アマミの宝物
数週間ぶりにアマミの里に帰ってきたヨウ。戻って来た時に見せていた、不安な様子は感じられなかった。少しすっきりとした、晴れやかな表情をしている。
自宅に着いたヨウが入り口から声をかける。
「父上、母上、只今戻りました」
奥の方から、妹のマイが顔を出す。
「姉上、お帰りなさいませ」
「マイ、ただいま」
「イセで叔母上にお会いしたのですか?」
「ええ、会いました。その事で父上に話があるのだけど」
家の奥の方から母親のサナエが現れる。
「あら、ヨウ、帰って来たのですね」
「母上、ヨウ、只今戻りました」
「はい、お帰りなさい。お父さんも奥におりますよ」
「それで、叔母上の事で話があるのですが…」
「姉上のこと…そうですか、お会いしたのですね…ふふ、でもあなたの表情を見ると、会って良かったようですね」
「はい、話したいのはその事です」
「わかりました、さあさあ、上がって。直ぐにお父さんもいらっしゃるわ…それと、仲間の皆様はどうしましたか?」
「外で待ってもらってます。急にこちらに来たものですから」
「あらあら、じゃあ中に入ってもらいなさい。マイ、皆様をお呼びして」
「はい、わかりました」
カル達はマイに呼ばれ、家の中でヨウを待つことになった。
「しかし、ヨウの家は相変わらず立派だね」
「そうよね、東国ならではの木造で、素敵よね」
「我等エルフ族にとっては、本当に居心地が良いのだ」
ムラサメとネネも、初めてのヨウの家に驚いている様子だった。
「いやいや、立派な家じゃな。さすがは由緒ある、神職の家柄というところかのう」
「あれあれ、まるでどこかの公共施設のようですね。広いです」
「そうじゃ、ネネ、ここに儂の刀を贈るのはどうじゃ?」
「ムラサメ様が良ければいいのではないですか?」
「よし、決まりじゃ!」
ムラサメは自分の刀の一振を取り出し、鞘からすらりと抜く。
素晴らしい業物だった。
「うむ、これでいいじゃろう」
「あれあれ、これは確か、《落涙》と名付けたものですね?」
「そうじゃ、なぜか刃に水滴が常にしたたり、すーっと流れ落ちる…まさに《落涙》じゃ」
カルはムラサメに声をかける。
「ムラサメさんの刀とアマミの家…なんていうか、とても似合っている気がします」
「うむ、儂もそう思うてのう。まるで家に刀が呼ばれた様じゃな」
やがてヨウが両親とともに現れる。新しく仲間になったムラサメが刀を贈りたいと話す。
家長であるヒョウゴは、ムラサメの名を聞くと驚愕する。
「もしや、貴方様が高名な刀匠、ムラサメ様でしたか…その刀は国宝級の逸品…とても受け取れませぬ」
「儂本人がこの家に刀を置いて欲しいと頼んでおるのじゃ。受け取ってもらえぬか?」
「…わかりました、では代々家宝として預からせていただきます。真に感謝申し上げます」
「よいよい、堅苦しいのは抜きに願おう。ヨウ殿とはこれから旅をする仲間故、ヒョウゴ殿も家族のようなものじゃ」
「ありがとうございます、ムラサメ様、そう言っていただけるのは光栄です。娘のことも何卒よろしくお願い致します」
カルはヨウに声をかける。
「ヨウ、斎王様の事は話したの?」
「はい、そしてアマミに伝わる宝物の事も聞きました」
「どんな物なんだろう?」
「…なんでも、天女様が降りて来て置いていった物だとか…」
「天女様?」
「はい、神様に直接仕える女官という感じでしょうか…」
「それはヨウと同じ神子なのかな?」
「いえ私は地上の神子ですが、天女様は天界の女官といった感じでしょうか?」
ムラサメが捕捉するように話しかける。
「天女とは女性の神とも言えるのう、本物もいれば、権力者に協力した女性を天女と呼ぶ場合もあるようじゃ。儂の場合は、悪神と呼ばれたがな…コホン、まあそれは置いておいて、広い意味で女性神という認識で良いじゃろう」
「なるほど、女性の神様…女神様かな?よし、じゃあ女神様の贈り物を受け取りに行こう!」
「はい、それでは父上、母上行って参ります」
「ああ、気をつけて行くのだぞ。皆様もどうかお気をつけて」
「皆様、ヨウをよろしくお願いします」
皆それぞれ出かける準備を始める。そんな中、ネネは何故かマイと一緒にいる。ネネの本当の年齢を知らないマイには、同世代の女の子に感じたのかもしれない。とても仲良く見える。
ウーリはとても眠そうだった…。しかし、寝なくて大丈夫なはずのウーリはよく寝てるな…。
ヨウの家を出発してしてから、神社までは数時間で辿り着いた。海沿いを北上し、少し山間の場所にあった。かなり古く、由緒のある神社である。
アマミの一族が代々宮司として世襲している。
ヨウは宮司と話し、斎王から許可を得ていることを伝える。
宮司も話を既に聞いていたのか、すぐにその場所に案内する。
本殿のさらに奥にある、奥の院と呼ばれる場所だった。宮司はかなり古い建物の前に立ち説明する。
「この場所に斎王の仰られた物が御座います。既に話は承っておりますので、ご覧になってください」
「わかりました、宮司様ありがとうございます」
ヨウが挨拶をして、宮司は少し離れた場所に待機する、
ヨウとカル達は建物の中に入っていく。
「私もここに来るのは初めてです」
「そう、すごく古い建物だね。でも手入れはちゃんとされてるみたいだ…」
中には大きな箱が置いてあった。ヨウがカルを見て、カルが頷く。
ヨウが箱を開けると、中には美しい布が入っていた。
「これは…まさか……羽衣?」
「羽衣?」
「ええ、天女様が身に着けているとされる衣ですね」
「じゃあヨウが身に着ければ良いんじゃないかな?」
「わかりました、着けてみます」
ヨウは羽衣を身に着けてみる。何も起きない…と思った瞬間、ヨウの姿が変わる。
姿というよりも、身に着けていた服が、大分面積が少なくなっている…。
青いビキニの水着に、透明なヴェールを纏うような姿だった。優雅な踊り子の様なスタイルだ。だがヨウには良く似合っている。
ブリトニーの姿に慣れているカルはあまり驚かなかったが、素直にヨウが美しく感じていた。
「カル、私これを着けると飛べるのでしょうか?」
「いきなりで大丈夫?」
「はい、外に出て試して見ます」
「うん…」
ヨウは建物の外に出る。外で待っていた皆がその姿に驚く。ヨウは少し恥ずかしかったが、羽衣を身につけている嬉しさの方が勝っていた。
「私も飛べるでしょうか…」
セシルが声をかける。
「私と試してみる?」
「はい、よろしくお願いします!」
セシルがヨウの手を繋ぐ。せーのでジャンプする。
ふわりと浮かんでいく。
「セシル…私、飛んでる…」
「ふふふ、ようこそ、空の世界へ!」
2人を追いかけるようにカルも後から着いて来る。
3人でしばらく空を飛んでいた。
そんな3人を他の仲間が地上から見上げていた。
「カルは空も飛べるのか?それだけじゃなく、あのセシル嬢も…」
「わ、私も飛んでみたいな…取り残された気がする…」
「ウニャー………」
そんなことを言いながら、ブリトニーとムラサメとネネはずっと空の3人を見上げていた。
後からウーリが鳳に変化し、3人を追いかける。
3人を追い越し、さらに上空を旋回していた。
話とは全然関係無いですが、私の大好きなミュージシャンが10日に亡くなってしまいました。彼の世界に与えた影響はかなり大きなものだったと思います。安らかにJB!
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