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新たな動き




 ムラサメの剣技に痛手を被ったサンダユウ…。倒れていたところを、配下の者に助けられ、本拠地であるコウカの里に連れ戻され、療養中だった。

 とてもまともに動ける状態ではなかったが、致命傷にはならなかった。里で治療し、伏せてはいるが、今は会話もできる。

 そんなサンダユウを訪れる者がいた。

 龍族の《夜刀》である。


 「サンダユウ、お主程の者が無様じゃのう」

 「…夜刀様、申し訳ございません…」

 「血筋の者はそれ程強かったのか?」

 「いえ、奴からは逃れましたが、逃げたところを見知らぬ者に…」

 「何、見知らぬ者じゃと?」

 「はい、疾風のごとき抜刀術でした」

 「ふむ…して、心当たりは?」

 「皆無にて」

 「ほう、いずれ手合う事もあるかも知れぬ、サンダユウよ養生するが良い」

 「はっ、夜刀様…例の件はどうなりましたでしょうか?」

 「うむ、今のところ順調に進んでおるぞ。奴等もこちらが本線であるとは気付くまい…」

 「不甲斐なく、この有様ならば、力になれず面目次第もございませぬ…」

 「まあ良い…そろそろ始まる…祭りじゃ、ククク…、ハハハハハっ……」


 夜刀の笑い声が響いた……。




…………………………… 同時刻、イセ


 斎王と別れ、カル達は一度ヨシタカの宿に戻る事になった。

 斎宮にはオーリーが手配した者を、使いとして送り、斎王の世話をする事になった。

 オーリーは斎王の言葉が気になり、独自で調べるといってその場を離れていった。


 カルもオーリーと同じく、斎王の「別の何か」という言葉と、夜刀の事が気になっていた。カルは宿に戻り、クリスに相談してみることにした。

 セシルやブリトニーはヨウを心配して、声をかけている。


 「やっぱり、ヨウがいないと何か物足りない感じがしてたよ」

 「ああ、そうだ。それ程長く一緒にいる訳ではないが、何か不安というか、不安定というか…そんな不思議な感覚だったな」

 「私もすごく淋しかったです。皆と一緒にいたいって心から思っていました…。仲間って不思議ですね、一緒にいるのが当たり前になると、少し離れるだけで落ち着きませんね」


 ウーリも声をかける。


 「ヨウがいないと、僕を怒ってくれる人がいなくなっちゃうからね」

 「もう、ウーリったら。そんなこと言ってるとご飯抜きにしますよ」

 「ええっ?それだけは…」


 皆笑顔だった。


 カルはムラサメも仲間に加わる事をヨウに伝える。


 「ヨウ、実は斎王様の呪縛を解いてくれたムラサメさんも仲間になることになったよ」

 「えっ?そうなのですか?」

 「うん、あの人は精霊武器に選ばれた人でもあるし、僕達にない知識や技術も持っているよ。頼もしい人だよ」

 「そうなのですね、少し楽しみになってきました」


 セシルが声をかける。


 「ねえねえ、ムラサメさんと一緒にいたあの、ネネさんってすごく可愛くない?」


 皆そう思っていたのか、


 「ああ、ネコの霊獣だけに、仔猫のように可愛いな」

 「でしょ?なんか撫でまわしたいような」

 「失礼にあたるかも知れないが、良くわかるぞ」

 「あ、私も思いました。あの方は霊獣なのですか?」

 「うん、僕が聞いたら猫又っていう霊獣だって言ってたよ。ネコが長生きして、悟りを開いたのかな?」

 「長生き?とでも幼く見えましたけど」

 「うん、もう200年は生きてると思うよ」

 「えっ、そうなのですね…まあ、ウーリを見てれば理解はできますが…」

 「まあ、これからは一緒に旅も出来る訳だし、良かった」

 「ああ、我等ももっと強くなれるだろう」

 「ふふ、楽しみですね」


 そんな会話をしながら宿に向かって行く一行、もう日は傾いている。宿まではもう少しだ。ウーリがまたお腹すいたと騒ぎ始め、ヨウに嗜められるのかな、カルはそんなことを思っていた。

 そしてヨウの人を幸せにさせる笑顔を見て、なんだかホッコリとした気持ちになった。


 暗くなった頃に宿に辿り着く。


 「おうっ!皆、待っていたぞ!」


 ムラサメとネネだった。2人とは、宿屋で合流する予定になっていた。


 「ムラサメさん!早かったですね」

 「うむ、皆、これからよろしく頼む」


 ヨウがムラサメに頭を下げ、斎王の事についてお礼を伝える。


 「この度、叔母上を救って頂き、ありがとうございました」

 「なんの、外法を使う者から救っただけじゃ。そのおかげで、皆ともこうして会えたのじゃ、礼には及ばん」

 「そう言って頂けると助かります」

 「なんのなんの」


 ふと側を見ると、異常に憔悴しているネネがいる。


 「あ、あの…ムラサメ様…時間をもう少し考えて欲しかったです…」

 「ネネ、主なら何の問題もなく準備してくれると思っておったのじゃが…」

 「…国宝級の刀数本をそのまま置いておけませんにゃ…」

 「おお、そうじゃったのう。持ってきたのか?」

 「…はい、それに時間を取られ、旅の支度を整え、屋敷の掃除、作業場の片付け…」

 「ああ、わかったわかった、ネネは良い子じゃ」


 ムラサメはポンポンとネネの頭を撫でる。


 カルはネネが何かとんでもない事を口にしたのを確かに聞いた。


 「ムラサメさん、国宝級って物凄く価値があるんじゃないですか?」

 「まあ、そうじゃ。しかし精霊武器の価値に比べれば大した事は無いのう」

 「見せて貰っても良いですか?」

 「ああ、構わぬぞ」


 ムラサメはネネから一振りの刀を受け取り、カルに渡す。カルは刀を鞘から抜く。抜いた途端に空気が変わったような雰囲気がした。刀身は美しく、普通の鋼とは違う輝きを持っているように見える。


 「ムラサメさん、もしやこれは隕鉄から打ったとされる刀ですか?」

 「…ほう、良くわかったのう。そうじゃ、空から降ってきた石から取れた金属で打ったものじゃ。どうじゃ、ようできておろう?」

 「はい、素晴らしいと思います」


 カルは刀を鞘に入れ、ムラサメに返す。


 「ムラサメさん、これからよろしくお願いします。とにかく中に入って食事にしましょう」

 「ああ、そうじゃな」


 カル達とムラサメ達が宿の中に入って行く。外はもう日が暮れ、月が良く見えていた。







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