見たが、まずどかせそうにない。押してみるが、びくともしなかった。


「見てください!」


ルートが叫ぶ。


先程は気が付かなかったが、側道に入る少し手前に、弱く緑に光る腕輪が落ちていた。


「エルビーが落としたのか・・・・・」


クロックは苦虫を噛み潰したような顔で、俯いている。


「自業自得だな。最後は皆を出し抜く為に入口に走って罠踏んでお陀仏とは。」


そうは言うが、救えなかった事を後悔しているのであろう。本当にそう思っているのならば、そんな顔はしない。


「・・・・・・・残念ですよ。」


24時間とはいえ、一緒に戦った仲間を失った事は酷く自分を傷つけた。


最後の最後にエルビーが回避できない罠を仕掛けるとは・・・






ここは入口の目の前だ。残り時間はあと10分。


三人の生き残りに3つの腕輪。争いも起こらない。


俺達は後味の悪い思いをしながら、迷宮を後にするのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ