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世界一位の続き 〜VRMMOのLv999が現実に残ったので、ゲーム知識で東京と異世界を攻略します〜  作者: 雅龍(がりゅう)
第一部 東京・王門

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攻略法は、独占しない

『トーマ。生きてる?』


送って三秒で、返事が来る。


【TOMA:生きてる!!!! レイくん!? 本物!?】


【TOMA:駅前の装甲竜の動画、あれレイくんでしょ!? 半歩の! 顎下の!】


【TOMA:今その動画、僕のとこに四十件届いてる。全部画角違う。全部ブレてる。なんで誰も三脚立てないの】


『竜の前で三脚立てるやつはいない』


【TOMA:いてほしかった……】


久我冬真。攻略サイト『レルム観測所』の管理人で、ゲーム内ではTOMA。会ったことはないし、声も一度しか聞いたことがない。俺が初めて天断を実戦で決めた動画を、本人より先に解説付きで上げていた男だ。


『頼みがある。戦えない人向けの情報をまとめてほしい。俺の分かる範囲の魔物の特徴を送るから』


【TOMA:やる。やるけど】


【TOMA:倒し方は載せない方がいいと思う】


『なんで』


【TOMA:レベル一の人が「首を狙え」って読んで竜の前に出たら死ぬ】


……正しい。


【TOMA:載せるのは、逃げるべき兆候。出てきた魔物の見分け方。どの方向に逃げるか。倒し方は戦える人向けに別ページ】


『それでいい。お前のほうがうまい』


【TOMA:知ってる】


腹立つな。


俺はユイと手分けして、覚えている限りを打ち込んでいく。


装甲竜。後脚が半歩前に出たら突進。真横には跳ぶな、首を振って追ってくる。建物の間の細い路地へ逃げろ。角が引っかかる。


灰猟犬。外周を回って、逃げる先へ先回りする。建物の角に寄るな、角で待ち伏せされる。開けた場所を固まって移動しろ。


岩蜥蜴。尻尾が硬い。噛まれても致命傷になりにくいが、子どもは近づけるな。


ユイの文は、俺の三倍分かりやすかった。


『灰猟犬に囲まれたら、壁を背にせず、広い場所で全員がまとまって。群れは一番離れた人を狙う』


「なんでお前のほうが攻略情報うまいんだよ」


「レイのは『こう来たらこう』しか書いてないから。読む人は『こう来た』が分からないの」


「来たら分かるだろ」


「分からないの、普通は」


トーマからは、続けざまに文字が流れてくる。


【TOMA:あと、噂の仕分けもする】


【TOMA:「魔物は水が苦手」→未確認。「レベルは魔物を倒さないと上がらない」→未確認。「死んだら教会で生き返る」→否定。これは確認済み。レイくんの画面でも出てるでしょ】


『出てる。復活なし』


【TOMA:了解。トップに赤字で置く】


それから少しして、短い一行が来る。


【TOMA:ありがとう。ソースが本人なのは強い】


『礼はいい。代わりに一つ頼む』


【TOMA:何?】


『イヴと話した。管理AI。あいつ、なんで同期をやったか、比較できる案があったのに「準備がない」で済ませた。会話と実行記録を残せって言ってある。お前のほうでも、イヴが言ったことを全部記録しておいてくれ。あとで食い違ったら、それが証拠になる』


少し、間があった。


【TOMA:そういうの、好き】


【TOMA:任された。「イヴ発言ログ」作る。日時付きで】


これで、俺が忘れても誰かが覚えている。


二十分後、トーマのページが公開された。


『【まず読んで】魔物が出たときに戦わずに逃げるための兆候まとめ(確認済み情報のみ)』


閲覧数は、最初の五分で一万を超えた。


【TOMA:レイくん、ユイさん。これ見て】


転送されてきたのは、知らない人からのメッセージだった。


『兆候まとめ読みました。灰猟犬が角で待ち伏せするって知らなかった。娘と二人で、角を避けて公園の真ん中を通って帰れました。ありがとうございます』


もう一件。


『装甲竜の後ろ脚、本当に半歩出ました。言われた通り路地に入ったら、角がつっかえて止まりました。生きてます』


俺は、しばらく画面を見ていた。


「……レイ」


「なんだよ」


「顔」


「今度は何の顔だよ」


「ちょっと嬉しそうな顔」


否定しようとして、やめた。


俺の手は二本で、剣も一本しかない。行ける場所は、走れる範囲だけ。なのに、俺が行っていない場所で、誰かが角を避けて家に帰った。ゲームの攻略情報が人を生かす日が来るなんて、六年前の俺に言っても信じない。


【TOMA:それと、もう一件】


【TOMA:寄せられた動画の中に、気になるのがある。中央公園の北側。魔物と戦ってる人がいるんだけど、装備がプレイヤーっぽくない】


添付された映像を開くと、夜の公園の、噴水の向こうで、銀色の鎧を着た人影が一人で何体もの魔物を押し返している。動きが速く、迷いがない。その人影の背後に、旗が一本立てられている。


白地に、青い塔と剣。


見覚えがある。いや、見覚えがあるどころじゃない。六年間、何百回もくぐった門の上に、いつもあの旗がはためいていた。


「リーベル騎士団の旗だ」


ユイが、隣で息をのんだ。


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