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斎王と話す




 ムラサメの工房を離れ斎宮に向かうカル達。ムラサメとネネは、旅の支度が整い次第合流することになった。


 ウーリが何か考えているのをカルが気づく。


 「うーん…そういうことだったのか…」

 「…ウーリ?どうしたの?」

 「?、いや、ムラサメのことを考えていたんだけど、余りにも伝わっている話と違っているから…」

 「うん…」


 ウーリはムラサメの本当の名前、《蚩尤》について知っていることを話す。


 もともとシナ国を統治していた神農と呼ばれる神の一族で、やがて力を持った黄帝と神農一族の赤帝の争いになり、負けてしまった。

 蚩尤は、技術や武術、戦術の智識を持っていて、黄帝はかなりの被害を受けた為に、蚩尤を恨み、悪神として汚名を着せた事などを伝える。4つの目と6本の腕を持っていた事も加えて話すが、それは蚩尤の戦っている姿が余りにも素速いことに因んでそう呼ばれたのだろうとも説明した。


 「なるほど…伝えられた歴史とは全然違うみたいだね…」

 「うん、歴史は勝った者の都合のいいように書き換えられてしまうからね…」

 「さすがウーリ、色々知ってるね」

 「ははっ、長く生きてるだけだよ」


 ブリトニーが話しかける。


 「しかし、それ程の武人ならば、我らにも教わる事が多いのではないか?」

 「そうだね、ムラサメさんに教わる事も色々あるよ」


 セシルはちょっと考えて、声をかける。


 「魔法は余り得意じゃないのかな?」

 「うーん、聞いてみないとわからない」

 「そうよね、これから一緒に旅をするんだから、色々教わっていこう」


 皆は頷く。




 カル達は日が落ち始めた頃に斎宮に到着した。カル達に気づいたオーリーが建物から現れる。  


 「やあカル君、斎王は1度目を覚ましたが、また眠ってる。安心したヨウも、倒れるように眠ってしまったから今は休ませてあげよう」

 「2人とも大丈夫でしょうか?」

 「ああ、問題ない。それよりもそちらの用事は済んだのかい?」

 「はい、実は…」


 カルはムラサメと話したことや、ムラサメの本当の名前が《蚩尤》であることなどをオーリーに話す。そして仲間になることも合わせて伝えた。


 「何だって!?…そうか神農の…まさかムラサメが蚩尤だったとはね、普通の者ではないと解ってはいたが…しかしカル君、君はとんでもない人物を仲間にしたね、本当に興味深い」

 「僕の運命みたいなものかもしれません…」

 「ふふっ、君の一番の力は、出会う力かもしれないね」

 「出会う力…?」

 「ああ、君は色々な出会いを通して、難題を克服し、その度に強くなっている。それは素晴らしい力だと思わないかい?」


 カルは皆を見る。確かに頼もしい仲間に囲まれ、素晴らしい師匠に弟子入りした。特異点の力なのかも知れないが、出会う事で成長している実感もあった。


 「はい、僕は人に出会う事で成長できています。オーリーさんの言うとおりかも知れません」


 オーリーは笑顔でカルの肩をポンと叩いた。


 すると建物の中から、ヨウが顔を出す。


 「龍神様…あ、カル、皆」


 カルはヨウに駆け寄り声をかける。少し疲れた表情をしていた。


 「ヨウ、大丈夫?皆心配していたよ」

 「はい、私は大丈夫です。叔母上も今のところ問題ありません」

 「そう、良かった」


 皆ヨウに駆け寄り、それぞれ話しかけている。ヨウも笑顔で答える。

 すると、中でゴソゴソと音がする。慌ててヨウが斎王の側に戻っていった。

 しばらくして、斎王が皆を呼んでいることを伝える。

 カル達とオーリーは建物の中に入り、斎王と向き合う。 斎王は床から上半身を起こし、側にヨウがついていた。

 斎王がゆっくりと話し始める。


 「…龍神様、ヨウの仲間の皆様、こ度は多大なる非礼、心よりお詫び申し上げます…」


 オーリーが答える。


 「斎王よ、私も彼等も何も思っていない。しかし、そなたを利用した者は、何が目的だったのだ?」

 「はい、我にもその真意は掴みかねますが、政を操ることか、それともこちらに目を向けさせ、他に何かを企んでいたのかも知れません…」

 「他の何か?」

 「申し訳ありません、我にも詳しい事は知らされておらず、何やら《東方の魔王》という言葉を良く聞きました…」

 「東方の魔王…」


 カルが斎王に話しかける。


 「斎王様、貴方に呪術をかけた《夜刀》という龍族が何処にいるかは、わかりますか?」

 「いえ、そちらも分かりません…あの龍神…いえ、夜刀は私に呪をかけ、それ以降現れておりません」

 「そうですか…」

 「ですが、それ程離れた場所にはいないような気がしております。思うよりも近くにいるのではないでしょうか?」

 「何か結界のようなものの中にいるのでしようか?」

 「ええ、その可能性も御座います」

 「わかりました」


 オーリーが斎王に声をかける。


 「斎王よ、こ度の件はお主に何の咎もない。責任を取り斎宮から離れたり、自ら命を落とすような真似は許さぬぞ。再び己の使命を全うせよ、良いな?」

 「はは、もったいなきお言葉…斎王肝に銘じ使命を果たします」


 ヨウは斎王に声をかける。


 「叔母上、体を労り、ゆっくりと静養してください」

 「…ヨウ、あなたにも迷惑をかけましたね。仲間と共にあなたのやるべき事をしなさい。我はあなたに厳しくしました…それはあなたの事を思っての事だったのです。この叔母を恨んでも構いません。まだまだ我は斎王としてやるべき事があります。あなたも精進しなさい」

 「叔母上…ぐすっ、うう…」

 「龍神様の前ですよ、そのような姿を見せてはなりません」


 ヨウは、斎王の思いを知り、感情が溢れてしまった。斎王は優しくヨウの背中をさすり、我が娘を愛おしむように抱きしめた。

 しばらくそうして、ヨウが落ち着くと声をかける。


 「ヨウ、あなた達に渡すものがあります。アマミに伝わる秘伝の物です」

 「秘伝の物?ですか…?」

 「アマミの神社を調べなさい。その場所にその物はあります。きっとあなたの力になることでしょう」

 「叔母上、わかりました。調べてみます」


 ヨウは斎王に深く頭を下げる。斎王はそんなヨウを温かい眼差しで見つめていた。

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