第十一話 陰湿
~~~~~地下一階~~~~~
迷宮に入った俺達は、お互いの情報交換をしながら、地下一階の探索を行った。
攻撃力が一番高いのは俺、次いでクロック。
体力はエルビー次いでクロック。
器用さはエルビー次いでルート。
魔術力はルート次いで俺だ。
各迷宮や洞窟、大陸等を行き来し、一番経験が多そうなのがクロックなので、リーダーを任せている。
体力がクロックよりエルビーの方が高いと聞いたとき、意外だと思った以外は順当だろうか?
斥候のエルビーが先行し、索敵、罠の確認、回避を行う。
クロックがセンターで俺とルートに指示を出すフォーメーションになった。
結論で言えばこのフロアに魔物はおらず、いやらしい罠の回避に時間を割く事になった。
地下一階で使った時間は4時間程度だ。
フロアを一周したが、リングの目印となる緑の発光が無かったため、地下二階へ進む事になった。
~~~~~地下二階~~~~~
地下二階の探索を開始すると、リングの光らしきものが見つかった。
斥候であるエルビーが罠を警戒し光の方角へ先導する。
光から一定の位置でエルビーが足を止めた。
「ここで様子をみよう。」
発光元の辺りには、スケルトンが数体おり、その中央にスケルトンリーダーがいる配置であるようだ。
ちなみに、スケルトン自体は一般的に初心者の登竜門となる魔物だが、俺位の強さの人間にとっては雑魚だ。
一体ならな!
スケルトンリーダーはスケルトンに比べて、持っている武器防具がしっかりしているので、わかりやすい。
武器を取ったら全く同じになると思うのだが、身体能力が全然違うのが不思議だ。
スケルトンリーダーは万全の態勢で、討伐可能といった所だろうか。
リングの光を追うと、スケルトンリーダーから発せられている事がわかった。
注意を払いながら、もう少し近づくとリングがスケルトンリーダーの頭蓋骨の割れ目に刺さっているのが見えた。
微妙な空気が流れる。
「スケルトンリーダーの頭に、殺さないでリング刺すって凄い技術だよな。」
俺は素直に関心した。
「リングを隠した奴の性格は悪いと思うのだがどうか?」
クロックは周りに同意を求めている。
「地下一階に何もない時点で気づくべきだな。」
エルビーはさすが斥候の意見だ。
クロックが軽くため息を吐いたあと、ルートに話しかけた。
「ルート、周りのスケルトンだけ先になんとかできないか?」
「普通のやつだけなら氷漬けにできますよ。リーダーは足止め位でしょうね」
「それで構わん。俺とレオでリーダーを食い止めるから、エルビーは遊撃してくれ」
みんな了承の返答をする。
「ルート、始めてくれ」
クロックの合図の元、ルートが魔力を練ると、辺りの温度が下がる。
キャストと同時に一気に気圧が下がり、スケルトンが凍っていく。
そんな中、リーダーがこちらに向かって突撃してくる。
「来るぞっ!」
クロックが突撃を受け止めに行く。
俺はクロックの後ろに入り、カウンターを狙いに行く。
エルビーは側面に回りこんでいる。
ルートはもう一度、魔力を練り始めた。
スケルトンリーダーの突撃をクロックが重装備で受け止めた後、俺がクロックの後ろから飛び出て切りつける。
剣がスケルトンリーダーの左側面に吸い込まれる。バキッという音がして、スケルトンリーダーがバランスを崩した。
ダメージは強いと思うが、倒し切れていない。そこにエルビーが走り込み首に一撃を入れる。
スケルトンリーダーは崩れ落ちて、動かなくなった。勝負ありだ。
ルートが練った魔力を霧散させている。
クロックがスケルトンリーダーの頭から、リングを引き抜く。
「これか。一応俺が持っているがいいか?」
問題ないと判断した俺は、
「一番危険なとこ担当してくれたからな。いいと思うぜ。」
と言うと、ルートは頷き、エルビーもそれに賛成した。
「いいぜ。分配はおいおい考えよう。今考えると後で揉めそうだ。どうせ一人じゃ地上まで帰れねえよ。」
結果、クロックが持つことになった。
地下二階でそれ以上リングは見つからなかった。
地下一階との合計で7時間程度を使い、地下三階におりる事になった。
~~~~~地下三階~~~~~
地下三階を暫く探索し、エルビーが皆に待ったをかける。何かに気が付いたようだ。
「クロック!ちょっとこれ見てくれ。この石に触ると罠が発動するんだが、なにか他と違う。」
「どういうことだ?」
「この迷宮のダンジョンは罠のレベルが高い。歩く道順で発動する罠や、利用する魔法で発動する罠もあった。」
「それがどうした?」
「こんな分かりやすい罠は無かったんだ。不自然じゃねえか?」
確かに。他の地面と色が違う石の自己主張感が半端ない。
「この罠の先にリングがあるという事か?」
「そうは言い切れねえが、不自然に分かり易い事を伝えたかっただけだ。」
「うむ。もう少し三階を探索して、何もなければ罠を踏む事も考えよう。」
そういってその場は保留した。
結局、地下三階を3時間位探索したが他に何も見つからなかったので、元の場所に帰ってきた。
「さてどうするか、皆、意見を頼む。」
さすがリーダー。俺なら即決だが、クロックはそうでないようだ。期待に応えよう。
「今使った時間の合計が10時間程度だ。成果が1個だから、積極的に行く必要があるな。エルビー、普通に触るだけで発動するのか?」
「確実には言えねえが、恐らくはそうじゃねえかな。」
「罠の危険度は分かるのか?」
「複雑な術式が組まれていねえから、複雑な罠じゃねえと思う。致死性って意味じゃあ恐らく無いな。」
「そうか。クロック、俺は試す価値はあると思うぜ。」
クロックは頷き、ルートを見る。
「ルートはどうだ?」
「皆に従いましょう。」
「そうか。分かった。エルビーもそれでいいか?」
「まあ、言いだしっぺだからな。」
そういって皆が罠と向き合う事を決めた。
「じゃあ、最後に俺からだが、触るのは俺が触ろう。だがみんな固まっているべきだ。トラップでパーティーが分断されたら、どっちにしろアウトだからな。」
皆の意見を確認した後、クロックが石に近づく。
「じゃあ集まれ。レオは上、エルビーは左右、ルートは後ろを警戒しろ。」
そういってクロックが石に触りにいく。
俺は上方からの落下物に注意を払う。
「よし、いくぞ」
そういって石に触れたようだ。
俺は上方を警戒し、緊張した空気が流れる。
その刹那、
ジュッ!
「あっちいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
クロックが飛び跳ねている。
何があった!?
石を見ると熱で真っ赤になっている。これ触ったのか・・・・
「「・・・・・・・」」
何も言わずにルートが魔法でお手頃サイズの氷を出した。
「ふううううう・・・・」
氷を摩りながらクロックは涙目になっている。
まさか石が熱くなるというトラップとは読めないだろ。
クロックはエルビーに八つ当たりだ。痛みが怒りに変わったのだろう。
「エルビー、責任とってくれるんだろうな!」
「俺は不自然だって言っただけだ。」
そうは言っても、エルビーは多少責任を感じているようだ。なんとなく済まなそうにしている。
すると、見ただけで熱そうだった石は、溶岩のように、沸騰を始めた。
「このままじゃ危ないな。みんな離れてください。」
といってルートが魔法で石を冷やす。
暫く経つと、急激に冷やした所為だろうか?パキンと音がして石が割れた。
そして、その割れた石の中から、緑色に光るリングが零れ落ちた。
「「・・・・・・・・・・・」」
「このやろうが・・・・・」




