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通夜 1

生来の捻くれ者であるからして、これまでに自ら参加を願い出た冠婚葬祭なんかは未だかつて一つも無い。無論、今回の件に関しても。


「俺はそんなしみったれた集りになんか行かねえよ、下らねえ。ハッ、死体の顔なんか拝んで何が楽しいんだか」


 などと嘯いていたシバタ君は、そのくせして財布から無造作に取り出した少なくない数の紙幣をテーブルに放り投げると、


「テメー行って、これで香典払ってこいや」


と、僕に向かってそう続ける。


「なんで僕がそんなことをしなければならないのだ」と言い返したくもなるけれど、余計なことを口にしてもどうせ痛い目に遭うだけで、結局は従わざるを得ないのだからと渋々引き受ける。


「お前はどうする、一緒に行くか?」


 どうせなら道連れにしようと剛志にも声を掛けるが、「いや、俺は行かないよ」とにべにもなく断られる。


まあそうか。今後に差し障りがあるわけでもなければ、死んだ奴の為にわざわざ時間を割く必要なんか無い。


こうして僕はまた、不利益な義理事への参加を余儀なくされるわけであったのだが。


 一夜明け、「ついでに乗せて行ってやれ」とのシバタ君の指示で向かった三鷹駅前のロータリーにそれらしき一団を見つけ、車を停める。


 いい年して派手な容姿の女は美里で、黒づくめでシケた表情の優男は、たぶんチカの元旦那の吉岡って奴だろう。


予定だとピックアップするのはこの二人だけであったはずなのに、吉岡の後ろに佇むもう一人の男の姿を見て少し驚く。


「剛志?」


 そこにいたのは、昨夜不参加を表明したはずの剛志だった。


「あれ?お前、行かないんじゃなかったっけ?」


「行かない。行かないよ、俺は・・・」


「え、どうゆう事?」


 たまたま待ち合わせ場所に居合わせただけで、何か他に用事でもあるのだろうか。


しかし、ブツブツとうわ言のように「行かない」と繰り返している割には、まるで僕達と行動を共にするかのような距離感を保っている。 


「きっと頭の処理が追い付かないのよ。昨夜からこの調子なんだけど、行きたいには違いないから」


 美里が事情を説明してくれるが、その間も剛志は


「俺は行かない。絶対にそんな集まりなんかにはいかないから・・・」とそんな調子だ。


こちらとしてはどっちだって構わないのだが、公序良俗に基づいて早く車を出せさえすれば。


すると吉岡が「こんな所だとあれだから」と気を回し、二人に乗車を促す。


「俺は行かない。絶対に行かないから・・・」


 相変わらず同じ文言を繰り返すばかりの剛志、美里、吉岡の三人を乗せた車は、こうして動き出した。


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