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世界一位の続き 〜VRMMOのLv999が現実に残ったので、ゲーム知識で東京と異世界を攻略します〜  作者: 雅龍(がりゅう)
第一部 東京・王門

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16/18

レイ本人です

その日の夕方、トーマのページに、一つの記事が上がった。


『【公式】駅前の装甲竜を倒した剣士について 本人確認済み』


『動画の剣士は、元エターナル・レルム総合ランキング一位、REI本人です。本人の了承を得て公表します。本名・居住地・家族に関する情報は公表しません。問い合わせても答えません』


『REIは現在、王門と呼ばれる大規模接続への対処に参加しています。同行者の安全のため、行動予定は公表しません』


その下に、トーマに三回直された俺の文章が続く。


『REIです。手伝ってくれる人を募集します』


『戦わなくていいです。戦えない人に、戦えと言うつもりはありません』


『必要なのは、荷物を運ぶ人。見張りをする人。情報を確かめて、間違っていたら直す人。』


『特に三つ目が足りません。デマが多いです。俺の名前で出回っている情報の半分は、俺が言ったことじゃないです』


『連絡は、このページの窓口からトーマへ。俺に直接来ても、たぶん読めません。忙しいので』


最後の一行は、トーマが削ろうとしたのを俺が戻した。言い方がどうこうと渋るトーマに、事実だろと返したら、レイくんらしいけどさ、と折れた。


記事が上がって一時間で、窓口への連絡は四百件を超えた。


【TOMA:多い!!! 仕分ける!!! 仕分けるけど!!!】


【TOMA:運搬希望百二十件。見張り希望八十件。情報確認希望……五十件。これが一番ありがたい】


【TOMA:残り百五十件は、レイくんへのファンレター。三十件は求婚】


隣で記事を読んでいたユイが、顔を上げた。


「求婚? 三十件?」


「俺に聞くなよ」


「レイ、モテるんだ」


「顔が出てる動画、ブレてるやつばっかりだぞ」


「ブレてても、竜を斬ってたらモテるんじゃない」


ユイの声が、なんだか平坦に聞こえる。俺は少し考えてから打った。


『求婚は全部まとめて、丁寧にお断りしといてくれ』


【TOMA:理由は?】


『忙しいので』


【TOMA:またそれ】


ユイが横で小さく笑った。さっきより、普通の声で。


その時、窓口とは別の通知が鳴った。


【TOMA:レイくん。一件、気になるのがある。運搬希望の中に、「ゲームでリーベルの門前通りをよく通っていた者です。パン屋のハンナさんの店の場所、分かります。手伝わせてください」っていうのがある】


『……ハンナの名前を出してるのか』


【TOMA:出してる。ゲームのNPC名は公式設定資料に載ってない。僕も知らなかった】


ゲームの中で、ハンナの名前は表示されなかった。あったのはパン屋の看板と、窓の中で動く影だけだ。その名前を知っている人が、俺以外にもいる。エルナのぐるぐる桶と、同じ種類の何かだ。


『その人、運搬班に入れてやってくれ。明日の朝の便。門前通り担当』


【TOMA:了解。記録しとく。イヴ発言ログの横に、「NPCの名前を知ってる人」リスト作る】


『頼む』


トーマは、こういう時、本当に頼りになる。


記事の閲覧数は夜までに三百万を超えた。『本物だった』『一位がまだ一位でよかった』『世界ランク見たら本当に1000だった』と流れていくコメントの中に、『二位のLUKEが999で止まってるの草』というのがあった。案の定、通知が鳴る。


【LUKE:草じゃねえ。俺は明日1000行く】


『がんばれ』


【LUKE:上から言うな】


『上にいるからな』


【LUKE:……くそ】


ユイが、肩を震わせている。


「レイ。ルークさんにだけ、性格悪いよね」


「あいつが一番、言い返してくるからな」


「楽しそう」


「楽しいよ」


言ってから、少し驚いた。


世界がめちゃくちゃになって、明日、王門が開く。勝てるか分からないし、街が残るかも分からない。それでも、ルークと言い合って、トーマに文章を直されて、ユイに笑われているのが、楽しい。ゲームの中で三年間一位を守っていた時と、同じ種類の楽しさだった。


いや。少しだけ、違う。


ゲームの時は、ここまで隣が近くなかった。


両親からも、短い連絡が来ていた。


『ネット見た。お前、あれ本人か』


父だった。


『本人。黙ってて悪い』


『黙ってたのはいい。名前出てないなら、それでいい』


『家の方、記者とか来てない?』


『来てない。母さんが、近所に言いふらしたそうにしてるけど止めてる』


『止めといて』


『止めとく。……気をつけろ』


『分かってる』


そこで終わるかと思ったら、もう一行届いた。


『昔、お前がゲームばっかりやってた時、母さんと二人で心配したんだ。こんなに夢中になって、将来どうするんだって』


『うん』


『役に立ってるな』


俺は画面を見たまま、しばらく動けなかった。返事を打とうとしては何回か消して、結局、送ったのは一行だけだった。


『帰ったら、話す』


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