第十三話 マイナス1
~~~~~帰り道~~~~~
そういって地下五階の残部分を調べ、何もない事を確認して、地下四階に戻った。
リングが見つかっていないフロアであるため、時間を大目に割いたが、スライムしかいなかった。
地下三階にも、地下二階も、同様であった。やはり、怪しい所もない。
地下六階に降りるべきだったとの疑念を払いつつ、地下一階にたどり着いた。残り時間はあと3時間。
クロックが皆に提案する。
「はぁ・・はぁ・・ここから、入口の近くに向かって探索しよう。入口に着いたら、分配方法を考えることで・・どうだ・・」
「いいと思うぜ。」
疲労困憊の中、緑のリングを探す。
時間が少しずつ無くなって行く。真綿で首を絞められるようだ。
先を行っていたエルビーが引き返してきた。
「ちっ!見つからねえ!」
だいぶイラついているようだ。無理もない。休憩も碌にせず、睡眠もせず、もう20時間以上経過している。
「俺はどうしても勇者の力を手に入れにゃならん。病気の息子が俺を待ってんだ!」
「ぜぇ・・ぜぇ・・そんな・・都合なんぞ、みんな同じようなもんさ・・」
「なんだと!」
「はぁ・・・はぁ・・・・・」
クロックは毒で憔悴している。もう目の焦点が合っていない。
同時に険悪な雰囲気が漂う。この場と取り繕うべく、俺とルートも会話に参加した。
「ルート、最悪見つからなかったらどうしたい?」
「じゃんけんにでもしますか?」
「そうだな、ルートだけグー禁止でやるか。」
「そうしたら、私はチョキを出すと宣言します。そしたら何だしますか?」
「グーだ。」
「素直ですね。チョキだせば負けないのに。」
「よく考えるとそうだな。アホか俺は。」
こんなつまらない冗談と残り時間を表す光時計の弱々しい光が、場の空気を和ませた。
「・・・・そうだったな。・・・すまなかった。」
エルビーは、そういって斥候のポジションである先行の位置に戻っていく。
ますます時間はなくなり、残りは20分も残っていない。
誰が割を食うのか、それぞれが不安に思いながら、無常にも入口が近づいて来る。もうすぐにでもついてしまうだろう。
それは、リングの分配について、切り出そうとした所だった。
急にエルビーが走り出した。
「まて!エルビー」
しまった!エルビーは腕輪を腕に着けている。あのまま入口に行ってしまえば、合格になってしまう。
エルビーを呼び止めたのと同時に、大岩が音を立てて前方からこちらに転がってくるのが見えた。
エルビーはギョッとしている様だったが、咄嗟に岩を避け、さらに走り出した。
俺はクロックを抱えて横に跳ぶ。ルートもギリギリ事なきを得たようだ。
岩は避ける事ができたが、体制を崩してしまったため、走るエルビーに追いつくことができない。
ドゴォン!後方で岩が壁に衝突する。
もうエルビーが入口に着いてしまう!
だめかと思った瞬間、横道から高速で飛び出してきた更なる大岩がエルビーを襲う。
エルビーは大岩に反応しており、入口とは別の小さなくぼみのような側道に入って身をかわした。
しかし、大岩がエルビーの入った側道へ急に進路を変えたのである。
こちらからは死角になっていて、エルビーがどうなったかは分からなかった。
ズガァン!
エルビーの逃げ込んだ側道に大岩が刺さる。
「エルビー!」
エルビーが逃げ込んだ道ごと、大岩が壁を粉砕した。
エルビーの逃げ込んだ側道に駆けつける。
「大丈夫か!エルビー!聞こえたら返事をしろ!」
返事はない。クロックがふらつきながら、追いついてきた。
「・・これは・・助からないんじゃないか・・・・」
クロックはふらつく足で大岩の周りを調べている。俺も見たが、まずどかせそうにない。押してみるが、びくともしなかった。
「見てください!」
ルートが叫ぶ。
先程は気が付かなかったが、側道に入る少し手前に、弱く緑に光る腕輪が落ちていた。
「エルビーが落としたのか・・・・・」
クロックは苦虫を噛み潰したような顔で、俯いている。
「自業自得だな。最後は皆を出し抜く為に入口に走って罠踏んでお陀仏とは。」
そうは言うが、救えなかった事を後悔しているのであろう。本当にそう思っているのならば、そんな顔はしない。
「・・・・・・・残念ですよ。」
24時間とはいえ、一緒に戦った仲間を失った事は酷く自分を傷つけた。
最後の最後にエルビーが回避できない罠を仕掛けるとは・・・
ここは入口の目の前だ。残り時間はあと10分。
三人の生き残りに3つの腕輪。争いも起こらない。
俺達は後味の悪い思いをしながら、迷宮を後にするのだった。




