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再びアマミの里に向かう




 夜間、皆寝静まった頃にクリスは帰って来た。1人で辺りの状況を調べ、自分なりに精査をして現状を確かめる。

 こういった地道な行動をクリスは常に行なっていた。

 そして導き出される結論は、今回の斎宮での騒動は、揺動だという事だった。

 他に大きな動きも今のところはない…。

 返って不気味な程静かだった。

 

 今回の騒動の裏で、何か動きがあってもおかしくないのだが、余程周到に事を進めているのか、敵の尻尾を掴むことが出来なかった。


 カルはクリスが帰って来たと気づき、クリスの元に赴く。

 「…クリスさん、カルです」

 「…ああ、入ってくれ」

 「失礼します」


 クリスは徳利にぐい呑で酒を飲んでいる。


 「東国の酒も悪くないないぞ…」

 「飲み過ぎには注意してくださいね…それで報告と伺いたい事があったので…」

 「…あの不思議な女が仲間になったか?」

 「はい…でも、何故わかったのですか?」

 「…勘、まあ、お前の事はなんとなくわかる」

 「驚きです…」

 「それで、伺いたい事とは?」

 「そう、その事なんですが…やはり今回斎宮での騒動は揺動だったのではないかと思い、クリスさんに聞いてみたかったんです」

 「率直に言う、まず揺動で間違いないだろう」

 「やはり…」

 「だが、別の動きが掴めない…どうも、厄介な状況に陥りつつあるかも知れない、カル、注意が必要だ」

 「わかりました、注意します。とにかく、ここからもう一度、タンゴのアマミの里に向かおうと思っています」

 「ああ、わかった。ここに留まるよりも、そっちの方がいいだろう…動きながら情報を集める」

 「僕達は明日の朝に移動します。クリスさんはどうしますか?」

 「ゆっくりとついて行こう…何かあった時はこちらから知らせる」

 「わかりました、クリスさんも気をつけて下さい」

 「わかっている」



 翌朝、カル達はヨシタカの宿から移動を開始した。タンゴまでは数日を要する。途中宿泊しながらの道程だった。

 タンゴまでは特に問題なく辿り着いた。カルは道中ずっと警戒していたが、異常は認められなかった。

 アマミの里に久しぶりに戻ってきた。なんとなく嬉しそうなヨウに、カルは声をかける。


 「ヨウ、例の神社は近いの?」

 「ええ、少し距離はありますが、数時間で行ける場所です」

 「じゃあ、着いたら直ぐに向かうのかな?」

 「そうですね、私は両親に叔母上の事を報告してからになると思います」

 「わかった、じゃあヨウの報告が済み次第、その場所に向かおう」

 「はい、よろしくお願いします」


 今は日が昇り、数時間経ったところだ。少し寒さを感じるが、日が高くなるとまだまだ暖かい。辺りには、実っていた稲穂が刈られ、見通しが良くなった田圃が広がっている。


 ムラサメとネネも、少し慣れてきたのか、他の仲間と良く話している。特にネネに対して、セシルとブリトニーは抱きついたり、頭を撫でたり…まさに猫可愛がり状態だった。

 カルは見かねて


 「おい、セシル、ブリトニー、ネネさんに失礼だろ。いい加減にしないと…」

 「ううう…カルさん、私齢200を越えて、こんな扱いを受けるとは…でも私の習性が…」

 「だって、ネネさんすごく可愛くて…」

 「あ、ああ…思わず膝の上に乗せたくなってしまうのだ…」

 「ははは、ネネ良かったのう?可愛がられて。本当は嬉しいのじゃろう?」

 「ムラサメ様…」

 「よいよい、皆、ネネの事よろしく頼む。儂は中々可愛いがってあげられなかったからのう」

 「やった!ムラサメさんから許しがでた」

 「そうだな許しが出たから大丈夫なのだな」

 「ウニャ…そんな…」


 ネネも必死に2本の尻尾を太くして威嚇するが、逆にセシル達は可愛いと抱きつく。


 「うにゃー!」


 ネネを見てムラサメは微笑んでいた。

 そんなムラサメにウーリが声をかける。


 「ねえ、どうしてネネは霊獣になったの?」

 「うむ…元々は普通の猫だったのじゃ…儂の工房に以前から住み着いておったのじゃが、ずっと儂が世話をしておってのう…しかし、ネネは普通の猫じゃ。寿命が来る…やがて、その時が来て、儂はネネの御霊に直接話しかけたのじゃ。すると儂に感謝して、必ず恩返しをすると言いおった…。儂は言葉だけ受け止めて、感謝の気持ちを伝え、御霊と別れたはずじゃった。すると、その翌日じゃ。儂しかおらぬはずの工房に人の気配がする、誰かおるのかと気配のする方へ行くと、この姿のネネがおったのじゃ…不思議じゃろう?」

 「ヘェ、君が何かしたのかと思ったけど違うのかい?」

 「うむ、儂は御霊と話したのは事実じゃが、それが何かしら影響を与えたのかのう…こればかりは、儂にも分からんのじゃ。しかし、この姿のネネには不思議な霊力があったのじゃ。それが結界を作り出す力じゃな」

 「結界?」

 「ああ、ネネが指定した範囲に聖なる結界が張られるのがわかったのじゃ。結界内では呪術の力は増し、他の者の術は受けなくなる。恐らく魔力も受け付けなくなるじゃろう」

 「すごい能力だね?」

 「ああ、大したものじゃ」

 「見た目はなんであんなに幼いのかな?」

 「ふむ、儂にも分からぬな。ネネにとって、何か特別な価値があるのかも知れぬが…」

 「そうなのか、うーん君達も興味深いな」

 「長く生きていても、分からぬ事もあるのじゃ。理では理解できぬ事もまだまだあるのう」

 「はははっ、君の言ってること、よーくわかるよ…」


 そんな会話をカルとヨウは聞いていた。


 「ふふふ、なんだかまた賑やかになりましたね」

 「うん、僕達はいい仲間だね。友であり、家族であり」

 「私もそう思います」


 もうすぐアマミの里に着く。あいかわらずセシルとブリトニーがネネに抱きついていた。ネネがフシャーっと威嚇していたが、カルにも逆に可愛く見えて、思わず微笑んでいた。

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