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動くオーリーとクリス





 オーリーは自身の住む洞窟に戻って来た。入り口は狭いが、中にはかなり広い空間があった。清らかな地下水が湧き、鍾乳石が幾重にもある。

 とても清々しい場所だった。

 その洞窟の中に私室を設け、日頃はそこを拠点としていた。

 私室といっても、広い洞窟内の一部に椅子とテーブルがあり、更にベッドが置いてあるだけのシンプルなものだった。

 奥の方に壁があり、その壁の辺りの空間にオーリーは近づく。

 魔法陣が発生し、壁に画面のようなものが映し出される。

 画面に映し出されたのはサンドラだった。


 「やあ、お嬢。こちらオロチ」

 「…おお、オロチ、久しいの。我が弟子が世話になっておるようじゃ」

 「いやいや、それでそのカル君達について報告なんだが…」


 オーリーはカル達が敵対する組織と戦っている事、こちらの高名な刀匠のムラサメが実は蚩尤で、カル達の仲間になった事、そして、カルの父親を亡き者にしたのは《夜刀》で《東方の魔王》と関係ありそうな事などを報告した。


 「…ほう、あの蚩尤が刀匠ムラサメとな…しかし、我が弟子ながらあやつは数奇なものよのう」

 「それで、夜刀についてはどうするつもりかな?」

 「もちろん放ってはおけぬ、お主に任せて良いか?」

 「ああ、わかった」

 「色々すまぬ、弟子のことも含め感謝しておる」

 「いえいえ、龍王の弟子を見守るのも臣下の務めですから」

 「そうじゃ、お主に誰ぞ送ろうかのう、どうじゃ?」

 「ヘェ…まあ誰か他に動ける者がいれば、助かるのは間違いないけど」

 「うむ、事が事だけに、お主1人では手が余ろう」

 「それと、愛弟子に言伝はあるかな?」

 「そうじゃな…こちらに戻ったら、必ず顔を出せと伝えてくれ」

 「ああ、わかった。また詳しい事が分かり次第連絡する」

 「うむ」


 会話が終わり、壁から画面が消える。

 オーリーは椅子に座り呟く


 「しかし珍しいこともあるものだ…お嬢が誰かを寄越すとは…」


 オーリーがそんなことを考えながらしばらくすると、ゲートが開き、誰かが現れた。


 「おやおや、随分お早いお着きで」

 「…ふふ、お嬢の頼みじゃ断れないじゃない?」


 現れたのは、碧眼の美しい女性だった。すらりとしたスタイルだが、胸にはボリュームがあり、女性らしさを強調している。不思議と「海」を思わせる、そんな雰囲気を持っていた。


 「それにしても久しぶりだね、レヴィ…」

 「そうね、ねえオーリー、お嬢の弟子がいるんだって?会ってみたいな」

 「ああ、そのうち会えるよ。それで今回の件なんだけど…」


 オーリーは現状を出来るだけ詳しく説明する。「地脈」の異常、「東方の魔王」と呼ばれる魔族、カル達に敵対する組織、そして「夜刀」の事などを話す。


 「地脈がそれ程乱れるのは、おかしいね…」

 「そう、地脈を利用して何かを動かしている事は間違いない。それが何かはまだわからないけどね」

 「実際に調べてどう?」

 「うん、異常ある場所には行ってみたけど、その場に何かがある訳じゃなく、少しずつエネルギーを蓄えているのかも知れない…」

 「相当に周到な連中だね、逆に言うならば我等を警戒しているとも言える」

 「そして相当に危険な事をやろうとしている可能性があるね」

 「そのようだ…まあ、私が来たからにはただでは済まさないけどね…」

 「おいおい、国を滅ぼさないでくれよ…こう見えて僕はこの国の龍神で、この国が好きなんだから」

 「大丈夫、それに夜刀も何とかしないとね」

 「まあ、とにかく手がかりを見つけよう」

 「ええわかったわ」



 オーリーとレヴィが動き出した。




……………………………………………その頃のカル達。




 カル達はアマミの神社から、ヨウの家に戻り、その日は宿泊することになった。

 カル達が戻って来て、一番嬉しそうにしていたのは、ヨウの妹のマイだった。

 ネネに会えるのが本当に嬉しいのか、ネネとずっと一緒にいる。

 ヨウの家で皆がくつろいでいると、カルは外に人の気配感じる。

 カルが外に出るとそこにはクリスがいた。


 「クリスさん…何かあったんですか?」

 「…ああ、あったと言うより、何も無さ過ぎる」

 「不自然だと…?」

 「そういう事だ。そして敵はここよりも遠い場所で動いている、そう感じる」

 「ここよりも遠い…?」

 「ああ、おそらく東…」

 「クリスさんは東国の地理に詳しいのですか?」

 「…私は親に捨てられた後、ここで育った」

 「えっ?東国で…?」

 「ああ、ここで様々な技能を学んだ」

 「なるほど、お主の技は東国仕込みという訳じゃな?」


 突然ムラサメが声をかけてきた。いつの間にか2人の話を聞いていたらしい。まるで気配を感じなかった。クリスは眉を顰め、ムラサメを睨む。


 「…お前は怪しい術を使う…やはりシナの道士か?」

 「いやいや、儂は道士では無いと言うておるのじゃが…それよりもお主にこれを授けよう」


 ムラサメは一振りの刀をクリスに手渡す。


 「これも隕鉄で打ったものじゃ、少し短めの脇差しと呼ばれる刀じゃ」


 クリスは刀を受け取り、鞘から抜く。見事な作りだった。


 「…しかし、私に刀は合わないが…」

 「大丈夫、お主の能力にも適応できるじゃろう。こやつの名は《闇刃(あんじん)》―と言う。必ずお主の力になるじゃろう」


 クリスが少し離れ、刀を振る。何かを掴んだのか、ムラサメに声をかける。


 「なるほど、面白い…ありがたく受け取っておこう」

 「ほう、もう気づいたか?流石じゃのう…お主に合っておる気がしたのじゃ」

 「ムラサメ、我が主人をよろしく頼む…また調べてみる」

 「おう、任せておけ」


 クリスは軽く手を上げ、その場を後にする。直ぐに見えなくなった。


 「ムラサメさん、あの刀には何か秘密でもあるのですか?」

 「ああ、あの刀は相手を惑わす」

 「相手を惑わす…?」

 「そういう事じゃ。儂はあのクリスが気になってのう…ぶっきらぼうで不器用じゃが、内に優しさを秘めている…そんな感じかのう」

 「よく分かってますね」

 「そうじゃろう?お主を弟のように見ておるようじゃな」

 「そう、ですか…」

 「どうしたのじゃ、照れておるのか?」

 「いえ、ただそうならばちょっと嬉しいかなって」

 「嬉しい?」

 「はい、中々心を開いてくれない人なんで…」

 「そうか、もしそうならば、お主が変えたのかもしれんのう」

 「僕が?」

 「そうじゃな…」


 家の中からネネがやって来る。


 「あれあれ、ムラサメ様、カルさん。食事の準備ができたそうですよ」


 笑顔のマイも一緒に出て来た。マイの笑顔もヨウに似て人を幸せにする優しい笑顔だった。



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